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一流の条件とは。【BOOKS】『物理学は越境する』

物理学は越境する ゲノムへの道 物理学は越境する ゲノムへの道
和田 昭允 (2005/08/24)
岩波書店

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日本のゲノムプロジェクトを率いた著者が、
日本の研究体制に対する批判と、研究者に対するエール
自伝の形でまとめている。

一流研究者は、レフェリーの半分くらいはアホだと思っていて
真正面から論争し教え説得するのが普通、というのがハーバードで習ったこと」

といったように、本文の中には「無能な科学者」に対する批判が
ちりばめられている。

加えて、小柴昌俊氏を筆頭に、著者の和田氏を絶賛する
「和田先生紹介コラム」が大量に載せてある。
宗教的な崇め方と思わせる文章も少なくない。

これらの要素により、最初は読んでいて
「そりゃ無能な研究者もいるかもしれないけど、自分はどうなの?」
「自伝に自分を賞賛する文章を入れるか?」
と、かなり抵抗を持ってしまった。

しかし読み進めるうちに、逆にこちらが和田氏の「信者」になりかけてしまった。

確かにこの著者の能力は桁違いなのであろうことが伝わってくる。

母方の曽祖父は木戸孝允、
父方の曽祖父は西園寺公望の弟、
父親は東京帝国大学の教授。

幼い頃から自然に英才教育を受けていた著者にとって、
この能力は「自然」であるが故に、他の研究者たちが「不自然なまでに無能」に
感じることが多かったのではないかと思った。


和田氏は、英米でのワトソンやクリック達と同様に、
日本で生物学に物理学を持ち込んだ人物である。

英米は物理学を生物学に持ち込むことがスムーズに進み、成功を収めたのに、
日本で物理学を生物学に持ち込むことがいかに困難だったのかを教えてくれる。

日本人が開発した世界初のDNAシーケンサー技術は、
日本政府が自らの手で特許を取り下げた。


またゲノムプロジェクトに対しては
「これはサイエンスではない」
「人間がやれることをなぜ機械にやらせるのだ」
などの理不尽な非難を浴びた。

日本がイニシアティブを取れるはずだったのに自滅した例の数々が紹介されている。

アメリカが日本の分子生物系プロジェクトを徹底的に
押さえ込もうとしていたくだりを読むと、少なくとも
アメリカが恐れるほどに日本はこの分野のリーダーになり得たことが伺える。


そんな著者が、60年の研究生活で多数の一流の人間から
教えてもらってきて自然と悟った、「一流の人間」としての条件が以下の7つ。
【“一流の条件とは。【BOOKS】『物理学は越境する』”の続きを読む】
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誰にも言えなかった実験ミス集(1):電気泳動編

自分が犯した実験ミスを記録していけば
今後ミスが減るかもしれない。(減らないかもしれない)

誰かの役に立つかもしれない。(立たないかもしれない)

当時は恥ずかしくて言えなかったミスの数々。
もう時効だろう。


1)バッファー濃度

電気泳動用のバッファーとして、通常の10倍濃度
ストック用バッファーを使ってしまった。

アプライ中に、全サンプルが浮いてきた。

「アプライ中のピペット射出の勢いが足りなかったのか」という考えが頭をよぎった。


2) ボイル

アプライ前にサンプルを5分ボイルするはずが、

実験ノートに「boil for 5’」でなく、
勢いで点を一つ多く「boil for 5”」と書いてしまったため、

「5秒間ボイル」という意味不明な行動に出る。

この5秒間ボイルの勘違いは2ヶ月ほど続いた。

ついでに、(少なくとも自分のサンプルでは)ボイルが5秒でも5分でも大差なかった。


3) コンタミ?

妙なバンドが出たため、処理過程のどこかで試薬がコンタミしていることを疑った私は、
NaClなどの塩も含めて全て電気泳動して確かめようとした。

5M NaClをそのまま電気泳動にかけたときの壮絶さを知るのは私くらいのものであろう。


スマイリングどころか、口裂け妖怪のごとくゲルが歪む

それを見て、当時は「もっと薄めるべきだった」と反省した。

根本的にセンスがおかしかった。

Googleの研究開発リーダーは脳科学者

Google の研究開発責任者は脳科学専攻だったんですね。
(Biotechnology Japan のメルマガを読んで知りました)

とても納得がいきます。

Googleはワールドワイド・ウェブを脳に見立てているのではないでしょうか。

世界中に10億台近くあるパソコンが互いにネットで結ばれている。
情報の中枢があるわけではなく、互いに相互作用している。

10億台という台数は脳神経の1000億から比べるとまだまだですが、
大脳新皮質だけなら140億程度。
一桁違うだけです。

しかも、水頭症の人は頭蓋骨の中が95%空洞でも知能が正常であることを考えると、
「知能」を持つために必要な最少の神経細胞数はもっと少ないと考えられます。
(水頭症患者の知能については Roger, “Is Your Brain Necessary?” p1223, Science, vol 210, 1980

コンピューターにしたって、パソコンそれ一台は
ニューロンっぽくはないわけで、その中のICチップなど
一つ一つをニューロンに見立てるなら桁がいくつか違ってきます。

加えて、NSA(米国国家安全保障局)などでは
コンピューターの数がそもそも「一台、二台」ではなく
「エーカー(4000平方メートル)」という面積単位で測られています[*]。
存在するコンピューターの規模自体が想像するより多いかもしれません。


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【ニュース】ゲーム好きの医者は手術が得意

たまにはネタを。

CNNによれば、「テレビゲームの好きな医者は腹腔鏡手術が得意」だそうです(→リンク)。


アイオワ州立大学による調査。

<調査方法>
ハーバード大学医療センターの医者33人が対象。
腹腔鏡手術という作業をしてもらう。

(これは最近流行している方法。
腹を切開せずに小さな穴をあけ、その穴から器具を差し込んで、
器具の先にあるハサミやメスなどで様々な作業をする。
患者への負担が小さいが手先の器用さが必要

<結果>
1週間に3時間以上テレビゲームで遊んでいた医者9人は、
全くゲームをしていなかった15人と比べて、

1)ミスが37%少ない
2)作業時間が27%早い
3)外科処置のテストで42%スコアが高い


という結果が出たそうです。
また、この差は研修を受けた期間や、過去にこの器具を
使用した回数よりも高い相関を持っていた、としています。

この調査は、これまでに調査・報告されてきた以下の
「ゲームの効用」をサポートすると言っています。


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【BOOKS】『科学ジャーナリズムの世界』:科学の報道における問題

科学ジャーナリズムの世界―真実に迫り、明日をひらく 科学ジャーナリズムの世界―真実に迫り、明日をひらく
日本科学技術ジャーナリスト会議 (2004/07)
化学同人

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「あるある大事典」のスキャンダルが、今週のnatureに載っている[1]。
(nature 445 p804-)

英語で読むと余計に日本の科学リテラシーの低さが際立つように思える。
(中立性を維持するためか、イギリスの捏造報道についても数行だけ触れられている)

<追記>
vikingさんのブログでもnatureの記事に関するエントリーがあるのを発見。
「あるある」事件に対する評とリンクハブであるこちらのエントリーはとても参考になる。
<追記終了>

実際、本書『科学ジャーナリズムの世界』にも、
日本の大人の科学知識はOECD14カ国の中で
最低レベルにあることが示されている[2]。

「宇宙は巨大な爆発によって始まった」
「電子は原子より小さい」

というような問題の正誤がわからないらしい。

(ただこのビッグバンの問題はいささか曖昧ではある。
ビッグバンは、この世に存在するいかなる爆発よりも小さい状態で発生している。
「巨大」とは必ずしも言い難いかもしれない)

しかし本書では低い科学リテラシーに対して
多様な見方が提示されており、読んでいておもしろい。

科学や技術に対する国民の関心が薄いのは実に健全な社会なのだという考え方もある。

つまり、国民が科学や技術を、そして科学者や技術者を信頼しているからこそ、それらに無関心でいられるのだ。

自動車を購入したとき、それが本当に安全に走るかどうかを、その仕組みを勉強すしなければ運転しないというのは不自然だ」

さらに、自分たち科学記者の存在意義にも疑問を投げかける。
科学報道があれば市民の科学リテラシーはあがる、と期待されている。
が。

『遺伝子は、遺伝子組み換えトマトに含まれているが、
 ふつうのトマトには含まれていない』

という正誤問題に対する誤答率は・・・


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レム睡眠の意味、大脳の自発発火の規則性、全てカオスが説明する?

『カオス的脳観―脳の新しいモデルをめざして』
津田一郎 著 サイエンス社 1990


一つ前のエントリーの続き。

若干、前言を撤回。
「カオスの先に何があるのかわからない」と書いたが、
カオスの特徴を知ると、知らない場合に比べて、
脳の様々な現象に「意味」を見出せるようになるのではないかと思い始めた。

本書には示唆的な例がいくつも登場する。

特に印象的だった のはNoise-Induced Orderの考え方。

Noise-Induced Orderとは、
「非一様なカオスにランダムノイズを加えると、
元のカオスに潜んでいた秩序構造が顕在化する」

という現象のことである。

簡単に表現すると、一見ランダムに見えるカオスも、
ノイズでフィルタリングすると規則性が見出せる、
ということである。

この一節を読んだあと、Shuzoさんのブログを読んで、
大脳皮質のノイズが長い周期で同期しているという論文を思い出した。
(Mao et al, Dynamics of spontaneous activity in neocortical slices. Neuron 2001)

それまでただのノイズだと思われていた大脳の自発発火に、
5分~10分単位での一斉発火が見出された。
神経同士が同期しているのである。

この論文を読んだ当初は、「ノイズの中に規則が埋もれている」と思ったが、
そうではなく「ノイズのおかげで規則が見える」のではないか、と思えるようになった。

規則性とは異なるが、「ノイズはむしろ有用」という意味ではJeffreyらの論文も興味深い。
(The Contribution of Noise to Contrast Invariance of Orientation Tuning in Cat Visual Cortex, Science, 2000)

この論文の内容は以下の通り。


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【BOOKS】『カオス的脳観』:脳を "理解する"とはどういうことか

『カオス的脳観―脳の新しいモデルをめざして』
津田一郎著 サイエンス社 1990

脳、というよりニューラルネットワークにおけるカオス性について、
その「考え方」が解説されている。

カオスに疎くても、カオスが脳に関わるであろうことは視覚的にわかる。
ローレンツアトラクタの二次元抽出グラフが
ニューロンのスパイクの形に似ていたり
するから。

少し古い本で、「いまさらカオス?」とも思う。
しかし現在では、脳が複雑系であることは前提とされているものの、
その先が見えない状態であろうと思われる。
本書に紹介されているように、「嗅球にカオスが見られた」とわかっても、
その先に何が待っているのかよくわからない。

それでも近年、ノイズと思われていたニューロンの自発発火
規則性やオシレーションが見出されるようになったと併せ、
複雑系とカオスは常に頭の片隅に置いておきたい概念なのである。


『脳観』と題されるように、実際に脳のシステムについて
言及されるのは200ページ中50ページ程度で、
前半100ページはカオスの解説、
最後50ページは「脳を理解するとはどういうことか」という点で議論が進められる。

カオスを抜きにしても、最後の「脳の理解とは何か」という点は興味深く読める。
どのアプローチを取れば「脳を理解できた」と言えるのだろう、
という悩ましい問題をよく表象してくれていた。

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【記事】科学者のための結婚アドバイス

今週のnatureに「科学者のための結婚指アドバイス」がありました。
(nature 445 pp700-702, When two worlds collide)


がしかし。
アドバイスはその辺の結婚アドバイスと変わりありませんでした。

「遠距離恋愛の時には何があっても毎日話すこと」
「常に、どこまでが許容範囲なのかを明確にし、妥協点を見つけること」


などなど。
科学者に特化した話ではあるまい。

(酒井冬雪の「理系のための恋愛論」が既に理系とは関係なくなっているのと同様か。)


「子供を生むなら、子供が病気のときのために、両親のどちらかが常に家にいるようにすること。養育費の節約にもなる」

のように、「そりゃできればいいけど、どうしようもないじゃん」系のアドバイスもあますが。

とりあえず相手が科学者じゃなくても結婚しながら研究は大変そうです。

いつ結婚しよーかなー。
悩むわー。


以下、おもしろかったデータ。
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【BOOKS】『見る脳・描く脳』:ピカソの絵は視覚の背側経路を切断した絵

見る脳・描く脳―絵画のニューロサイエンス 見る脳・描く脳―絵画のニューロサイエンス
岩田 誠 (1997/10)
東京大学出版会

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『臨床医が語る 脳とコトバのはなし』の著者による「脳と絵画」の本。

私は言語への興味の方が大きいので『脳とコトバのはなし』の方がおもしろかったが、
本書も絵画の素人に「脳科学者なりの楽しみかた」を教えてくれて楽しい。

たとえば;

・ピカソのキュビズムは、視覚情報処理機構のうち腹側経路だけを使って見た図といえる。

ある患者は、背側経路が損傷されていたため、見たものが「何か」ということはわかるが、「どこに」という位置情報を欠損していた。この患者が描く絵はピカソのようになる。

・ルネサンス以前の絵画は、画家の心象風景が構図だった。
描画対象の大きさは網膜像の大きさとは関係なく、画家の心の中でのその対象の存在の大きさによって定まる。

・ルネサンス期は、「網膜に映るリアルな像に迫ろう」とする。

ここに来て遠近法が開発されることになる。
さらに、視点のみならず視線さえ固定したレンブラントなどは、画の中心は色鮮やかだが周辺は白黒という構図を取る。

これは、網膜の中心は錐体細胞が集まっているが、周辺には存在しない(=網膜の時点では白黒の情報しかない)ことに由来している。

・ルネサンス以降の印象派は、「網膜に映る像と頭の中での構図は異なる」ことに気付く。

絵が「リアル」に見えるためには、写真のように像を固定してはならず、対象を分析・分解し、一部のモジュールは故意に欠落させたり強調させる必要がある。

モネの絵は、輪郭の認識を欠落させた代わりに、色覚を詳細に分析し、再構成した画と言える。


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クレイグ・ベンターは女性?:ヒトゲノムは誰を解析したのか

Biotechnology Japanのメルマガ(2/19)に気になる記事を発見。

【セレラ・ゲノミクスのクレイグ・ベンター社長は女か?】

その記事によると;
今月ドラフト配列が決定したウマゲノムはメス。
現在解読が進んでいるイヌゲノムもメス。

なぜメスか?

それは、ショットガンシークエンスにおいては一度ばらしたゲノムをコンピューター上で再構成するので、X染色体を2つ持っているメスの方が解析が容易だから。


しかし、ヒトゲノムはどうか?
セレラ・ゲノミクスはヒトゲノム解析の対象としてクレイグ・ベンター社長のゲノムを使用したではないか。

あの競争に負けず嫌いの社長が、競争に負けるリスクを犯すとは思えない。
となると、ベンター社長は女性なのかも・・・?



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【BOOKS】『物理学と神』:宇宙項は出所不明

物理学と神 物理学と神
池内 了 (2002/12)
集英社

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「私には、宇宙項教が流行するような宇宙論こそ、本当の『危機』にある、と思えて仕方がない」

なんだ、やっぱりそうなのか、
と安心させてくれると同時に考えさせられる一冊。

宇宙論や素粒子論をかじると、
「一体その概念はどこから出てきたのか?」と思うことがよくある。
宇宙論では宇宙項がその代表。

単に門外漢だからか、と思ったが、物理学博士の著者がお墨付きを与えてくれた。

宇宙項の出所は不明だが、定常宇宙論での真空からの物質生成ほど怪しげではない。

宇宙項教は、かのアインシュタイン大先生が教祖なのだから、何をためらうことがあろうか、とりあえず信じる(ふりをする)ことにしよう。

そうすれば論文数が稼げるという現世のご利益がある。
アインシュタイン様様である。

宇宙項の出所がわからないところ特に都合よい。
好きなだけ調節して、お好みの宇宙を造ることができるからだ。」
(強調は引用者)

やはり宇宙項は、「これがあると観測の説明がつく」という、実態不明の代物であるらしい。
しかもダークマターも同様だそうで。

「気とか霊が物を動かすというほど荒唐無稽でもないが、実態が明らかでないものに原因を押し付ける手法は似ていないでもない」


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【BOOKS】『手話の世界へ』:手話文法を作り出す能力

手話の世界へ 手話の世界へ
オリバー サックス (1996/02)
晶文社

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「耳の聞こえないこの老女は、ひとり夢想にふけることがあった。
そんな時、両手をせわしなく複雑に動かし、編み物でもしているようなしぐさをする。

だがこの老女の娘(この娘も手話ができる)によると、それは編み物をしているのではなく、手話で考え事をしているのだという。

寝ているときでも、両手をベッドカバーから出して手話をすることがある。
手話で夢を見ているのだ


本書では、手話を操る人々の驚異的な世界が展開される。

聴覚障害をテーマにしたドラマや小説などを読んでいると、彼らが「弱者」であることが前提とされているが、それはあくまで「社会的弱者」であって、言語能力においては弱者でもなんでもないことがよくわかる。


彼らは口話とは異なる独立した文法と独立した空間解析によって独自の世界を築いているのだ。
いわば「外国語をしゃべる人」なのであり、言語能力に『障害』があるわけではない。


加えて学術的にも、手話は脳の言語機能を解析する上で非常に有益な現象である。

チョムスキーの言う「人間に特有で、生来的な普遍文法」を示唆する強い状況証拠を数多く提供してくれるからである。


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【BOOKS】『脳の話』:脳科学のいま、むかし

脳の話 脳の話
時実 利彦 (1962/08)
岩波書店

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「一つ一つのネウロンの働き方については、かなりはっきりしたことがわかってきた。
しかし、脳が働いて精神活動を営んでいるときの、ネウロン連鎖における活動パタン形成については、ほとんど何もわかっていないといってよい。
ネウロン連鎖があまりにも複雑なためである。」

これは約半世紀前に出版された本書の一説。

以下は、2007年に出版された『進化しすぎた脳』(池谷裕二著)の一説。

「神経細胞も間違いなく『複雑系』で動いている。
1個の細胞だったら、きれいに数式で記述できる。
でも、これがたくさん集まったらどうなるかわからない。
実際、神経回路のモデルを作ってシミュレーションすると、思いもよらない様々な現象が起こり得るんだということが今わかりつつある。
今の脳科学というのはまだまだそんな段階なんだ。」


ほとんど言っていることが変わらない。


確かにこの半世紀の脳科学の進歩は目覚しい。

これは生理学的な進歩に限らない。
『脳の話』に出てくる方の「複雑」の意味と、
『進化しすぎた脳』に出てくる「複雑系」の意味は異なる。

複雑系という概念が誕生しただけでも大進歩ではある。
しかし要するに複雑系は「よくわからん」ということを数式化しただけとも言える。

大局的には、この点においてまだスタート地点のような感覚は受ける。

たとえるなら
“光速はとんでもなく速いけれども、宇宙の大きさらか見れば遅々としたもの”
という印象。

脳という小宇宙の全貌を見渡せるのはいつの話なのやら。

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色盲の人にもわかる論文を書いていますか?

「あなたのレフェリーが色盲だったらどうするんですか」

今週のnature ( 08 Feb 2007)の読者投稿欄にあった一言。

論文のFigureには、色盲の人への配慮が足りないものが多いことを指摘するものでした

「色盲の人のためにお願いします」という態度ではなく、
「色盲の人への配慮が足りないとあなた自身が損をするんですよ」という強い姿勢がとても気に入ってしまった。

実際、レフェリーのほとんどが男性で、しかも男性の8%が色盲であることを考えると、配慮して当然のことに思えてきます。


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自閉症:オキシトシンは「他人の心を読む」のを助ける

オキシトシンは「相手の心を読む」のを助ける
Oxytocin Improves “Mind-Reading” in Humans, Biol.Psychiatry, 2006


CD38およびオキシトシンとの関連で調べてみた。

自閉症とは先天的な発達障害の一種である[1]。
典型的な症状の一つとして、「人の心が読めない」ことが挙げられる。

相手の感情を理解すること、
相手の考えていることを推測すること、
などが著しく困難である[2]。

本論分は、「相手の感情を読む」ことにオキシトシンが関わっていることを示唆するものである。


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【BOOKS】『科学の未来』:テレパシーのできる未来、倫理が試される未来

科学の未来 科学の未来
フリーマン ダイソン (2006/01)
みすず書房



「テレパシーを実現するために必要な技術は何か?」

本書はこのようなSF的な議論を真剣に扱う。


テレパシーのために脳に装着する送受信道具は、
1)非侵襲的
2)高感度・高解像度
3)広域周波数
が要求される、としながら、

「このような機械は不可能だと宣言する物理法則はない」と続く。

「よって神経工学が発達した将来にはテレパシーも可能になるだろう」


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【ニュース】動物実験のいらない大気の毒性テスト

大気の汚染具合を調べるための新しい方法が開発されたそうです。
Soft-cell approach cuts animal tests 09 February 2007

従来は汚染具合を調べるために動物実験をしていたのですが、
新しい方法では動物を殺さなくていいことが画期的。

ヒトの細胞を特定の条件で大気に晒すことで毒性を調べるそうです。

これによって、
再現性が良くなる(科学的利点)
簡単で速い(肉体的利点)
安い(経済的利点)
動物を殺さなくていい(心理的利点)

の全てを達成できる、としています。



うちのラボでもラットやマウスなどの動物実験をしていますが、
実験従事者の中に意外に動物実験への抵抗が高い人が多いんですね。

最初の一匹で『もう勘弁して』ってなって、それ以降やってないのよ」

「胎児なら解剖できるけど、育っちゃうと無理

「え~、僕はむしろ胎児のほうが嫌だな」

「私はネコを飼ってるから、ネコは無理だけど、ネズミはラインぎりぎり」


皆、それぞれの感情があるようで。


ちょっと前にNatureでも記事が出ていましたが、
その記事にもあるように
「もし代わりの方法が使えるなら、それを歓迎しない科学者は一人もいない」
んでしょうね。

心地よい苦味、不快な甘味

Pfaffmann’s work on taste


味覚に関する興味深いグラフを発見[*]。

甘味、苦味、酸味、塩味
それぞれの味は、濃度によって快・不快が異なることを示したグラフ。

おもしろいと思った点が2つ。

1) 全ての味に対し、超低濃度では不快と感じている。

Methodを読んでいないのでなんとも言えないが、
低濃度では味を検知できておらず、他の要素によって
不快と感じている可能性はないのだろうか。

2) 苦味も、一定値では快感になる。

ビールがうまいのもそのせいか?
子供の時にはビールがまずかったことを考えると、
このグラフは年齢によっても変わるのかもしれない。


疑問点としては、このグラフでは甘味が不快に達していないことが挙げられる。
しかし、アメリカのケーキなどは、「甘すぎて不快」である。

著者のPfaffmannさんはたぶんアメリカで実験をしている。
食生活の異なる文化の人ではまたグラフが異なるかもしれない。


意外に味覚の分子機構はほとんど解明されていないらしく、
未だに甘味、苦味、酸味、塩味、うまみの定義さえできていない状況らしい。

(ある論文は、「この論文は味の定義を目指している」としながらも
論文中に「塩味をラットに投与すると・・・」と書かれていた。
その「塩味」は一体何?)



[*]Pfaffmannという人の論文だが、かなり古い論文らしく、PubMedで検索してもデータが出てこなかった。
このグラフそのものは『よくわかる生理学の基礎』Medsi より転写。

正直、「相対濃度」の意味がよくわからない。

オキシトシン発見以前の助産方法

オキシトシンは子宮収縮を促進し、出産を助けることで知られている。

このことから現代では、出産を早めたり出産を容易にするために合成オキシトシンが妊婦に投与されることがある。

(oxytocinの語源oxytoc-は「早い出産」の意味らしい)

ではオキシトシンが発見されるまではどのように子宮収縮を補助していたか?

助産婦は、双子が生まれたときには、
第一子に母親の乳を吸わせることで、第二子の出産を助けたそうだ[*]。

乳腺が刺激されると下垂体からオキシトシンが分泌されるため、
生理学的に正しい行為だったということになる。


つくづく、経験医学は侮れない。
この行為が有効であると感じるためには、
「第二子の出産中に、生まれたばかりの第一子に乳を吸わせる」という
かなり大胆なことを、相当の回数やらねばなるまい。


そもそも双子が生まれる確率は0.2%。

一日に一人助産していても、一生のうちに20組ほどの双子にしか出会えない。

過去の助産婦は、一体どのようなプロセスを経て
「初めの子に乳を吸わせると二人目の出産が楽になるわよ」という経験を取得したのか。


不思議でならない。





[*]トートラ『解剖学』丸善 2006より。
良い本だが、最近もっと良い本(トートラ『人体の構造と機能 第2版』2007)が出た。
『解剖学』を包括しており、かつ大容量。なのに値段が変わらない。

【論文】恋愛と母性愛で脳の活動域は違うか

恋愛と母性愛で神経活動はどう違うか
The neural correlates of maternal and romantic love
NeuroImage 21 2004


ResultよりMethodsのほうがおもしろかった。

27歳から49歳にわたる20人の母親を集め、
「自分の子供」と「恋愛感情を持つ人」の写真を見比べて
脳の活動を比較しよう、というもの。

・49歳で恋愛中と宣言できるのが素晴らしい。

・しかし、「恋愛感情を持つ人」であり「夫」と書かれていないのが気になる。

・20人のうち1人は「最近、夫とケンカして、その感情が子供の写真を見た時の感情にも影響している」と答えたため、母性愛のデータから棄却されている。

この人が持ってきた「恋愛中の人」は誰なんだろう。

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【論文】交渉で "Yes"と言わせる薬:オキシトシンで信頼度アップ

オキシトシンを投与された人は他人を信用するようになる
Oxytocin increases trust in humans

Nature 435, 2 Jun 2005

この論文が発表された当時、The Economistには
「交渉でYesと言わせる薬」
のようなタイトルで記事が載っていた覚えがあります。

それがオキシトシンだったとは。


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【論文】CD38:このタンパク質がないと社会行動ができない

社会的に振舞うには、オキシトシンを調節するCD38が重要
CD 38 is critical for social behavior by regulating oxytocin secretion
Nature 8 Feb 2007

社会行動をするためにはCD38というタンパク質が必須だそうです。

日本の研究なので一般の新聞にも小さく載っていました。

社会行動といってもここで実験されているのはマウスで、しかも子育て行動のみ。
それでもインパクトがあるのは、この実験はCD38とオキシトシンの関係を示したから。

オキシトシンとは、下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種です。

オキシトシンの機能は、小さな生理学の教科書には
「子宮収縮と乳汁射出を起こす」としか書いていません。
しかし近年の調査で、社会行動や感情と密に関わっていることが示され、注目を浴びています。


過去には様々な研究があります。

「オキシトシンを投与すると他人を信用するようになる」(→論文)(→関連ログ
「オキシトシンは母性愛にもロマンチック・ラブにも重要」(→論文)(→関連ログ
「オキシトシンを投与すると恐怖心が軽減する」(→論文
「オキシトシンは自閉症の症状を軽減した」(→論文

などなど、興味深いものばかり。
(自然科学の論文に romantic loveという言葉が使われているのを初めて見ました)

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【雑誌】TIME特集(3):意識の定義、遺伝子、友人の数

以下、ちょっとだけ「?」と思った箇所のメモ。

これらの点は専門家の間でも議論の的となるので、TIMEが一般紙だから犯した間違いではない。


まず、意識の定義。

「意識は言語とは全く関係がない。
赤ん坊、動物、言語障害の患者、みな無感覚なロボットなどではない。
私たちと同様に、人らしさを持ったりアクションをする」

“Consciousness surely does not depend on language.
Babies, many animals and patients robed of speech by brain damage are not insensate robots;
they have reactions like ours that indicate that someone’s home.”

意識の問題がすりかえられているように感じる。

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【雑誌】TIME特集(2):脳科学はタブー?

一般紙ならではの企画は、脳科学における大家たちへのインタビュー集があること。

マイケル・ガザニガ、ダニエル・デネット、アントニオ・ダマシオなどの有名人に、「意識とは何だと思いますか?」という質問をして、その回答を載せている。

その中で、バーナード・バースの答えが目を引いた。

「意識とは、最後のタブーである」

曰く、
「意識の問題はビクトリア朝時代のセックスの問題に似ている。
研究することは激しくタブーに触れるのだ。
いったん我々が性や意識の問題に取り組もうとすると、
多くの謎が去っていってしまう。
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【雑誌】TIMEの「脳」特集-意識とは何か-(1)

今週のTIMEの特集は『脳と意識』。
(TIME Feb 12, 2007)
普段は立ち読みするだけのTIMEだが、今回はつい買ってしまった。

普段から専門書を読んでいても、こういった一般紙の記事を読む意義はある。

一つは、専門外の人にわかりやすく説明する能力が身につくこと。
専門のことを専門外の人に説明するためには、何かに「たとえる」技術と「言葉を選ぶ」技術が必要になる。
この技術は専門書だけ読んでいたのでは身につかない。

もう一つは、実際に専門の勉強にもなることがあること。
こういった一般紙に載る情報は最新情報から約2年遅れるのだが、
情報の雪崩に埋もれている専門家は、少し専門から外れるだけで5~10年前の情報しか知らない、という事態が容易に起こる。
脳科学と一口に言ってもあまりにも広すぎて、常に全貌の最新情報を追うなど不可能だからだ。
2年前の情報でも、概観を掴むには十分だったりする。


期待を裏切らず、この記事も楽しめた。何がすごいって、

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【BOOKS】マススペクトロメトリー(MS)関連書籍

マススペクトロメトリー(MS)を勉強する上で読んだ本の感想・評価。

目次:
『プロテオミクス実験プロトコール』谷口寿章著 秀潤社2003
『できマス!プロテオミクス』小田吉哉著 中山書店 2004
『プロテオーム解析マニュアル』磯辺俊明 他著 羊土社 2004
『ポストゲノム マススペクトロメトリー』丹羽 利充編 科学同人 2003
『これならわかるマススペクトロメトリー』志田保夫 他著 化学同人 2001
『ノーベル賞の質量分析法で病気を診る』清水章著 岩波書店 2003
『生涯最高の失敗』田中耕一著 朝日新聞社 2003

感想・評価↓

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【BOOKS】『解剖男』:遺体は語る

解剖男 解剖男
遠藤 秀紀 (2006/02)
講談社

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遠藤秀紀著 講談社現代新書 1828 2006年

ちょうど1年前に出版された新しい本だが、今では置いている書店はあまりない。

がしかし、アマゾンでの評価がとても良かったので買ってみた。

評判に違わず、おもしろい。
解剖学を勉強すればするほど「構造は機能を表す」ということを感じるが、実際に本書ではこのフレーズが何度も出てくる。

本書で扱われているのはほとんど動物。
これまでヒトの解剖学しか勉強していなかったので新鮮だった。

ヒトの解剖学を学ぶだけでももちろん勉強になる。
しかし他の動物の骨格・臓器と比較すると、ヒトの構造の特徴が浮き彫りになる。
外国語を勉強すると日本語の特性がわかるのと同じようなものだろう。

鎖骨一つとっても、一部のサルはヒトよりも鎖骨が発達しており、
逆にキリンなどは鎖骨がほとんど消失している。
このことから、解剖学者は様々なことがわかる。

著者に言わせれば、頭蓋骨が最も多くの情報を引き出せるそうだ。
「未知の頭蓋骨でも、本書の3倍の情報量を引き出して見せよう」と胸を張る。
職人技ともいえる観察眼には恐れ入る。


がしかし・・・

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【BOOKS】『脳とコトバのはなし』:書けるけど読めない障害?

臨床医が語る脳とコトバのはなし 臨床医が語る脳とコトバのはなし
岩田 誠 (2005/11)
日本評論社

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「全失語、つまり喋れない、読み書きもできない、言語を理解もできない患者さんがいました。しかしその患者さんは知的能力は持っていたのです。」


冒頭はこんなエピソードから始まる。
「言語を処理できないのに知的能力?意味がわからない」
と思っていると、その数行先を読んで驚いた。

「この患者さんは将棋が好きだったと聞いていたので、将棋の強い研修医に将棋の相手をしてもらったんです。

駒を指差して「これは何ですか?」と尋ねても答えられない。「角はどれですか?」と尋ねても指差せない。

ところが、この患者さんは駒を盤上で正しく動かすことは全く支障なくできるんです。桂馬も、問題なく

その試合では研修生が勝ってしまいましたが、悔しそうに見えました。」


知能とは何だろう、言語とは何だろう、と考える上で貴重な事例が数多く出てくる。


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【論文】睡眠障害に対する新薬への一歩

ナルコレプシーを治すための新薬ができるかもしれません。
(Brisbare-Roch et al, Nature Medicine, 28 Jan 2007)

ナルコレプシーは二重の意味で恐ろしい病気です[1]。

第一に、突発的に眠ってしまうということ自体が、交通事故などを引き起こす確率を大きくします。

第二に、社会的に認められないという精神的な負担がかかります。
眠ってしまうという症状から、「怠けている」「だらしがない」という評価を受けてしまうことになります[2]。


当初、ナルコレプシー患者の脳からは異常が見つからなかったため、解明が難航しました。
結果的に、オレキシンという神経伝達物質が関与していることが判明します。

この病気が、怠けているのではなくて遺伝子レベルの問題であることが突き止められたのが1999年。

オレキシン受容体の遺伝子をノックアウトしたマウスでナルコレプシーが出ました[3]。

翌年、ヒトのナルコレプシー患者も、オレキシンを作る神経細胞が消滅していることが判明します[4]。

2004年には、マウスに人為的にオレキシン受容体の遺伝子を導入したりオレキシンを脳内に直接投与したりするとナルコレプシーが改善することも判明しています[5]。

この論文は、経口的にACT-078573という薬を投与することによって、ラット・イヌ・ヒト全てのナルコレプシーが改善することを示しています。


ナルコレプシーは軽症の場合、患者本人も病気であることに気づかず、「私は怠け者なんだ、何でこんなに眠たくなるんだろう」と思っている場合があります。

この薬の開発が、より多くの「潜在的患者」の生活を改善できるといいのですが。


注釈
[1]ナルコレプシー narcolepsy
最も広く研究されている睡眠過剰症。
2000人に1人の割合で起こり、日中睡眠発作 daytime sleep attack と カタプレキシー cataplexy という2つの症状を引き起こす。

日中睡眠発作とは日中に強い眠気に襲われる症状。
10分程度の突発的な睡眠が起こる。
その突発性は、会話の最中・食事中・性交中・スキューバーダイビング中など、場所を選ばない。

カタプレキシーは、怒りや悲しみなどの情動をきっかけとして筋肉が弛緩してしまう症状(muscle tone)。重症の場合、その場に倒れこんでしまう。今回のACT-078573はこのカタプレキシーも抑えた。

[2]ナルコレプシーについてはなるこ会のHPが参考になる。

[3]Chemielli et al, Narcolepsy in orexin knockout mice, Cell, 98, 437-451, 1999

[4]Peyon et al, A mutation in a case of early onset narcolepsy and a generalized absence of hypocretin peptides in human narcoleptic brains. Nature Med, 6, 991-7, 2000

[5]Mieda et al, Orexin peptides prevent cataplexy and improve wakefulness in an orexin neuron-ablated model of narcolepsy in mice, PNAS, 103, 4649-54, 2004

【論文】日光を浴びると風邪を引きにくい?

日光浴をすると免疫力が向上する、という論文が発表されました。
(Sigmundsdottir H et al, Nature Immunology, 28 Jan 2007)


日光が皮膚に当たるとビタミンDが作られることは有名です。

本論分は、次のような機構により日光が免疫力を向上させるとしています。

1) 樹上細胞とT細胞が、日光によって作られたビタミンDを活性化する
2) 活性化されたビタミンDがT細胞を皮膚に引き付ける
3) T細胞が、皮膚でおこるダメージや病原体をブロックする

よくできていると思います。
しかしこれは体全体の免疫力が向上するというよりは皮膚の局所的なダメージを最小にするための機構と解釈した方が良いでしょう。

「免疫力をつけるために日光浴をしましょう」という結論には至りません。

しかしかつて、「日光浴をするとビタミンDができるから、できるだけ日光を浴びましょう」といわれた時代もあります。

真っ黒に焼けた子供が健康といわれた時代です。

「あるある大辞典」ではありませんが(あれはそもそも実験になっていませんでしたが)局所的な現象からむやみに大局的な結論に持っていかないように注意したいものです。

もしかしたら、「日光浴をすると皮膚がんができるからできるだけ日光に当たらないようにしましょう」という現在のトレンドも将来否定されるかもしれませんし。

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