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マウスにヒトの色素を埋め込む実験

ヒトの色素をマウスに発現させることに成功
Emergence of Novel Color Vision in Mice Engineered to Express a Human Cone Photopigment
Gerald et al, Science 2007


ヒトの長波長感受性錐体色素をマウスのX染色体にノックインして、
マウスの長波長に対する感受性を上げることに成功したそうです。

マウスはもともと2色しか識別できないので、
3色見えるようになったこのノックインマウスはきっと
ヒトと同じようにカラフルな世界を見ている、のでしょう。
たぶん。

以下、アブストラクトを読んでの雑感。
(中味はまじめに読んでません)

・ベトナム戦争時に、アメリカが、
兵士に赤外線が見えるようにする実験をしていたのを思い出しました。

赤外線感知装置を使わなくても、肉眼で赤外線を見れるようにしよう、というプロジェクトだったらしく。
さすが、アメリカは考えることが違います。

その時に行われたのは確か、レチナールか何かを注射するだけのもので、
見事に失敗したらしいのですが。

今回のように遺伝子レベルでノックインすれば
赤外線を見ることもできるかもしれません。
というか、できるでしょう。

次の大戦の時にはデザインド・ソルジャーが出てくるかも?


【“マウスにヒトの色素を埋め込む実験”の続きを読む】
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卒業/大学で何をすべきだったか

昨日、大学を卒業しました。
来週からやっと院生になります。

名実ともに研究生。
生活はこれまでと変わりませんが。


良い機会なので、部屋の中の本の整理をしていました。

毎日1冊以上のペースで本が増えていくので
定期的に処分するか実家に送らないと生活のための空間が侵食されます。

整理する中で、「大学で何をすべきか」というテーマの本が大量に出てきました。
高校~大学1年くらいの時に買い込んだものです。



各人が、それぞれの経験を基に好き放題アドバイスしています。
マーカーを引いてある箇所で、当時の自分が何を思ったのか推測できるのも楽しいものです。

「自分探しの前に他人探しをしろ」

「学問のおもしろさがわかればそれだけで十分」

「何も学ぶものなどない」

「英語とコンピュータ、この二つをマスターすることは必須」

「読書は大学生の仕事。特に古典を読め」

「『するべき』何か、ではなくて『したい』何かを見つけよ」

「”能動的に遊ぶ”能力のない人にとって、”レジャーランド”は地獄ですよ」


時代を追うごとにアドバイスがだんだんゆるくなっていくのもおもしろい。

1980年ごろの本には「目標に向かって努力せよ」系が多いのに対し
1990年代後半では「目標がある人なんて例外。寄り道しながら進め」系のアドバイスが増えてきます。

バブル崩壊前後、と見るべきか。


私だったら、後輩には

「自分は大学生活でこれをやった」と言える何かを作るといいですよ、

と言おうと思っています。
私自身、曲がりなりにも「これをやった」と言えることがあり、
それによって大学生活が非常に楽しく、充実していました。

加えて、「これをやった」と言えても
「これをマスターした」とまではとても言えないレベルなので、
「もっとやればよかった」という思いが残るのも確かです。


私は、非常に多くの人が「英語を勉強しておくべき」と
書いていたので、「これをやった」と言えるものとして
英語でのディベート・ディスカッション・スピーチを選びました。
しかし、今思い返せばその「何か」の選び方からして
かなり受動的だったな、という反省もあります。

研究テーマの決定権は各人あるという研究室に飛び込んで、
今後どういう研究をしていくかを自分で考えていくうち、
「能動的に自分の将来のレールを決める」ことの難しさと楽しさを
やっと最近気づき始めた段階にいます。


研究室のボスには
「大学院でも研究を楽しんでくださいね」
と言われました。

「頑張ってください」でなく「楽しんでください」と言われる
この恵まれた環境を可能な限り生かしたいと思います。

大学院も楽しく、充実したものになるように。
今度は「論文」という形で「私はこれをやった」と言えるように

【論文】CASPS2遺伝子と自閉症の関係

CADPS2遺伝子が自閉症の原因の一つかもしれない
Sakata et al, Autistic-like phenotypes in Cadps2-knockout mice and aberrant CADPS2 splicing in autistic patients
JCI March 22, 2007


理研の研究ということもあってmixiニュースでも取り上げられていました。
ニュースとリンクした日記の中には
「やっと原因が解明できたんだね」
とコメントしている人が多く見受けられました。

この論文は全くそのような位置づけではないのですが、
分子生物学や神経科学を学んでいない人としては当然の反応なのかもしれません。
神経科学者も、自分の分野と全く異なる科学分野のことなら勘違いしてしまうかもしれません。

たとえば「ガンマ線バーストのメカニズムを解明」という
ヘッドラインがあったとしても、それが
「仮説の一つ」なのか
「理論は正しいが全貌の解明には至っていない」のか
「最後の一ピースが埋まって、ほぼ完全に説明がつくようになった」のか
私には判断がつきません。


ともあれ、この論文の要約は以下の通り。
【“【論文】CASPS2遺伝子と自閉症の関係”の続きを読む】

【論文】統合失調症患者はサイトカイン受容体に異常あり

統合失調症のSNP解析の論文を読もうとした。
(T Lencz et al, Converging evidence for a pseudoautosomal cytokine receptor gene locus in schizophrenia, nature molecular psychiatry, 2007)

が、SNPの全ゲノム解析手法自体がよくわかっていないので挫折。
(こんなんで分子生物学系を名乗っていいのか)
Q値の計算方法とかもよくわからないし。
(これでも理系なのかorz)

とりあえず、コロニー刺激因子受容体2α(CSF2RA)インターロイキン受容体3α(IL3RA)が統合失調症と関係あるらしい、くらいのことはわかった。

どちらかというと、引用してある過去の研究結果の方がおもしろかったかな。
以下、興味深いデータを箇条書き。

・世界中で1%の人が統合失調症である。(6000万人?ホント?)

・身体障害者の3%が統合失調症である。

・15~44歳の間では、統合失調症は身体障害の原因の第三位に位置する。

・統合失調症は死亡率を通常より50%上昇させ、結果的として平均寿命が10年低い。

・統合失調症は80%遺伝する。

冬に生まれた人と、都市部に生まれた人は統合失調症のリスクが高まる。
(そういえば『天才は冬に生まれる』っていう本があったなぁ。全く統計的調査をしてなかったけど)

・統合失調症の家族は、精神的にも神経学的にも、催奇性物質に対する反応性が高い。
(→今回の受容体と関係しているのかも、としている)

・顆粒マクロファージCSF(GM-CSF)とIL-3の異常はリンパ腫や白血病に関係していることがわかっている。
おもしろいのは、統合失調症患者の親族はリンパ腫や白血病の病気にかかりにくいこと。

・同様に、GM-CSFはリューマチに関係していて、統合失調症患者はリューマチになりにくいこともわかっている。

・さらに、GM-CSFは顆粒球とマクロファージの分化に関係しているが、中枢神経系における神経再生においてもGM-CSFが関与しているとする論文も出始めた。

GM-CSFは血液脳関門BBBにも関係しているかも。
(おお!これは読みたい。専門なんで。Verna et al, Brain Behav Immun 2006; 20, 449)


Discussion部分が、「よくわからないけど、おもしろそうでしょ?」と言いたげな雰囲気満点で、読ませました。

どこかの本に、「Discussionはほとんどウソだけど、ここのデキで論文の質が大幅に変わる」と書いてありましたけど、納得できます。


あとどうでもいいけど、一点だけ。

研究対象の説明のところに、
「全員、自称コーカシアンで、ヒスパニックではない」という注意書きがあった。
「ヒスパニックではない」とわざわざ記してある真意がよくわからない。

著者らは、「ヒスパニックの白人」を想定する読者を想定したのか??


植物状態の人の意識、追記

今週のnatureに、「植物状態の人の意識」の話が軽く載っていました。
(nature vol446, p355)

一つ前のエントリーに訂正を加える必要があります。
「植物状態の人にテニスのゲームをやらせた」のではなく
「テニスをするところを想像してもらった」だけのようで。
(Owen et al, Science 313, 1402;2006)
(あ、一つ前のエントリーのリンクと同じだ。勘違いしてました。)

そのテストは「テニスをしているところを想像してください」
もしくは「家の周りを歩いているところを想像してください」
と尋ねてみて、反応する脳部位が異なることを示したようです。
(正常な人に同じ質問をしてポジコンをとっています)

つまり、「質問が理解できている=意識がある」というのが
著者らの主張。

【“植物状態の人の意識、追記”の続きを読む】

安楽死の意思をコンピュータで決定する

今週の The Economistより。

テーマは「安楽死の意思はコンピューターに調べさせるべきか」

(The Economistは経済紙でありながら、政治・経済のみならず脳科学からダークマターに至るまで幅広い科学の話題も扱う素晴らしい雑誌です)

副題を見た瞬間、「おお、確かに脳を調べれば死にたい意思とかわかるかも!」
なんて思ってしまいました。


【“安楽死の意思をコンピュータで決定する”の続きを読む】

Googleは科学を「ロマンティックでない」ものにするのか

4月号のForesightに、梅田望夫さんによる
茂木健一郎さんのブログ紹介が掲載されていました。

引用されていたのは、茂木さんのブログ「クオリア日記」の
2007年1月23日エントリー

東大での講義がiPodで聴けるようになっており、望月さんはこれを聞いたらしい。

東大講義の内容は、
「Googleは科学者の『ロマンティックな研究態度』にシリアスな問題提起をしている」というもの。

研究者は、コンピューターのような人工知能の先には
人間と同様な知能は存在しないと考え、10年以上も前に見切りをつけた。
しかしGoogleは、人間の脳と全く異なる原理で情報処理の究極に迫っている。

生態とは異なる方法で飛行機を発明した人類は、
同様に今、脳とは異なる方法で「知性の研究」に迫っている。
“Google的なもの”は、「自然の原理を美しく理論的に解明したい」という科学者のロマンに挑戦している。

と、こんな内容。


【“Googleは科学を「ロマンティックでない」ものにするのか”の続きを読む】

膜電位シンポジウム(1)

現在、膜電位シンポジウムに来ています。
学会もどきです。

私は電気生理や有機化学の基本をしっかり学んでいないので
半分くらいは意味不明でしたが、それでも興味深い話でした。

昨日は「電位依存性KチャネルのS4はどのように動くか」
というテーマだけで5人ほどが講演し、丸一日を費やしました。

上下運動?
平行運動?
ねじれ運動?
回転運動?
それともS4は動かずに周囲の環境が変化しているのか?

それらを検証するための実験方法には感心させられます。

がしかし、冷静に考えれば、かなりテーマが狭い
かなりマニアック。

そしてさらに冷静になると、S4の動きがなぜ重要なのか
イマイチ自分自身でよくわかっていないことに気づきます。

動き方によってopen/closedの構造が異なるから
機能を検証する上で重要なことはわかりつつ。

あと、動き方によって開閉に必要なエネルギーが異なるので
電位依存性Kチャネルに関わるすべての議論に影響を及ぼすという感覚はありつつ。

しかしその重要性を具体化できない。
素人に対して「ストーリー」を語れる状態にない。


やはり基本が抜けてるのがいけないんだろうな。
そろそろ院生なのに基本とか言ってるのが恥ずかしいのですが。


各演者の論文を簡単に紹介しようと思ったものの
昨晩ノートパソコンが突如壊れて電源さえつかない状態なので
一旦断念しましたorz

なぜロボット化しないのだろう?タンパク質の結晶化

現在、世界中で多くの研究者が血眼になって
タンパク質の結晶化に挑んでいる。

特に膜タンパク質
結晶化が難しい上に、重要なタンパク質だから。


結晶化のためには、膨大な条件を検討せねばならない。
界面活性剤、温度、濃度、付加タンパク質・・・。

そもそも結晶化が可能なのかどうかさえわからないという、
暗黒のトンネルを走っている人がたくさんいる。
冷静になって考えると、とても一人でやるべき業務ではないように思う。

ゲノム解析は、力ずくでいつか達成できるとわかっていたのに対し、
プロテオームは完全解読が可能なのかさえわからないという点で難易度の次元が違う。


あまりスマートではないことを認めつつ、
ここは結晶化の条件検討も自動化してしまった方が良いのではないだろうか?

『タンパク質の結晶化』という本に結晶化の条件を探すロボット
映像が付録として入っていた。

この映像は圧巻であった。
ものすごい量の条件を一度に検討できる。
もちろんコンタミもない。


ゲノム解析の時には、
「人間がやれるのになぜ機械にやらせるんだ」という反対論があったらしい。
(→関連ログ)
今となっては滑稽な反論である。

結晶化についてはそのような反対論は聞かないが、
しかしなぜ趨勢が結晶化を自動化する方向に動いていないのか、
未だに謎ではある。
ゲノム解析の時と同様な滑稽な状況なのだろうか?
それともタンパク質の場合には妥当な理由があるのだろうか?

「学術的にはおもしろそうだが創薬のようにモトが取れるかどうかはわからない」という場合、
巨大なコストのかかる結晶化ロボットは使えないのが一因かもしれない。

Rhythms of the Brain 読み始め

アマゾンで注文したRhythms of the Brainがやっと届いた。


とりあえず裏表紙の「推薦文」を読んでテンションを上げてみる。

「神経科学の専門家でさえ、著者の博学を示すこの大著に感動するだろう」
Steven Strogatz

「Buzsaki 博士は脳のミステリーについて独創的な洞察を与えてくれる」
Terrence Sejonwski

「本書は珠玉の名作である。本文は論理的で無駄がなく、かつ注釈はそれだけで一冊の本ができるほど膨大である。全ての神経科学者の棚にあるべき本だろう」
Mircera Steriade

「脳のオシレーションに興味がある人、および認知と脳の関係を知りたい人は必読」
Roger D. Traub

「Buzsaki博士は、オシレーションのない脳は心のない脳と同じだと論ずる」
Marcus E.


ヲヲ。テンション上がってきた。

(他にもShuzoさんのエントリー
金井さんのエントリーに書評あり)

目次を見ると、「構造が機能を決める」など、
うちのボスが喜びそうなフレーズもたくさん。
(そして私も興味津々)

参考文献に2006年の論文も入っているのには驚いた。
Fresh referenceに支えられたFresh insightのようだ。

英文は極めて平易。
意味が取れない文は日本語でもわからないはず。


早く読みきってしまいたいけれども、今は逸る気持ちを抑えて
明日からの学会もどきの予習をしなければ。

最強の翻訳機へ:クラウドコンピュータと脳科学

ビジネス系の本を読んでいると、英語ビジネスというのは
極めて異質な分野ということがわかる。

「ニーズorウォンツ」が大量にあるのに「供給」が少ない。

3秒に一人が、Googleで「翻訳」と打ち込んでいる。
この人たちのほとんどは翻訳サービスを利用しようとして検索している。

KEI(需要/供給比を示す指標の一つ)は実に20,000。
1,000あればビジネスとして成立すると言われるのに、それを一桁上回る。

数多の英会話スクールが生き残れることに納得。


で、僕は何を考えているかというと、
別に英語でビジネスを起こそうと考えているわけではなく、
この「供給不足」を何とかしたいと思っているわけです。


世界の全てが英語になって欲しくない。
言語の多様性は生き残って欲しい。

でも英語ができないと世界レベルでの情報格差は埋まらない。

英語教育は、成功してもおそらく国内の情報格差を広げるだけ。
万が一”完全に”成功すると、ローカル言語の駆逐を招く。
(だって要らないもん)

というわけで、
やっぱり翻訳機が欲しい。

この目の前にある大量の論文。大量の洋書。

日本語で読めたらどんなに楽か。
こんなに強いニーズがあるのに、「秒単位で正確な翻訳を提供してくれる」翻訳者は存在しない


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大学院拡充は失業対策のトリックに利用されたのか

研究の息抜きに大前研一の『質問する力』を読んでいた。
(息抜きの時間が長すぎるのは反省)

国家の経営から個人の経営まで、様々な側面における
「旧来の常識を前にして思考を停止させること」の怖さを教えてくれる。
大前さん自身の思考回路も披露してくれていて、世の中の新しい見方がわかる。

思いがけず、大学院についての記述があり、
数行にもかかわらずかなりインパクトがあった。

「不景気の日本に必要なのは、新しいビジネスの育成です。

この点、役人の発想というのは実に姑息です。
たとえば失業が増えてくるとタクシー免許を乱発する。
タクシーの運転手が増えれば数字上の失業者が増えるからです。

同じように、大学院の充実ということを文部科学省が言い出しました。

聞いていると格好がよいのですが、なぜ急に言い出したのかというと、
大学院に行ったら学生が雇用マーケットに出てくるのが二年間遅れる。
それで分母が小さくなるから見かけ上の失業率が下がる
というのです。」


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【論文】グリアによるグルタミン酸放出がシナプスを強化する

久しぶりの論文紹介。
やはりまだ背景知識がなさ過ぎて読むのに時間がかかります。
一日に何本も論文を紹介しているブロガーの方々には感服します。

『アストロサイトからのグルタミン酸放出がシナプス結合を強化する』
Glutamate exocytosis from asrocytes controles synaptic strength
Jourdain et al, nature neuroscience, 8 Mar 2007


私の関わる実験がアストロサイトに直接関係するので
この分野には関心が高い。

【この論文の意義】
従来、神経終末から出るグルタミン酸の中で、後シナプスに作用しないものは
「横に漏れているだけの無駄なグルタミン酸」と思われていた。

本実験は、この「横漏れしている」グルタミン酸は無駄ではなく、
アストロサイトを介してシナプス結合を強化している
可能性を示している。


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ダリとエッシャー:科学好きの画家たち

ダリ展に行ってきました。
大阪、サントリーミュージアムで行われています。

ダリって誰?
という人も、「記憶の固執」という絵はどこかで見たことがあると思われます。
柔らかい時計が木に引っかかっていたりする、あれです。
(本当は絵をブログ上にアップしたかったのですが、
著作権の関係で問題がありそうなのでリンクにします)

ダリは、科学に強い興味を持っていた珍しい画家の一人でもあります。

1930年代に描かれたこの「記憶の固執」は相対性理論の影響を受けています。
(時計が歪んでいるのは時間が歪むイメージ)

1950年代以降は、原子力物理学にハマっています。
原爆投下が強いインパクトを与えたようです。

「記憶の固執の崩壊」という絵では、「記憶の固執」をベースにしながら
モノが核分裂によって散り散りになってしまうイメージが描かれています。

1970年代以降は、今度は生物学にハマっています。
DNAの発見が彼にインパクトを与えたようです。
二重らせんのモチーフが何度も登場します。

今回の展示ではDNAをモチーフにした絵はあまり見られませんでしたが、
東京・上野の森美術館でのダリ展ではもっとわかりやすくDNAをモチーフにした作品を見ることができました。

DNAが左右対称ではなく、ちゃんとメジャー・グルーブとマイナー・グルーブがありました[1]。
(あ、左巻きか右巻きかを確かめるのを忘れた・・・)



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【BOOKS】『すべては脳からはじまる』

すべては脳からはじまる すべては脳からはじまる
茂木 健一郎 (2006/12)
中央公論新社

この商品の詳細を見る


「このところの日本の『脳ブーム』はやや表層的で、上滑りの感がある」

本書の中の一節である。
私も全く同感である。

しかし、本書もその「上滑り」の脳ブームに便乗した本にしか思えないのもまた事実。

茂木健一郎さんの本は、エッセイとして読む分にはおもしろいが
「脳」という単語を使いすぎのように感じる。

この人の使う「脳」は単に「人間」と置き換えられるものがほとんどで、
それを「脳」と表現することの妥当性が薄いように思われる。

「他人の行動を変えようと思ったら、『ほめる』のが一番である。認められることは、社会的動物である人間の脳にとって最大の報酬の一つだからである」

この文にある「脳」は削り取っても何の問題もない。
「社会的動物である人間にとって最大の報酬」で通じる。

「ほめる」という、神経学から見ると定義不明な言葉と、
「脳」という言葉を一緒に使うこと自体に違和感がある。
(これは茂木さんだけではなく心理学一般への違和感ではあるが)

神経科学的にそこまではっきりしたことはわかってないはずなのに、
というレベルのことまで完全に言い切っている。
「あるある」一歩手前・・・?

エッセイにまじめに突っ込むのが野暮なのかもしれないが。


以下、脳科学とは全く関係のない点についての感想。
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本当に存在した、「自分を信頼してもらう薬」

以前、natureの「オキシトシンを投与されると、他人を信用するようになる」
という論文を紹介しました。


本当に交渉の場で使ったら顰蹙モノですね、
なんてコメントを冗談半分でしていました。

が。

さすが人類。

既に商品化されていました。

リキッド・トラスト。
http://www.verolabs.com/

香水として使用するそうで。

このブログが、Googleから「オキシトシン 購入」という
キーワードで何十回も検索されているのはこのせいだったんですね。

「世界で最もおもしろいジョークは『事実』だ」とはよく言ったものです。

宣伝文句が笑えます。↓

「営業の人へ。
これがあれば世界はあなたのもの。

【“本当に存在した、「自分を信頼してもらう薬」”の続きを読む】

インテリジェント・デザイン:科学の科学性は何が保証するのか

先月(2/13)、アメリカのカンザス州で、
「公立学校ではインテリジェント・デザイン説を教えなければならない」
という法律が撤回されました。


nature 445, p807に軽く載っています。
「カンザスはやっと科学の全うな道に戻ることができた」
というコメントがなされています。

アメリカでは、進化論を支持する人の割合が、
20年前の45%から40%に減少
しています。
このアメリカにおいて、久々に科学にとって明るいニュースと言えそうです。

(残りの人は、30%が「支持はされているが確立はされていない理論」
残りは「完璧に証明されている理論」と思っているらしいです。
私は前者の姿勢が妥当だと思います。)

今回の決定は、インテリジェント・デザインを支持する教育委員会のメンバーが選挙で落選した結果だとか。
「選挙」で科学的真実が決定していいのかという突っ込みもしたくなりますが。

(映画『マンダ・レイ』に描かれているような、現在の時刻を
選挙で決定しようとする
ような、発展途上の人々滑稽さを笑えません)

<補足>インテリジェント・デザイン説とはこんな説。
「この世には科学で説明できないことがたくさんある。
たとえば進化論なんて、『原始生物からだんだん人間が進化してきた』
なんて言うけれども、化石には『だんだん進化した』形跡がないじゃないか。

ミッシングリンクはどこに行った?
私たちは進化論は否定しない。
しかし、進化の過程には、生命を人間のような知的な生物に導いた、
知的な “何か”(インテリジェント・デザイナー)がいるはずである。」

つまり、「この世は神が創った」とする福音派(エヴァンゲリスト)
による創造論(creationism)の焼き直し。

ただし創造論と異なり、「神」という言葉を使わないので、
非キリスト教、無宗教の人もターゲットにしており、
かつ政教分離の法も潜り抜ける可能性を秘めています。
<補足終わり>

カンザスでは2005年に、公共教育では次のように教える決定が下されていました。
「進化論は問題の多い論であり、公平性を期すために
インテリジェントデザインという考え方も教えるべき」




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『脳トレ』ブームと川島隆太さん

Nature Neuroscience に、『脳トレ』ブームに対する警鐘が掲載されていました。
(Exercising to keep aging at bay)
(参考:Shuzoさんのエントリー

英語で『脳トレ』は “Brain Games” “Brain Gyms”
などと称されている模様。

内容は、「脳トレにどれだけ効果があるかはわかっていない」という至極普通の論調。

「まず動物実験。
刺激の多い(enriched)環境では脳の老化が遅くなると言われる。
しかし人類はゲームを手に入れる前から、実験動物より
刺激の多い環境にいた
わけで、これ以上の刺激が
どれだけの効果をもたらすのかはわからない。」

言い回しがおもしろい。
確かに実験動物の「enriched」な環境は、人間の環境よりもずっと狭い。

たとえば、「フクロウは、幼少期に刺激の多い環境で育つと、
視覚の臨界期が消えたかのように振舞う」
という論文があります。
(Brainard, et al,Sensitive Periods for Visual Calibration of the Auditory Space Map in the Barn Owl Optic Tectum ,J. Neurosci, 18, 3929-, 1998)

この実験のnon-enrichedとは鳥かごで育てたフクロウ、
enrichedとは鳥小屋で育てたフクロウを意味します。

実験系のenrichmentなんてせいぜい鳥小屋。
確かに、人間へどれだけ応用できるかわかりません。

natureの記事はヒトの脳に関しては次のようなコメントをしています。

「ヒトの場合でも、認知レベルは多岐に渡るため、
クロスワードパズルなどで老人が独立した生活を送れるようになるかはわからない」

「今のところ、財布が寂しくなること以外に害はなさそうだが、
おばあちゃんには『脳トレ』よりも散歩や社会活動を勧めたほうがいいだろう」


欧米でも脳トレは相当のブームらしく、
New York Times, Washington Post, Herald Tribuneの主要三紙に
脳トレの記事がありました↓


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博士進学の理由【BOOKS】『科学者になる方法』

科学者になる方法―第一線の研究者が語る 科学者になる方法―第一線の研究者が語る
科学技術振興機構プレスルーム (2005/01)
東京書籍

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「科学者になる方法」系の本は、著者一人のみの視点で書かれていて
とにかく偏りがちであるが、本書は36人の研究者のインタビューがあり、
全体としてかなりの中立性が保たれている。
全員「研究楽しい!」という点で一致。

実に半分の18人が生命科学系なので、生命科学を目指す者としては動機付けになる。

ただ、「彼らがどのような思考経路を経て博士課程進学を決めたのか」
ということを知ろうとして読むと、ほとんど役に立たない。

ほとんどの人が「研究がおもしろそうだったから」程度のことしか書いていない。
もしくは「最初は研究をやろうと思っていなかった」という人もかなりいる。

本書は「研究生活の厳しい側面」については書かれていても
「研究者になる上での厳しい側面」については底が浅い。
その意味で本書のタイトルはミスリードである。

近藤寿人さんは例外的に「将来が不安だった」と書いており、
「もしものために教職のための単位をとっていた」と書いている。
(ただし教師の門も狭い)

好感が持てるのは高濱洋介さん。現状をかなり理解している。

「ポスドクの待遇は改善されてきましたが、助手のポストは減っています。
つまり受け皿がないんです。
最近は大学のシステムも変則的になっており、キャリアパスが見えにくい。

こういった雇用不安定やキャリアパスの不安定さが、研究者を目指す若い芽を摘んでいないか心配です。
これらの問題を解決する国家的政策が必要だと思います。」

ここまで理解している人から、
「自分の心の声に従って選んだ道なら、きっと後悔することはないはず」
と言われると若干安心する。

(しかしブログ上で「後悔」している方々は一応「心の声」を聞いたはずで・・・)

キャリアパス的にかなり親近感が持てるのは北野宏明さん。

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博士に進学すべきか?:博士後に控える問題をあぶり出すブログ集

博士課程に進学すべきかどうか、迷っています。

昨年までは、ほぼ100%進学する予定でした。
それが、『失敗しない大学院進学ガイド』という衝撃的な本を読んで
95%くらいにまで落ちました。

最近は、多くの研究者がブログを書いていることを知り、
「博士・ポスドク問題」の生の声を読むようになりました。
おかげで博士進学のモチベーションが90%くらいまで落ちてます。


実態を知るとかなり気が滅入ります、ほんと。
上記の本に書いてあるよりもさらに博士は先行き不透明な感触を受けます。

このブログを見てくれている友人の中にも
博士進学を迷っている人が何人かいるはず。

皆優秀なのですが、どうも「優秀ならば何とかなる」状況ではない印象を受けるので、
知れることは事前に知っておいていいと思います。
私自身も、就職するならあと半年で決断しなければいけないので
あまり時間が残されていないのですが。
(しかしあと半年では研究と言える研究をやった気がしません。
悩ましい問題です。)

以下、参考になるブログエントリー集です。
リンクと、リンク先の文章中で印象的な一節を引用しています。

全て個人の一視点であり、統計的に偏ってはいますが、
我々は普段、教授や参考書などで「研究者として成功した」声しか聞かないので、
むしろ感覚的な統計を是正する意味でネガティブな声を拾うのも妥当かと思います。
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