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脳の全ての神経回路を調べよう、という計画が進行中らしいです。
(c.f. Shuzoさんのエントリー:PLoS Comput. Biolのreview)コネクトーム、と呼ばれているとか。
(最近はとりあえずオームと呼ぶ傾向があるような・・・
グリコーム、メタボロームetc。
化学者がケミカロームとか、天文学者がスターロームとか言い始めたらヤだなぁ)
いつかは必要な作業だよね、とも思いつつ、
じゃぁフランシス・クリックが
「私は前障が全皮質に繋がっていることを見つけた」というあの業績は何をやったの?
という単純な疑問も沸いてきます。
前記エントリーの「コネクトーム 1.0」に書いてあるように
「領域レベルの大雑把な神経回路を調べた」ということでしょうか。
でもそうだとしたら2005年になって今更なぜこの計画が出てきたのかよくわかりません。
最近とても疑問に思うのは、
脳の回路を超高分解能で調べて、そのあとどうやって解析していくのだろう、ということ。
膨大なコネクションがわかって、でそのあと何をすれば機能が「理解」できるのでしょう?
なぜこんなことを思うようになっているかというと
つい先日、
mixiGraphというおもしろいソフトをみつけたことがきっかけです。
mixi に参加している人たちがお互いにどのように繋がっているのかを示すソフトです。
友人Aと友人Bは全く関係がないと思っていたら実は知り合いだったことがわかる、
など、1時間くらいは飽きずにソフトをいじることができます。
しかしですね、いじっていくうちに、画面上がもうイミフメイになっていくわけですよ。
私のmixi上の友人は約100人。
(ほぼ)全員をクリックして関係性を分析すると、
「人数5000人、結合10000」という結果が出ました。
つまり「友達+友達の友達」は合計でおよそ5000人、
それらはお互いに約10000の線で結ばれていることになります。
もう画面上はカオスですよ。
10000の線が交錯しているわけです。
分析も何もあったものではありません。
mixiの参加者は現在約1000万人。
コネクトームで、ミニカラムのコードを調べるときのノードの数に匹敵します。
全員の関係性を調べることは可能ですが、
で、結局調べた後で何をどうやって調べたらよいのでしょう??
たとえば、「日本に対してこのような態度を取れば(情報を入力すれば)、日本人はこう動く(出力する)」というような社会的機能を、人間関係の膨大なグラフからどのように読み取ればよいのでしょうか。
クラスター分析?
このあたりはまさにGoogleの出番なのかもしれません。
ドットコムバブルにアメリカが浮かれていた頃に、ひたすらウェブ構造を分析していたマニアな連中ですし。
しかしGoogleはウェブの「機能」でなく「構造」さえ把握できればそれでよかったのに対して、脳科学者は「機能」にまで発展させる必要あります。
ゲノムは全部わかったけど、その後どうしたらいいかよくわからん、
という遺伝学の状況が頭をかすりました。
いずれコネクトームは完成するでしょうから、
今からポスト・コネクトームのことを考えておくの無駄ではないかもしれません。
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『カオス的脳観―脳の新しいモデルをめざして』
津田一郎著 サイエンス社 1990
脳、というよりニューラルネットワークにおけるカオス性について、
その「考え方」が解説されている。
カオスに疎くても、カオスが脳に関わるであろうことは視覚的にわかる。
ローレンツアトラクタの二次元抽出グラフが
ニューロンのスパイクの形に似ていたりするから。
少し古い本で、「いまさらカオス?」とも思う。
しかし現在では、脳が複雑系であることは前提とされているものの、
その先が見えない状態であろうと思われる。
本書に紹介されているように、「嗅球にカオスが見られた」とわかっても、
その先に何が待っているのかよくわからない。
それでも近年、
ノイズと思われていたニューロンの自発発火に
規則性やオシレーションが見出されるようになったと併せ、
複雑系とカオスは常に頭の片隅に置いておきたい概念なのである。
『脳観』と題されるように、実際に脳のシステムについて
言及されるのは200ページ中50ページ程度で、
前半100ページはカオスの解説、
最後50ページは
「脳を理解するとはどういうことか」という点で議論が進められる。
カオスを抜きにしても、最後の「脳の理解とは何か」という点は興味深く読める。
どのアプローチを取れば「脳を理解できた」と言えるのだろう、という悩ましい問題をよく表象してくれていた。
【“【BOOKS】『カオス的脳観』:脳を "理解する"とはどういうことか”の続きを読む】