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【BOOKS】『脳学』:オリーブオイルは風邪薬より効く?

脳学 アッ!いま、科学の進む音がした (KS科学一般書) 脳学 アッ!いま、科学の進む音がした (KS科学一般書)
石浦 章一 (2007/08/23)
講談社



著者である石浦章一さんは、
・ 一般向けで、
・ 科学的正確性を期し、
・ 新しい話題を
・ 面白く、読みやすく
書いてある脳科学の著者として、池谷裕二さんと双璧を成すと思っています。

池谷さんの著書と異なり、引用文献を明記していないことが玉に瑕ですが。

(一般向けだから引用文献がないのは当然、と思われるかもしれませんが、意外に多くの脳神経系の専門家も読んでいるのです。自分の分野から少し外れただけで最新情報をアップデートできていないことはよくあるので。学生だけではなく、実際に複数の神経系教授・準教授が池谷さんの本を「勉強として」読んでいる例を知っています。そういった場合、引用文献が書いてある非常に助かるのです。)

以下、特に興味深かった点のメモ。

(以下の他にも、寿命を延ばす遺伝子や、アルツハイマー遺伝子など興味深い話は多かったのですが、前著『遺伝子が明かす脳と心のからくり』などの話題とかぶっていたため、インパクトは大きくありませんでした)

(1) 良性家族性新生児痙攣1(BFNC1)という病気があり、生後2週間以内にひきつけを起こす病気なのだが、この原因遺伝子はKCNQ1というKチャネルの異常だった。
この遺伝子はもともと不整脈の原因遺伝子として見つかったものだった。

(2) 18世紀から19世紀にかけてイギリスに君臨したジョージ3世は、頻繁に発狂することで知られていた。ジョージ3世の髪の毛が残っていたので、そこから原因を分析することになった。毛根がなかったのでDNA分析はできなかったが、髪の毛から質量分析をすることによって、大量の砒素と水銀が見つかり、これが原因とわかった。

(3) アメリカでは、ADHD用の薬であるリタリン(メチルフェニデート)が、集中力を高める薬として健常者にも大人気。また、記憶力を高める薬だけではなく、記憶力を悪くする薬も認可を受けた。これはPTSDのトラウマ消去対策。

(4) オレオカンタールという、高級オリーブオイルに含まれる物質は、風邪薬に入っているイブプロフェンに構造が似ている。どちらもシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するので、機能も似ている。しかもイブプロフェンよりも抗炎症能力が高い。

以下、感想。

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動かそうと思うと動かせない、神経義手

あるBMIについての記事を読んで、自分がBMIの実験に参加したした時のことを思い出しました。

いわゆるニューラル・プロスセティクス。
腕を失った人でも、「腕を動かそう」と思えば動かせる義手を作ろう、というもの。

私はコントロールとして参加しました。
腕に電極を当てて、fMRIの中に入り、ロボットアームを動かすのです。

手を動かすと、その信号を電極が受け取って同じようにロボットアームの手が動きます。

このとき、
1) 義手を見ながら手を動かす場合と
2) 義手を見ずに手を動かす場合の
2種類を実験しました。

不思議なことに、私の場合、義手を見ながら手を動かすと、義手がうまく動きませんでした。
(ちゃんと動く人もいるらしいです)

「この義手を動かそう」と思えば思うほど、動かなくなるのです。

で、義手を見ずに手を動かすと、ちゃんと義手は動きました。

何とも不思議です。
「手を動かそう」と思って動かす時の信号と、
自然に手を動かす場合の信号は異なる、ということでしょうか。

いつもはうまくいく実験も、誰かに見られていたりして自分の手を意識すると失敗することがあるのもこのせいか(違

階段を下りている途中で、「あ、次はどっちの足を前に出せばいいんだっけ」と急に思い出すと転びそうになったり。

・・・ないですか、そうですかorz


この実験は、「注意」というものが存在する間接的な(そして弱い)証拠のようにも思います。

MRIの画像がどのように異なったのか、興味深いところです。

あと、「手を動かしたいけれども動かしてはいけない」という状況では腕がどう動くのかも興味深いところです。

「動かしてはいけない」と思っているときには確実に動かないようにしておかないと、人によっては電車に乗るたびに意図せずして痴漢になってしまう可能性も否めず。


寒いと痛みが増す機構にはNav1.8が関与

寒いと痛覚が増すのは電位依存性Naチャネルが活性化するから
Zimmermann et al,
Sensory neuron sodium channel Nav1.8 is essential for pain at low temperatures
nature 447, 14 Jun 2007


こういう論文、大好きです。
「そうそう、これが知りたかった!」と言いたくなるような、
日常の疑問に生化学レベルで答えを出してくれる論文。


肌が冷気にさらされていると、何かが肌に衝突した時、異様な痛みを覚えることがあります。

小学生のとき、なぜか縄跳びは冬の体育科目だったわけですが、
たまに失敗して手の甲や頬に縄が当たると非常に痛かったのをよく覚えています。
明らかに、暖かい環境で失敗するよりも痛いんですよ。

この現象はとても不思議でした。
当時考えたのは、
・寒さで縄が硬くなっているからではないか(水が氷になると痛いように)
・暖かい時には汗が衝撃を吸収してくれるのではないか

など、物理的な性質のことばかりでした。
当時は物理学にしか興味がなかったのも一因かもしれません。

生体の過敏性の方が温度によって変わっていたんですね。

論文の概要は以下の通り;

・Nav1.8は、電位依存性のナトリウムチャネル(VGSC)の一つ。
TTX抵抗性を持ち、皮膚表層の侵害受容繊維のみに存在する。

・冷却により興奮する細胞膜において、TTX感受性のVGSCは、冷却されるにつれて不活性化する。

・それに対し、Nav1.8は冷却されても不活性化しない。

・むしろ低温では興奮閾値が下がるので、わずかな膜電位の変化でも活性化する。

・低温下では、Nav1.8のみが、中枢神経へ信号を送ることができるチャネルである。

・実際に、Nav1.8をノックアウトしたマウスでは、冷却刺激にも機械刺激にも応答しなかった。

・低温下であっても痛覚は重要な情報であるため、このような機構が進化的に保存されてきたのであろう。

(以上)


何ともすっきりした論文です。

しかし、確かTRPVファミリーの中にも、メントールなどのリガンドが結合することで活性化の閾値が下がって、中枢に情報を送るようなものがあった覚えが。
あれは侵害受容ニューロンnociceptive neuronではないのかな。

あと、低温下でも痛覚は重要とディスカッションされていますが、
閾値を下げる必要まであるのかは疑問に思いました。
他の受容体が不活性化しているのであれば、それだけで相対的に強い刺激になるはずで、わざわざ『温暖下では痛みとは感じない』刺激にまで反応する必要があるのか疑問です。

このあたりは進化的な中立性が原因なのかもしれません。

PKU / 脳と心臓の動脈構造

取りとめもない雑感を少々。

・フェニルケトン尿症phenylketonuria (PKU)という病気の存在を知った。

症状としては、精神遅滞が最も顕著で、他にも嘔吐・過動・痙攣・興奮などがある。

PKUは劣勢の遺伝子のホモ接合体によって発症し、
欧米では100人に一人がこの遺伝子を持っているため、10000人に一人がこの病気にかかる。

PKUではフェニルアラニンヒドロキシラーゼが欠損している。
これはフェニルアラニンをチロシンに変換する酵素。

その結果、体内にフェニルアラニンが蓄積し、正常ではチロシンから合成されるドーパミンが低下する。
その結果、脳の発達が異常になる。


現在、病院では新生児の血液中のフェニルアラニン濃度を調べ、
濃度が高ければ直ちに低フェニルアラニン食で育てるよう親に指導している。

この食事によって血中のフェニルアラニンを減らし、精神遅滞を防げる。


・・・らしい。
以上、Diamond et al, Prefrontal cortex cognitive deficits in children treated early and continuously for PKU, Chigago Univ. Press, 1997などより抜粋。

よくわからないことが2点;

1) チロシンが足りなくて欠乏するのはドーパミンだけでなく、
ドーパミンから作られるノルアドレナリンやアドレナリンも同様なのでは?
これらが足りないことによる障害はないの?

2)低フェニルアラニン食で育てれば確かにフェニルアラニン濃度は下がるだろうが
結局フェニルアラニンヒドロキシラーゼは増えていないわけで、
やはりドーパミン以下の神経伝達物質は欠乏したままなのではないだろうか?



↓また別の話。

・脳と心臓の動脈の構造は他の動脈と比べて極めて異なる点がある、
ということを解剖学のテキストを読んで知った。

それは「迂回路がない」こと。

他の臓器や手足であれば、動脈が一本や二本つぶれても、他の血管が迂回しているので、その先の臓器・四肢に血液が行かなくなるということはない。(大動脈を除く)

しかし脳と心臓の動脈は、枝分かれしていくばかりで再び融合することがない。
つまりある動脈が途切れると、その先の部分では必ず血液が不足する。
これが脳虚血・脳卒中などの原因になる。


これはとても不思議。
なぜ脳と心臓という、生命のコア部分の動脈が保険をかけていないのだろう?

進化の中立説を採れば、
「昔は脳卒中とか心臓発作で死ぬことは特に種の保存に不利ではなかった」から
ということになるのだろうか。
そんな年齢になる前に他の原因で死んだとか。

でもそうだとしたら、脳や心臓よりもずっとどうでもいい他の器官では
保険の効いた動脈構造になっているのが不思議。

血管の発生過程を勉強していないので細かい議論ができないのが残念だ。

Synapses 第4章 5~8節 要約

やっと最後。プチ疲労。
やはり基礎知識を日本語で仕入れていない分野を英語で読むと時間がかかる。

以下、
・How does Calcium Trigger Neurotransmitter Release?
・Function of Rab3 GTP-Binding Proteins in Synaptic Vesicle Exocytosis
・Protein Dynamics in the Synaptic Vesicle Cycle: Role of Synapsins
・General Implications for Membrane Traffic
【“Synapses 第4章 5~8節 要約”の続きを読む】

Synapses 第4章 4節 要約

Synapses 続き。

Molecular Basis for Synaptic Membrane Fusion
The SNARE Cycle and munc 18a/nsec1



【“Synapses 第4章 4節 要約”の続きを読む】

Synapses 第4章 3節 要約

前エントリーの続き。

全訳は無理でも要約くらいなら。

むしろ書きながら読んだ方が理解が早い。


【“Synapses 第4章 3節 要約”の続きを読む】

脳の解剖学的な男女差

男女の脳にはどのような差があるか?

面白い点ではありますが、脳がどう機能しているのか判明していない段階で論じても
あまり意味がないように思ってしまい、あまり真面目に論文を読んだことがありませんでした。

しかし、これまで熱心に論文を読まなかったおかげで逆に誤解を信じてしまっていました。

「女性の方が脳梁が大きい」というもの。

1982年のScienceの論文なのですが、追試ができるような代物ではなかったようです。
(→c.f. Shuzoさんのブログ

脳梁は年齢によって変化するのに年齢をコントロールしていなかったり
サンプル数が少なすぎたりと、様々な問題があったようです。

この論文を引用して、
「だから女性の方が左右の脳の情報交換量が多くて、連想が得意&空間認知が不得意」
などと論じているテキトーな本もありましたけど。


少し調べてみたら、男女の脳の解剖学的な差を論じているものには次のような論文がありました。

(以下の論文は全て年齢をコントロールしています)
(ただし年齢が同じでも成長度は異なることがあるので注意)

L.S.Allen et al
“Sex differences in the corpus callosum of the living human being”
J. Neurosci. 11, 1991, p993-


・サンプル数122人
・脳梁の容積に関しては男女の差が認められない
・脳梁の膨大部(後部1/5の部分)の形態は、女性の方が男性よりも膨らんでいる
・ただし、重複の度合いは男女で重なる部分もある



L.S.Allen et al
“Sexual dimorphism of the anterior commissure and massa intermedia of the human brain”
J. Comp. Neurosci. 312, 1991, pp97-


・サンプル数100人
・前交連は女性の方が男性より12%(1.7平方mm)大きい
・視床間橋も女性の方が55%(17.5平方mm)男性よりも大きい
(視床間橋massa intermedia=第三脳室を介して左右の視床を結ぶ構造)



M.A. Horman et al,
“The sexually dimorphic nucleus of the preoptic area in the human brain”
J. Anat. 164, 1989, p55-72

・性的二型核(SDN-POA)の大きさが、男性の方が女性よりも2倍大きい
(SDN-POAとは、内側視索前野にある神経核。出生前後のアンドロジェンによって作られるため、オスの方が肥大していると考えられている。ラットではオスの方がメスの8倍も大きいことがある。)



L.S.Allen et al
“Two sexually dimorphic cell groups in the human brain”
J.Neurosci 9, 1989, pp497-


・SDN-POA(本論ではINAH1と呼ばれる)に性差はない
上記論文に反論している。ちなみにINAH1~4は全て視床下部にある神経核)
・INAH2および3は男性が女性よりも2倍以上大きい
・分界条床核(BST)の後内側部の大きさは、男性が女性の2.5倍(@26歳)
(BSTとは、視床下部と辺縁系を結ぶ位置にあり、性腺刺激ホルモンを分泌すると言われる場所)



D.F.Swaab et al,
“Sexual differentiation of the human hypothalamus in relation to gender and sexual orientation”
TINS 18, 1995, pp264-


・視交叉上核(SCN)の容積に男女差はない
・SCNの形状が、男性では球状だが、女性では前後に伸びた長方形である
・VIPを分泌する細胞数では、30歳まででは男性が女性の2倍。65歳以上では性差なし。



やはり、形状や大きさを論じたところで何がわかるというわけでもなさそうなのが悲しい。
幼児期から水頭症にかかった人では、大脳の容積が平均の10%しかないのに知能が普通だったりすることを考えると
「大きいからこの能力が高い」云々を論ずるのはかなり無理がありそうに思います。

心地よい苦味、不快な甘味

Pfaffmann’s work on taste


味覚に関する興味深いグラフを発見[*]。

甘味、苦味、酸味、塩味
それぞれの味は、濃度によって快・不快が異なることを示したグラフ。

おもしろいと思った点が2つ。

1) 全ての味に対し、超低濃度では不快と感じている。

Methodを読んでいないのでなんとも言えないが、
低濃度では味を検知できておらず、他の要素によって
不快と感じている可能性はないのだろうか。

2) 苦味も、一定値では快感になる。

ビールがうまいのもそのせいか?
子供の時にはビールがまずかったことを考えると、
このグラフは年齢によっても変わるのかもしれない。


疑問点としては、このグラフでは甘味が不快に達していないことが挙げられる。
しかし、アメリカのケーキなどは、「甘すぎて不快」である。

著者のPfaffmannさんはたぶんアメリカで実験をしている。
食生活の異なる文化の人ではまたグラフが異なるかもしれない。


意外に味覚の分子機構はほとんど解明されていないらしく、
未だに甘味、苦味、酸味、塩味、うまみの定義さえできていない状況らしい。

(ある論文は、「この論文は味の定義を目指している」としながらも
論文中に「塩味をラットに投与すると・・・」と書かれていた。
その「塩味」は一体何?)



[*]Pfaffmannという人の論文だが、かなり古い論文らしく、PubMedで検索してもデータが出てこなかった。
このグラフそのものは『よくわかる生理学の基礎』Medsi より転写。

正直、「相対濃度」の意味がよくわからない。

オキシトシン発見以前の助産方法

オキシトシンは子宮収縮を促進し、出産を助けることで知られている。

このことから現代では、出産を早めたり出産を容易にするために合成オキシトシンが妊婦に投与されることがある。

(oxytocinの語源oxytoc-は「早い出産」の意味らしい)

ではオキシトシンが発見されるまではどのように子宮収縮を補助していたか?

助産婦は、双子が生まれたときには、
第一子に母親の乳を吸わせることで、第二子の出産を助けたそうだ[*]。

乳腺が刺激されると下垂体からオキシトシンが分泌されるため、
生理学的に正しい行為だったということになる。


つくづく、経験医学は侮れない。
この行為が有効であると感じるためには、
「第二子の出産中に、生まれたばかりの第一子に乳を吸わせる」という
かなり大胆なことを、相当の回数やらねばなるまい。


そもそも双子が生まれる確率は0.2%。

一日に一人助産していても、一生のうちに20組ほどの双子にしか出会えない。

過去の助産婦は、一体どのようなプロセスを経て
「初めの子に乳を吸わせると二人目の出産が楽になるわよ」という経験を取得したのか。


不思議でならない。





[*]トートラ『解剖学』丸善 2006より。
良い本だが、最近もっと良い本(トートラ『人体の構造と機能 第2版』2007)が出た。
『解剖学』を包括しており、かつ大容量。なのに値段が変わらない。

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