魅力的な研究環境を配備する前に

少々古いのですが、1月28日の日経新聞の記事より。

『科学技術立国の裏側(下)外資の引き合い多く 優秀な人材、流出止まらず』

<記事要約>
「東大情報理工学研究科では、優秀な修士課程学生の多くがグーグルへの入社を志望。
指導教官も、『他の会社なら引き留めるが、グーグルなら仕方がない』と言う。
グーグルの他にも、ゴールドマン・サックス、JPモルガンなどの外資系金融機関やコンサルティング会社など、就職先の中で外資系は約2割を占める。

外資系の待遇は日系企業よりも良い。
優秀であれば性別・人種・経歴に関係なく若い人材でも強引に引き抜く。
グーグルでは、インターン生でも、大学とは桁違いの高速処理システムを自由に使える。
インテルでは、正社員と同程度の待遇でインターンシップを用意。
HPに初年俸1000万円で就職した学生もいる。

日本の優秀な博士は米国でも評価が高い。
逆に、日本では外国人の技術者・研究者の割合は1%未満。
優秀な頭脳を国内に引き留めるための、魅力的な研究環境の配備が欠かせない」


この記事では「外資金融っていいな」というトーンで書かれています。
しかしこう言えるのは、外資金融とはいえ、学生時代の研究(IT)を生かすことができるからでしょう。
おそらくIT部門に行っているはずです。

しかし私のように、「生物基礎研究→投資銀行部門」という、意味不明な選択をする人には世間の風はあまり温かくはなく。

「すごい!・・・でも何の会社?」
「で、その仕事は何が面白いの?」
「時間、拘束されるんでしょ?かわいそう」
「子供ができたとき、その仕事って続けられるの?」

ぐすん(ノ△・。)

多くの「同情」は、実は会社に特化されたものではないとは思うのですけれど。
食べるために、面白くない実験をしている人だっていますし、
研究室によっては拘束が非常に厳しいところもありますし、
子供なんて、現状のアカデミアで持つ方が私なら不安です。


アカデミアや研究の存在意義は100%認めますが、しかしもう少し「アカデミア以外、研究職以外」の仕事についても自由に議論できる雰囲気を大学内に醸成すべきかと。
院生が26万人もいて全員がアカデミアや研究職に向いているわけがないのですから。
後になって後悔する博士が大量発生すると、意欲的な博士の士気も下がるように思います。

現状で、『様々な選択肢を検討した結果、やはり博士に行きたいと思った』という結論が下せるのは、「就職活動が許されている研究室で、就職活動をしようと思う人」という限られた人のみです。

記事にあるような待遇が云々の前に、基礎研究ではまず「世界はもう少し広い」ということを伝える必要があります。

実験では諸条件を検討して前に進むのに、自分の人生の検討をしない・できない状況はおかしい。

バイオ院生、投資銀行へ

とある外資系の投資銀行に内定しました。

多くの点で魅力的なので、そこに行こうと思っています。

部門は投資銀行部門。

会社を売ったり買ったり切ったり貼ったりするところです。

DNAワークの会社バージョン(違。


なぜここにしようと思ったか?

1. 業務内容が将来につながりそう(?)

将来、研究活動の評価機関を作ったり研究室経営のコンサルティングをしたりする上で、お金の流れを把握しておく必要がどうしてもあると考えました。

投資銀行の業務はつまるところ「資金調達」であり、世の有り余る金をどのようにしたら不足地帯に流すことができるのかを知りたいのです。

また、コンサルティングよりも、現場のどろどろした部分を見やすい、という点も魅力的です。

私には、人を動かす力が欠けているようでして。

それが求められる環境に身を置きたいという気持ちがあります。

マ○キンゼーのジョブプログラムでも、私の課題(欠点)は『論理で人を動かそうとするところ』『自分と同等以上の人とだけチームを組もうとするところ』と言われました。

どんな人であっても動かせる人間力がないと組織なんて組めないよ、とも。
ごもっとも。

私は論理力にも欠けるとは思っていますが、確かに論理で人を説得しようとする傾向は強いので、そこは改めたいと思います。

ただ、投資銀行では最初の数年はあまりクライアントに関わらなさそうではあります。

むしろ二流のコンサルの方が、実行支援までしているのでそちらの方が良いのではないかといわれればその通りなのですが。


うーん、でもコンサルもIBDも働く時間が同じくらいなら・・・お金とネームバリュー・・・

下積み時代があることに疑問は感じませんし。


2. 人が魅力的

ここははずせません。

メーカーや研究室と違って、銀行なんてやってることはみんな同じです。

異なるのは人だけ。

となれば、見るべきポイントは人だけ、とも言えます。

私の場合、超優秀な人が上司についてくれることが内定前に決定していました。

その人に教えられるなら入りたい、と思ったことが大きな決定要因です。

しかも私を役員面接に上げることを推薦してくれたのはその人らしくて。

やっぱり嬉しかったんですよね〜。


3. 海外との交流が活発

意外に、外資系の会社だと海外に出られないということが往々にしてあります。

なぜなら、海外には現地職員がいるため、日本人を送り込む理由がとても薄いからです。

とある投資銀行は、人がステキだったのですが、国家間の壁が高そうだったのでやめました。

その点、今回内定した会社は、新人研修がニューヨークだったりロンドンだったりする上、業務もグローバルにローテーションできるシステムもあるので魅力的でした。

やはり、今後自分が仕事をする上で(もしくはプライベートであっても)自分の判断には世界の趨勢を反映させたいのです。




逆に不安といえば、まず何よりも体力。

『9時-5時』勤務に耐えられるか大いに疑問。
(↑どっちもa.m.)

あとは、優秀な人が上司なのは有難いけれど、その期待にこたえられるかな、ってところ。

いま頑張って企業価値評価やら簿記やら法務やら勉強していますが。

これはポジティブな不安なので解消しようとは思いませんけれど。



意外に早く終わってしまいました、就職活動。

こんなのでよかったのか?という気が若干しつつも、
それなりに悩んだ期間はあったので、たぶん良いんだと思います。

就職活動を通して思うことは多くあるので、それはまた後日。

悲喜こもごも、学振。

学振の結果がわかる時期です。

毎年のことながら、落選した人への接し方がわかりません。

優秀で努力家なのに、テーマが難しくて結果が出ていない人が落ちていると特に。

通っている人もいるだけに、なおさら。

こういう現実を目の当たりにすると、研究評価の改善の必要性を強く感じます。

MOTの前に、management of intelligence。

こういう研究もやりたい。

国の大事な資源が浪費されるのは見るに忍びない。

山中教授:「日本の研究者はもっとコミュニケーションを」

今週のPRESIDENTに、iPS細胞の作成に成功した山中伸弥教授のコラムが載っていました。

ビジネスマン用の世俗的な雑誌に科学者の意見が載っていることに少し嬉しくなりました。


山中先生の主張は主に二つ。
1)「日本はES細胞の使用に対する規制を緩和すべきである」

「ブッシュ大統領はES細胞の使用に反対していますが、連邦予算をつけないというだけで、研究自体を禁止してはいません。」
「日本でヒトES細胞を実験で使うには、審査などで1年以上かかります。」

同じ京大の中辻先生もいつも指摘していますが、日本のES細胞の研究には規制が多すぎで、海外との著しいハンデがあるとされています。
頭脳流出を招いたり、頭脳流入を阻んだり、もしくはせっかく研究でプライオリティをとってもすぐに抜かれたりという問題が起こります。

山中教授はiPS細胞の知財を日本で確保するために苦吟されています(BTJジャーナル9月号参照)。
国益の防衛をなぜに末端の研究者がやらねばならんのか。
愛国教育とかの精神論の前に、事務レベルで国益損害を防ぐことを考えて欲しいものです。


2) 「日本は研究者どうしがコミュニケーションを深められる構造を作るべきである」

「アメリカの進んだ研究所になると、複数の研究チームが設備を共有し、浮いたお金で人を雇う。使わない機械よりも、新しいアイデアを持った人間の方が何倍も価値があることを知っているのです」

「海外では、壁のない大部屋で複数のチームが隣り合って研究をしている光景をよく目にします。吹き抜けにして、垂直にもコミュニケーションができるようにしているところさえあります。建物の構造からして日本と考え方が違います」

やはりこれこそがアメリカで研究をする真髄と思わせます。
正直、アメリカの方が実験機器がスゴかったという話はほとんど聞きません(逆はよく聞きます)。
しかし、アメリカにいると「研究者間の交流・議論」が日本と桁違いに深まるという点で渡米経験者の意見は一致しています。

日本では研究室内の議論さえ活発ではありませんし。

今日も、研究室間交流の重要性を痛感させる出来事がありました。
他のラボの友人と喋っていたら、その友人は私が欲しかったDrosophilaのcircadian rhythmに関する情報を持っていて、調べる手間が大幅に減りました。
というか、全く予想もしない情報だったので、一人で調べていたらたどり着かなかった可能性の大きいものです。

当局に頼っていても埒があかないので、しばらくは研究者が自発的に交流に勤めるしかないのでしょうね。
建物の構造などはどうしようもありませんが。

本当に、日本の研究は末端に対する負担が重過ぎるように思います。

火星の土地、natureが購読得点として分配

nature から、定期購読に付随するプレゼントが来ました。

プレゼントは、火星の土地


さすがnature、こういう俗っぽいことには余念がありません。

おそらく、Lunar Embassy という会社とタイアップしているのだと思います。(→HP

この会社は、世界で初めて月の土地を販売し始めたところ。

現在、1エーカー単位でばら売りしてます。

そんなことしていいんかい?

という点に関しても詳しい反論が載っています。


実際には議論の余地がありまくりなんですけどね。
法的にも、倫理的にも。


1エーカー3000円で販売していて、現在4億エーカーを売ったとのこと。

(買うといっても証明書=紙切れが送られるだけなので、手数料や原価は1000円くらいでしょう。よってこの会社の利益は、ざっと2000円×4億=8000億円・・・。頭いいなぁ。)


自分では制御不能の空間に対して「権利」を主張するって、おもしろいなぁ。

逆に考えれば、この地球も、どこか遠く彼方で宇宙人が
「あそこはオレの土地だ」
「いやワタシのだ」
なんてケンカしている可能性もあるわけですね。

ん、というかこれは地球各地の原住民の現状と同じなのか。
もともと原住民が住んでたのに、帝国同士が権利を主張しあって、交互に侵略してきたり。



うーん、いろんな思考実験をさせてくれる、funnyな企画です。


【追記:注意】
どうも、この「プレゼント」メールはnature側のミスのようです。

不特定多数の人に回っていて、一部の人にはお詫びメールが来ているようで。

がしかし、私のところには訂正メールが来ていません。

こちらはホンモノなのでしょうか。

確かにこんな企画があったような気がしていた(しかし定かではない)ので、全く疑いもしませんでしたが。

怖。。。

アカデミア志向の崩壊

lanzentraegerさんの『うすっぺら日記』の記事が話題になっているようです。

(Entry1:アカデミアへの進路の固定はどうしてなのか)
(Entry2:なぜアカデミア志向は瓦解したのか)

TBをたどれば他の方々のエントリーも読めます。
どれも読み応えがあります。

正直、そろそろこの問題への興味が脱感作ぎみなのですが。
それでも自分の問題である以上は無視するわけにもいかず。

今月号のAERAにも博士・ポスドク問題が取りあげられていましたが、
なんとも「うすっぺら」な記事でした。
博士の生の声がわずかしかない上に、ステレオタイプ。

「うすっぺら日記」の方がよっぽど「アツい」と思います。


ただ、この問題が周知されてきたからか、私の周りではアカデミア志向が非常に薄い印象があります。

周りの優秀な友人のほとんどが就職活動をしています。
「ドロップアウトして就職した」というイメージから逆転して、
「ドロップアウトして博士に行った」というイメージが定着するのも時間の問題ではないかとさえ思わせました。

実際に、「就活に失敗したからドクター」という人もちらほら・・・。


ただ、以前にも書きましたが「就職」と一口に言っても多様を極めるわけで、
学生の言う「就職と進学、どちらがいいか」という問題設定自体が視野の狭さを露呈しているようにも感じます。

Principles of Neural Science 6th, 発売延期

神経科学の代表的教科書、Principles of Neural Science の第6版がまた発売延期になったようです。

当初は今年の1月1日に発売する予定だったのに。

元旦当時、バンクーバーにいた私は、一刻でも早く購入しようとバンクーバーの書店を渉猟したのに。

ない。

ネットを確かめてみたら、今年の10月に延期、とのこと。

ショック。

それから9ヶ月。

今日、「そろそろ発売だな」と思ってAmazonを見てみたら。

発売予定日が来年の1月19日に伸びておる!


じらしすぎ。

いつの間にか Purves の Neuroscience 4thが発売済みだし。

3rdを読み終わっていない状態で新刊が出たので、ちょっと敗北感を味わいつつ。


とにかく早く欲しいです、Principle。

これだけじらす以上は最新のデータで固めて欲しい。

野村総合研究所(NRI) ビジネスインターンシップ

野村総合研究所(NRI)のビジネスインターンシップに行ってきました。

NRIは大企業や官庁へのコンサルティング業務をしている会社です。
シンクタンクとして生まれましたが、現在は戦略コンサルが主業務になっています。

インターンの期間は一週間あり、実験の進行に支障を来たしましたが、
それでもこのインターンへの参加は本当に良かったと思います。

何より、自分が社会に出たときの市場価値を概算することができます。
私はこのインターンを通じて、自分にはこの業界において市場価値はないということを知ることができました。

「考えることが好き」
「知識を仕入れるのも好き」
「世界の幅広い分野に興味がある」
「生産性の高いシステムを構築することが好き」
という自分の特性から、コンサルティングという仕事は自分に合っているのではないかと思ってしまったわけですが。
実際に仕事に取り掛かってみると、仕事内容自体はとても好きであることは確認できたものの、その処理スピードが半端なく遅い&センスがないことに気づいてしまいました。

今から訓練して市場価値を高めるという方法もありますが、現時点である程度のアウトプットを出せないことを考えると、やはり自分にもっと適合した分野で仕事をした方がよいと思わせられました。

その意味で、やはりインターンは会社と学生との双方に多大なメリットがあります。
・会社側は、間違った採用を防げます。(一週間も見ていれば、「使える」学生かどうかは簡単にわかります。)
・学生側は、間違った就職を防げます。(好きだからといってその会社でやっていけるとは限らない)

NRIの場合、インターンといえども、ES、SPI、個人面接、GD、GIと5つのテストを実施して学生をスクリーニングしています。
それでも今回、12人のうちかなりの人数が「僕/私はこの職に向いていない」と感じていましたから、やはり採用にミスはつきものだということがわかります。
それを事前に防げるのですから、こんなに良いことはありません。

8月20日の日経新聞に、「即戦力の博士育成のためにインターンシップを実施」という記事がありましたが、これには大賛成です。
企業としては、「優秀な博士は採りたいけれども、コミュニケーションのとれない人物だったりしたら大変だ」という意識があるようです。
インターンを実施すれば、採用したくない博士は事前に排除できるため、有能な博士を取る機会が増えます。
ただ、企業主導ではなく政府主導で行われているので、おそらく企業側もそんなに需要がないのだろうな、とは思います。

本当は博士ではなく修士の時点でインターンを行うべきとも思います。
博士に進まずに就職すべきということを理解させる機会になったり、
博士に進学するにしても、このままでは社会に出られないということを実感することができます。

私も今回の経験を通じて、今行っている実験の無謀さを悟りました。
もっと長期的な展望と計画性をもって行わなければ、私の実験の意義を誰も納得しないということがわかりました。
加えて、インターンでは自分の位置(価値)がわかったのとは対称的にに、ラボは自分の位置を定められるような環境ではないため、大きな不安も覚えました。
もし自分が研究にも向いていないのだとすれば、それはどのように証明し得るのか?
もっと厳しい、競争的な環境に身を置いた方がいいのではないか?
などなど、考えることが多くありました。


最後に。このインターンを勧めてくれたのは、工学部の友人と経済学部の友人でした。
自分の学部だけに閉じこもっていたら情報自体が入ってこなかったでしょう。
多様な人々と付き合おうとしたのは正しかった、と確認できたのも有意義でした。
今回も、個性的な友人(戦友)ができましたし。


NRIインターンでは、演習問題的ではなくて本物に近いケースが扱われますし、社員の方々も非常に協力的で、多くの時間を割いてくださいます。
短時間ながら、自分の成長を実感できる良質なプログラムです。
お勧めですよ。

『生化学 若手の会』雑感(2):先生方のメッセージ

今回の「若手の会」では、「海外留学ってどうなの?」というテーマのもと、
海外でPIを務めたor務めている人々のお話を聞くシンポジウムがありました。

海外事情に加えて、それぞれの先生の「学生へのメッセージ」が加えられており、
しかも皆さん仰ることが異なるので興味深く聞いていました。
4時間があっという間でした。

以下、特に印象に残っていた先生方の紹介とメッセージ。


●白楽ロックビル先生

『博士号とる?とらない?徹底大検証!』などの啓蒙書で知られる人。

実は私、この本の書評を7年前(高校生のとき)にネット上で書いたことがあり、
今ではその書評が白楽先生のHPに転載されています。
大変恥ずかしいです。
転載されるとわかっていたらもっとマジメに書いたのに・・・。

何にせよ、当時から白楽先生のファンだったので、今回挨拶を交わすことができてとても嬉しく思いました。

メッセージは;

「熱く生きよ!」

「今、面白いことをしろ!」





●近藤久雄先生

熱い人でした。
「熱く生きよ!」なんて言葉にしなくても、
全身から熱いオーラが出ていました。

私が文字にしてもその熱さは全く伝えられないので残念です。
それでも備忘録的にメモしておくと;

「ポスドクになったら分野を変えること。単なる競争ではなく、『誰もやっていないこと』をやること。博士課程までの分野と、ポスドクでの分野を融合させることで、オリジナルな分野が開ける。」

「分野を変えても、基礎力があれば何も問題ない。」

「『速い頭』より『強い頭』」

「考えるプロセスを大切にすること!」

「日本の研究者たちは、『将来は独立しよう』と思っていないように思う。PIは独立心がなければ無理。」

「いま何をすべきか、を能動的に考えよう」

「英語は心配しなくていい。重要なことを話していれば、相手は必死で聞いてくれる。」

「海外から機器を持ち帰る時、日本の税関はベラボーな関税をかけてくる。
関税はいかなる研究費からも補填できないので、機器を日本に持ってくるのは大変。」

「『留学なんてしたくない』という人ほど、留学すると居座る傾向にある。
なぜなら、そういう人ほど日本的な考え方を持っており、
その方が渡英・渡米したときに「おもしろい考え方だ」と尊重してくれるから。」

「イギリスの給料は安い。でも事務仕事はやらなくていい。」

「自分の研究人生のために妻の人生を犠牲にしてきたことには罪悪がある」

「常に『本質とは何か』を考え、個性を出すこと。」



●島岡要先生
ハーバード メディカルスクールのラボでPIを務めていらっしゃる方です。

この先生だけ英語で講演をされました。

その理由;
「みなさん、留学をするときに、英語力が心配でしょう?
私も心配でした。
でも私は当時、ある日本人PIの人の英語を聞いて、
『この程度の英語力でもPIができるなら僕にもできるはず』
という不遜な自信を持ってしまったんですね。
そこで今回は、皆さんの恐怖心を取り除くために、
私がその時の様子を再現しようと思います。
私の下手な英語を聞いて自信をつけてくれれば幸いです」


天晴。
確かに英語は上手ではありませんでしたが、
それを自覚しつつも「学生に自信をつけてもらうため」にあえて下手な英語を披露する先生には初めて会いました。
その勇気には感服します。

あと、この先生はPIを務めるにあたって
経営学の勉強もされているそうです。
曰く「ビジネスの経営理論はPIの運営にも通じる」

ドラッカーなどの著書を読んでいるとか。
とても共感がもてました。

メッセージは
「Strength-Based Approach」。
ドラッカーの主張の一つでもあるようで。

「弱みを埋めるのではなく、強みを生かせ」


うーん、でも自分の強みってどうやって同定すればいいんでしょう。
自己分析っていってもねぇ・・・

同定した後も、その強みが必ずしも研究に役に立つものとは限りませんし。


●野水基義先生

キリン、NIH、カナダ国立研究所、北海道大学、東京薬科大学などで研究された経験のある方です。

その講演、もはや

神。

おもしろすぎる。
もう聴衆はずっと笑いっぱなしでした。

研究者のM1グランプリがあれば間違いなく日本一です。

メッセージは

「研究に笑いを!」

。。。


多様性バンザイ。

『生化学 若手の会』雑感(1)

『生化学 若手の会』に行ってきました。

著名な研究者の講義があったり、
海外留学についての延々4時間にわたるシンポジウムがあったり、
ベンチャーを目指す人のためのワークショップがあったりしました。

「醍醐味は、学生同士が夜に語り合えること」と、HPには書かれています。

いやいや。
醍醐味というか、もはやこちらがメインでした。
全プログラムの4割が交流会(=飲み会)の時間。

「勉強をダシにした交流会」という、先輩の言は間違っていませんでした。

そして実際、講義やワークショップなどよりも
この交流会の意義の方が大きかった、というのが個人的な感想です。

魅力的な人たちとたくさん知り合えました。

「これから新聞社に入って科学記事を書きたい」という人。

「タンパク質のフォールディングを網羅的に調べられるシステムを開発したい」という人。

「ベンチャー企業に投資するだけではなくて、経営を学ぶ機会も提供したい」という、
ファンド系志望の人。

アツい人が多かったように思います。
進路も多様だったので、将来は興味深い話が聞けそうで、今から楽しみです。

ある人は、学部2年生にして院生よりも生化学に詳しくて、自分なりの生命観も持っていて、将来のヴィジョンも描けていたので、軽く衝撃を受けました。
尊敬できる人が年上だけでなく年下にも多くなる年齢になってしまったんだなぁ。


私のこのブログを読んでくれている人にも会えました。
ほんと狭いですね、この世界。

ブログのことには一言も触れなかったのに、
「生成文法に興味がある」という点だけで推測したらしいのですが。
そもそれですごいな・・・
その人もエッシャーが好きとかで、何か通じるものを感じてしまいました。


この『若手の会』、かなり歴史が古いようです。
私の父も参加したようで。

当時の『若手の会』は、何人かの高圧的な人々が勝手に場を仕切っていたようで、現在とは様子が違ったのであろうと思わせました。

今回のスタッフは(参加者も)高圧的な人など皆無で、むしろ「もう20代も後半なんだから、もう少ししっかりしてもいいのでは・・・」という人も珍しくありませんでした。
まずは敬語の復習から始めてはいかが、という人が多数。
彼らがそんなことで企業から「社会性がない」と思われていたりしたら損だなぁ、なんて思ったり。

終始、「のんびりまったり」。
まさに現代の若者。


父の世代で「勝手に場を仕切っていた人々」は現在、大学の学長などになっているようです。
当時は、ほぼ全員が「院生→助手→助教授→教授→学部長→学長」コースを歩むであろうことが前提だったのでしょう。
全員がライバル状態。

現在の「若手の会」では将来の職が多様です。
記者、コンサル、ベンチャーキャピタル、人材育成、コミュニケーターetc。
「研究者としての職は少ない」ことが周知の事実になったことで、研究者以外の道を模索する人が増えたのかもしれません。
お互いに、ライバル意識は皆無でした。
国際競争で生き残るためには芳しくないようにも思われますが。

また、むやみに研究者の職を増やすよりも、
研究以外の職に理系院生が浸透できる状態のほうが
社会全体としては発展性が大きいのかな、とも思います。
アカデミアの知恵を社会に還元しやすいでしょうし、
社会もアカデミアに働きかけやすくなるでしょう。

今回の参加者は将来どのような人々になっているのか、想像してみるのも一興です。