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【論文】頭に描いたイメージが読み取れた

脳内イメージの読み取りがさらに現実味を増してきたようです。

Visual Image Reconstruction from Human Brain Activity using a Combination of Multiscale Local Image Decoders
Miyawaki et al
Neuron 11 December 2008


国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などの業績。

アルファベットの “neuron”を1文字ずつ見てもらいながらfMRIで脳内の血流を読み取って解析したところ、元のneuronの文字に近い画像を構成できたそうです。

もしかして他のジャーナル用に “nature” とか “science” とかの画像も用意していたんだろうか、なんて邪推してしまいますが、それはまた別の話。

実際、この画像は感動ものでした。

ここまではっきり再構成できるものなのか、と。

20081211 neuron

上の画像の、上段が被験者に見せた画像、下が再構成した画像です。


彼らが行った実験の概略は以下の通り。

1)10×10マスのランダムなモザイク画像を440種類用意する
2)被験者にモザイク画像を見てもらい、その際の視覚野の血流をスキャン
3)neuronの文字を1文字ずつ見てもらい、その血流から元の画像を再構成

何が驚きかって、アルファベットのような文字が、モザイクから再構成できるというそのスキームそのものです。

我々は目の前の映像を「点の集合」として認識しているのでしょうか?

「一」の字と「人」の字を認識させれば「大」の字を見たときのパターンがわかる、というのに似ているわけですよね、今回の実験。

そんなに要素還元的に画像を認識しているように思えないのですけれども・・・

たとえば自閉症児は、野菜で形取った人の顔を認識できないことがあります。

個々の野菜が認識できるのに、全体の「顔」が認識できない。

となると、要素と全体は別のスキームで認識されていると考えるのが自然かと考えられます。

「人」が認識できるけど「大」は認識できない、ということがあってもおかしくないように思うのですが。

それとも、「画像の認識」と「それが何であるかの認識」そのものが別で、視覚野のスキャンでは「単なる画像の認識」が可能ということでしょうか。

それはそれで非常に面白いことになりそうです。

新聞では「自分が見ている夢がわかるかもしれない」などと書いていますが、そもそも「自分が今何を見ているのか」がわかるようになるかもしれません。

私たちは錯視画像を見て楽しむことがありますが、視覚野のスキャンにより、「錯覚を起こす前に見ている生の画像」を見ることができるかもしれないわけです。

逆に、もし視覚野が単なる生画像しか表象しないのなら、夢のスキャンは難しいのではないかと思います。

夢は多分に画像の「解釈」が加わっていると考えられます。

たとえばわずか数分で数十分におよぶ夢を見ることがあることを考えると、画像が視覚野に現れる時間はリアルタイムではあり得ません。

何らかのプロセシングが入っているのでしょう。

今回のneuronは一体何を見ていたのか、今後の発展が期待されます。



また、「犯罪捜査などへの安易な応用は危険」とオーサーの宮脇氏自身が述べていますが、既に「指の血流スキャン」である嘘発見器は犯罪捜査でも使われていることを考えると、法的な障壁は大きくないのではないかと思いました。
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自閉症増加の原因は診断基準の変更のせいかもしれない

今週のThe Economist (Apr 11, 2008)より。

自閉症スペクトラムが増えている主因は、もしかしたら単に自閉症の診断基準が変わったからだけかもしれない、という話。

自閉症が増えている原因については以前にも取り上げたことがありました。
1年程前には、「ワクチンに含まれる物質が原因だ」とするアメリカの圧力団体の話もエントリーしています。

ワクチン原因説はかなり有名らしく、このThe Economistの記事もワクチン説を否定するところから始まっています。

・ワクチンにより自閉症になることはない。

・しかし実際に自閉症は増えている。イギリスの場合、1990年には10万人中50人しかいなかったのが、今では400人いる。

・しかし今月のDevelopmental Medicine & Child Neurologyの報告によると、増加の原因は単に「現在なら自閉症と診断される子が、昔は健康と診断されただけ」としている。

・著者らは、38人のボランティアの大人を集めた。彼らは、過去に「自閉症ではなく言語障害」と診断された人々である。

・その結果、現代の基準では8人が完全な自閉症、4人が自閉症スペクトラムの一部と診断されることが判明した。実に3分の1である。

・親にもインタビューし、ボランティア要員の症状は子供の頃から存在していたことも確かめた。



私の場合、近年の急激な自閉症の増加原因として、「以前は“親が”子供を自閉症と認識していないか、もしくは認識していても社会に出さなかっただけ」と思っていました。

なかなか医者には行きにくいですからね。

がしかし、医者の側でも(一種の)誤診があったとは。
(基準が変わっただけなので、医者の責任というより統計の報道に問題があったというべきなのでしょう)

ただ、桁が変わるほどのインパクトがあるのでしょうか?

日本の例で見てみましょう。
(自閉症はICD-10という国際基準の下で診断されていますので、記事の内容を適用可能と考えられます)

日本の自閉症の増加率はイギリスほど大きくなく、現在は10万人中150人程度です。
(昔は10万人中20人程度で、これはイギリスと大差なし)
(c.f. Honda H et al, Cumulative incidence of childhood autism, Developmental Medicine & Child Neurology, 47 (1): 10-8, 2005.)

さて、日本の場合、聴覚・言語障害者の割合は10万人中340人程度(厚労省資料)。

このうち、仮に3分の1が自閉症だったと仮定すると・・・・110人程度の増加。


おや。ぴったりではないですか。


さすがにこの資料の「聴覚・言語障害者」が本記事のlanguage disorderと適合するとは思えませんので、やはりあくまで診断基準の変更は「一因」でしかないとは思います。
一方で、「主因」である可能性は高いかもしれません。

Glia Got Rhythm (2):ハエのグリア細胞の概日リズム

(続き)
・ハエの脳のグリアには、形態学的なサブタイプがいくつかある。たとえば;
1) 神経網neuropilの外にある神経細胞体と相互作用しているもの(cell body glia)
2) 神経網の中に存在するもの(neuropil glia)

・Ebonyの機能解析には、実質的に全グリアに存在するドライバー(ただしニューロンには存在しない)を使用した。よってebony cDNAを全グリアで発現させることは、レスキュー実験として十分である。

・Ebonyタンパクは、neuropil gliaには十分に存在するが、cell body gliaなど他のgliaには多く存在するわけではない。

・神経網におけるEbony(+)のglial processは、慨日ニューロンやドーパミンニューロンと接している神経突起に局在している。

・neuropil gliaはシナプスと相互作用し、神経の慨日回路の調整に関わっていると考えられている。

・EbonyはPDFを含むLNvの近傍に発現しており、かつEbony変異体はリズムに変調をきたしているので、この変異体はLNvに問題があると考えられる。
しかし変異体のLNvには形態学的な変化は何もない上、PERやTIMはrobustな振動を示す。しかも周期的にPDFを分泌する。

では、どのようにEbonyは慨日行動を制御しているのだろうか?

・Ebonyはドーパミン(DA)シグナルを制御している可能性が考えられる。

・Drosophila Dopamine Transporter (dat) の変異体は自発運動、睡眠、覚醒を制御していることがわかっている。

・本論分では、ebonyとdatは相互作用していることが示された。

・ebony変異体は、dat変異体で見られる多動を抑制した。

・DATはDAを介したシナプス伝達を止める働きがあるので、EbonyはDAシステムを活性化する役割があるのかもしれない。

・また、EbonyはドーパミンからNBAD(N-β-alanine-dopamine)を生成する触媒機能を持っているため、NBADは前シナプスか後シナプスで何らかの作用を持っているのかもしれない。

・Ebonyは、βアラニンをDAだけでなくセロトニン・オクトパミン・ヒスタミン・チラミンなどと結合させる作用もある。

・他には以下のようなモデルも考えられる。
シナプスが活動している間に、Ebonyを持つグリアがシナプスからDAを除去し、NBADを生成して、DAをプレシナプスのニューロンにリサイクルする過程に使われる。

ebony変異体では、NBADの生成を阻害することで、このリサイクルの過程を抑制し、ドーパミンのシグナルを阻害する。

・mammalのCNSではグリアは形態学的および生理学的に強くシナプスに結合している。グルタミン酸を介した伝達においても重要な役割を果たしている。

・NBADや、他のEbonyによる産物は日中に増加するようである。
これはEbonyが日中に増えることとも整合性がある。
(このとき、自発運動も増加する)

・今後の実験としては、グリアの慨日リズムを人工的に変化させることで、ハエのふるまいがどのように変化するのかを見てみるのも面白い。

・mammalのSCNでもグリアが関与している証拠があるので、Drosophila だけでなく
mammalでも同様にグリア(アストロサイト)は同様の機能を持っているかもしれない。

Glia Got Rhythm (1):ハエのグリア細胞の概日リズム

Drosophila Ebony Activity Is Required in Glia for the Circadian Regulation of Locomotor Activity
Joowon Suh and F.Rob Jackson
Newron 55, August 2, 2007


いろいろあって久しぶりのエントリー。

ラボの論文輪読の当番が回ってきたので、何かいいのないかな~、と論文を漁っていました。
私はどちらかというと脳の高次機能に関する論文を紹介したいのですが
ラボの方々は分子レベルで説明できない研究には興味があまりなさそうなので
両者の要求を満たし得る論文を探すのがなかなか大変でした。

が、やっと見つけました、タイトルを見ただけで『これだ!』と思った論文。

Glia Got Rhythm.

これは論文ではなくプレビューのタイトルではありますが。

これなら、分子の話である上に、何らかの形で Rhythms of the Brainの話もからめられるかな、なんて。

というわけで、本論文に関するメモのエントリーが今後2週間くらい続くかもしれません。


問題は、グリアの話とはいっても、ハエのグリアなんですよね・・・
ハエの脳の研究がどのようにmammalに生かせるのか疑問だったので、
これまで食わず嫌いだった節があります。
これを機にハエも勉強しなければ。

昆虫と哺乳類の脳は相似だから意味ナシだとか、いや意味アリだとかの論争って、今はどうなってるんでしょう??


以下、プレビューの前半の要旨。

・Drosophila では外側腹側神経 ventral lateral neurons, LNvS がペースメイキングに決定的な役割を果たす。
他のcircadian neuronとシンクロしており、自発運動活性locomotor activity を関わっている(特に夜明け前)。

・神経ペプチドであるPDFはLNvSから分泌され、上記の機能に重要だとされている。

・LNdSやDN1Sは夕暮れの活動dusk activityに関与している

・1988年の時点で、グリアも概日リズムを刻むことがわかっていた。PERを周期的に発現していたのである。

・Suhらは、circadian locomotor activityにおいてebony 遺伝子が決定的に重要であることを突き止めた。
ebony遺伝子はN-β-アラニン性生体アミン合成とともにタンパク質をコードしている。

・精製Ebonyはβアラニンを多くの生体アミンと結合させる。生体アミンには、ドーパミンやセロトニンも含まれる。

・Ebonyのノックアウトは概に知運動に著しい欠損を見せる。

・脳内のEbonyのmRNA量は概日リズムを示す

・Ebonyはadult brainのグリアにしか見られない

・Ebony量は日中に最高で、夜に最低になる。この周期性はPER/TIMに制御されていることもわかっている。
なぜならtimeless null mutantではEbonyの概日変化は見られないから。

・PDFはグリアのリズムをシンクロさせるのに必須ではないかもしれない。
ということは、グリアのリズムは細胞単位で行われており、他の細胞の関与はないのかもしれない。

・Ebonyは単独でグリアのリズムを制御している可能性もある。なぜならebony mutantでebony cDNAをグリアで発現させると、それだけで自発運動の欠如をレスキューできるから。

・ただし、N-β-アラニン性生体アミン合成酵素なしではレスキューできなかったので、Ebonyは他のタンパク質と共同でリズムを制御しているのだろう。


【記事】脳のネットワークとpruning

今週のThe Economistの記事に、PNASとNature Neuroscienceのレビューが載っていました。(こちらのサイトにほぼ全訳が載っています)
神経細胞のpruning に関する論文のようです。

疑問の出発点は、
・なぜ子供の時には長時間何かを待ったりすることができないのだろう?
・なぜ子供のときの記憶は断片的で、その記憶の前後のエピソード全体を思い出せないのだろう?

という2点。
大人でもイラチは多いよなぁ、なんて思いつつ。

でも確かに幼い時(3~8歳くらい)の時の記憶って断片的なんですよね。
数分間単位の記憶があっても、「なぜそれに至ったか」が思い出せません。
不思議です。


PNAS論文の著者であるSchlaggar博士はグラフ理論の専門家でもあるようです。
記事の中にも、軽くスモールワールドに関する記述があります。

Schlaggar博士の実験は;
・学生を被験者とし、規則性のある音を聞かせて次の音が来るタイミングを予測させたり、2つの言葉のペアが同属かどうかを判定させたりするテストを行った。

・一定の法則に則って課題をこなすときには、脳の中で7つの領域が活発だった。

・その法則が間違いとわかり、他の法則を模索するときには他の11の領域が活発だった

とするものです。
前者をcingulo-opercular network、後者を frontoparietal networkと呼んでいます。

著者らによれば、従来の「脳の領域」が重要なのではなく、「脳のネットワーク」が重要という点が新規だそうで。

しかも、この2つのネットワークは、幼い頃には区別が曖昧で、成長するにしたがって独立したネットワークとして機能していく、という点が今回の論文のキモ。

Pruningが10年単位で行われているのだとすれば、確かに興味深い現象です。

がしかし、cingulo-opercular networkが行動抑制的で、frontoparietal networkが行動適応的だから、前者が後者に覆われている子供の時にはがまんができない、という説はよくわかりません。

原論文を読めばわかるのでしょうが・・・


あと、Nature Neuroscienceの論文によれば、
・内側頭葉は、どんなシーンを覚えるときにでも発火する
・側前頭前野は、18歳以上の被験者がエピソードつきで記憶を形成する際に発火する
そうです。

大人になると、丸暗記よりも理論付けて覚えた方が覚えやすいのはこのためでしょうか。

発火部位を示されても、何かを理解した気になれないのは相変わらず否めませが。

共感覚における「色」と「文字」の関連付けは双方的

共感覚における「色」と「文字」の関連付けは双方的

B.Meier, N.Rothen
When conditioned responses “fire back”:Bidirecitonal cross-activation create
s learning opportunities in synesthesia
Neuroscience 147, pp569-, 2007


共感覚に関する以前のエントリーで、
「Tの文字が赤色に見える人は、赤色を見るとTが見えるのだろうか?」
という疑問を書きました。

上の論文は、この疑問に対する答えです。

「自然状態では”文字→色”の一方向でしか想起されないが
 双方向に “文字⇔色” が想起されることもありうる」

また、文字と色だけでなく、他の共感覚でも双方向に関連されうるだろう、ということも示唆しています。

fMRIではなく、皮膚コンダクタンスを用いて実験系を工夫していることに共感がもてました。




この論文とは直接関係はないものの、共感覚については思考実験をしてみるといくらでも疑問が浮かんできます。

・合成された文字はどのように見えるのだろうか。

たとえば漢字の「一」が赤、「二」が青に見える人は、「三」はどのように見えるのだ
ろう?
赤線が三つ?
上一本が赤で、下の「二」の部分が青?
それとも「三」自体が赤でも青でもない他の色?


・色は周囲の環境によって様相を変化させるが、共役する文字も変化するのだろうか。

青を見るとP、濃紺を見るとQが思い浮かぶ人は、
青を見ながら部屋の照明をだんだん暗くすると何が見えるのだろう?
見えている色が濃紺に近くなるからQになっていく?
それとも周囲の環境と比較した補正がかかってPのまま?


・共感覚によって想起されたものが、さらに別の共感覚を想起させることはないのだろうか。

たとえば

「Tの文字が青に見える」
「青を見ると【ファ】の音が聞こえる」
「【ファ】の音を聞くと数字の5が想起される」

という共感覚を同時に保有している場合、
Tの文字を見たときに頭の中では何が起こるのだろうか。

etc,



脳研究の現象論的なアプローチは好きではないと言っておきながら
読んでいる論文は現象論的なものが多いというこのヘタレっぷり。

ストーリーがわかりやすいのと、知らない用語がほとんど出てこないことが主因です。
要するにただの勉強不足orz
精進せねば。

【論文】音痴の人は空間処理能力も低い

音痴の人は空間処理能力にも問題アリ
Petr Janata
The highs and lows of being tone deaf
Nature Neuroscience 10, Jul 2007


Nature Neuroscience とNeuronに報告された成果をまとめたレビューです。

音痴の人は空間処理能力にも欠陥があるのではないか、ということを報告しています。

(脱線しますが、「音痴」も「痴呆」同様、差別用語として今後は排斥されそうな予感がします。「音痴」を使えないとなると、「音認知症」とか「音程認識障害」とかいう名前になるのでしょうか。こちらのほうがいかにも「病名」っぽくて問題があるようにも思いますが・・・)

たとえば、音の高低が下がったか上がったかを検知するのが苦手な人は、
立体図形を頭の中で回転させるテストも苦手である、というようなことを調べています。

さらに、この「図形の脳内回転テスト」を、音の高低認識テストと「同時に」やらせると、音痴ではない人は間違えまくるのに対し、音痴の人は正解率が高いらしいです。
音痴ではない人は、空間認知の部位を空間か音程かのどちらかにしか使えないからではないか、としています。

他にも興味深かったのは次の実験。

1) 被験者に2つの音を連続して聞かせる。

2) もし2つ目の音が最初の音よりも高ければ、高い位置にあるボタンを押す。もし低ければ低いほうのボタンを押す。

3) 今度は逆に、音が高くなれば低いボタンを、低くなれば高いボタンを押す。

4) 実験の結果、コントロール(音痴ではない人)は、2)の「高ければ高いボタン」テストのほうが反応が早かったのに対し、音痴の人は2)と3)のテストに反応時間差がなかった。


なかなか楽しそうな実験です。
結果はともかく、実験系の工夫自体がおもしろい。
いかにもnatureらしいというか。

【“【論文】音痴の人は空間処理能力も低い”の続きを読む】

病は気から:ノセボ効果研究の現在

[Review] F. Benedetti et al,
When words are painful:
Unraveling the mechanisms of the nocebo effect
Neuroscience 147, 2007


「病は気から」という諺は、
「病は気から治る」という意味と
「病は気から始まる」という意味の両方で解釈ができます。

前者の、薬ではないのに「これはよく効く薬です」と言って飲ませると治ってしまうのがプラセボ効果

後者の、毒ではないのに「これは体に悪い薬物です」と言って飲ませると本当に体調を崩してしまうのがノセボ効果


このレビューは、ノセボ効果のメカニズムがだんだんわかってきた、ということを報告しています。

なぜプラセボだけではなくノセボ効果も重要かというと、医者が「この薬は副作用があります」と言ってしまうことで、言わなければ発現しなかった症状が出る場合があるからです。

無論、副作用のことを知らせずに飲ませるわけにはいかないので、「ノセボ効果があるから説明しない」という方向にはなりません。
よって、副作用のことを知らせつつ、ノセボ効果だけを軽減できる方法があればベストとなるわけです。

しかもノセボ研究はプラセボ研究よりも倫理的に実行が難しいという特徴があります。
プラセボ効果の場合、被験者が本当に治ることは特に問題がありませんが
ノセボ効果の場合、本当に体調を崩してしまったら医者の責任が大きく見えてしまいます。
(プラセボでも、治らなかった群は機会費用を損失しているので同値の気がしますが)

よって、最近のノセボ研究の成果は素晴らしい、という趣旨になっています。

レビューの大意としては以下の3点。

・不安を煽る言葉をかけられた患者は、コレシストキニン(cholesystokinin, CCK)が活性化する。

・CCKは痛みを誘発する

・CCKのアンタゴニスト(たとえばproglumide)は、この不安に誘導される過剰な痛みを阻害することが判明。
CCKアンタゴニストは臨床に応用できるのではないか。


"word stimulus"という表現が新鮮でした。
言葉をもリガンドとみなして真面目に研究しているのがおもしろい。
「音の構造」が脳内でどのように処理され、生理学的アウトプットに結びつくのかは非常に興味があります。
(無論、この論文でもそこまでは触れていません)
【“病は気から:ノセボ効果研究の現在”の続きを読む】

自閉症にはSHANK3, Neuroligin3, 4 の変異が関与しているかもしれない

自閉症の人(の一部)にはSHANK3に変異がある
Durand MC et al
Mutations in the gene encoding the synaptic scaffolding protein SHANK3 are associated with autism spectrum disorders
Nature Genetics 39, Jan 2007


少し古い論文です。
学部生向けの論文紹介で使ったのでついでにアップしておきます。

この論文は、次の論文と同じグループが出しています。

自閉症の人(の一部)にはNeuroligin3と4に変異がある
Stephane Jamain et al
Mutations of the X-linked genes encoding neuroligins NLGN3 and NLGN4 are associated with autism
Nature Genetics, may 2003



自閉症と神経タンパク質の関わりが始めて示唆された最初の論文(のはず)です。


【“自閉症にはSHANK3, Neuroligin3, 4 の変異が関与しているかもしれない”の続きを読む】

FOXP2ノックインマウスは声が変わる?

一昨日の霊長類研究所記念講演では、FOXP2の話も出たらしい。
しかも未公開データまで(少しだけ)見せてくれたらしい。

あぁ、行きたかった・・・ソフトボールやってる場合じゃなかったよ・・・


その講演者によると、FOXP2をマウスにノックインすると「声が変わる」とのこと。


ん?マウスにはもともとFOXP2があったのでは?
と思って確認してみたら、マウスにはFOXP2に「似た」遺伝子があるだけで、
ヒトのFOXP2はないとわかった。

興味深い実験結果ではあるが(早くPublishしてほしい)
FOXP2は転写制御因子だったはず。
(機能はよくわかっていないけれども)

そうだとすれば、制御される遺伝子群が同じでないと、
マウスにノックインしたところでヒトとの関連性を論ずるのは難しいようにも思う。


昨日の質疑応答の中で、松沢先生は
「自閉症は遺伝的なものでして、FOXP2という遺伝子の異常によって起こるのです」
と断言されていたけれども、これはいかがなものか。

FOXP2に異常があっても自閉症ではない人もいるし、
自閉症でもFOXP2に異常がない人もいる。
つまりFOXP2は自閉症の必要条件でも十分条件でもない。

他にも自閉症の原因として Neuroligin 4, Shank3, CADPS2, HOXA1
など多くの遺伝子が疑われており、これらを総合しないと「答え」は出まい。

加えて、自閉症が近年になって世界的に急増していることも考える必要がある。
真に遺伝だけが原因なら、急増することはあり得ない。
統計調査上の問題か(昔は自閉症の人も自閉症と診断されなかっただけ、など)
そうでなければ環境要因の関与も疑う必要があろう。
(環境要因とは、母親仮説ではなくて、近年になって増えた人口化合物による影響、という意味)

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