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山中教授:「日本の研究者はもっとコミュニケーションを」

今週のPRESIDENTに、iPS細胞の作成に成功した山中伸弥教授のコラムが載っていました。

ビジネスマン用の世俗的な雑誌に科学者の意見が載っていることに少し嬉しくなりました。


山中先生の主張は主に二つ。
1)「日本はES細胞の使用に対する規制を緩和すべきである」

「ブッシュ大統領はES細胞の使用に反対していますが、連邦予算をつけないというだけで、研究自体を禁止してはいません。」
「日本でヒトES細胞を実験で使うには、審査などで1年以上かかります。」

同じ京大の中辻先生もいつも指摘していますが、日本のES細胞の研究には規制が多すぎで、海外との著しいハンデがあるとされています。
頭脳流出を招いたり、頭脳流入を阻んだり、もしくはせっかく研究でプライオリティをとってもすぐに抜かれたりという問題が起こります。

山中教授はiPS細胞の知財を日本で確保するために苦吟されています(BTJジャーナル9月号参照)。
国益の防衛をなぜに末端の研究者がやらねばならんのか。
愛国教育とかの精神論の前に、事務レベルで国益損害を防ぐことを考えて欲しいものです。


2) 「日本は研究者どうしがコミュニケーションを深められる構造を作るべきである」

「アメリカの進んだ研究所になると、複数の研究チームが設備を共有し、浮いたお金で人を雇う。使わない機械よりも、新しいアイデアを持った人間の方が何倍も価値があることを知っているのです」

「海外では、壁のない大部屋で複数のチームが隣り合って研究をしている光景をよく目にします。吹き抜けにして、垂直にもコミュニケーションができるようにしているところさえあります。建物の構造からして日本と考え方が違います」

やはりこれこそがアメリカで研究をする真髄と思わせます。
正直、アメリカの方が実験機器がスゴかったという話はほとんど聞きません(逆はよく聞きます)。
しかし、アメリカにいると「研究者間の交流・議論」が日本と桁違いに深まるという点で渡米経験者の意見は一致しています。

日本では研究室内の議論さえ活発ではありませんし。

今日も、研究室間交流の重要性を痛感させる出来事がありました。
他のラボの友人と喋っていたら、その友人は私が欲しかったDrosophilaのcircadian rhythmに関する情報を持っていて、調べる手間が大幅に減りました。
というか、全く予想もしない情報だったので、一人で調べていたらたどり着かなかった可能性の大きいものです。

当局に頼っていても埒があかないので、しばらくは研究者が自発的に交流に勤めるしかないのでしょうね。
建物の構造などはどうしようもありませんが。

本当に、日本の研究は末端に対する負担が重過ぎるように思います。

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【BOOKS】『生物時計はなぜリズムを刻むのか』:分子機構と社会利用

生物時計はなぜリズムを刻むのか生物時計はなぜリズムを刻むのか
(2006/01/11)
レオン・クライツマン、本間 徳子 他



対象とする読者は、「分子生物学の基礎的な素養はあるが、生物時計の専門家ではない人」です。
データには全て引用文献が付記されていますので便利です。

慨日リズムがどのように分子的に制御されているかを解説した章は、
著者曰く「本書の心臓部」かつ「最も難解な章」とされています。

難解といっても、分子生物学の基礎を知っている人には非常にわかりやすく書かれていたので、生物時計の分子基盤を知らなかった私は重宝しました。

類書は、複雑な分子機構を一つの図にまとめてあったりするため、
逆に理解しにくいということが多々あります。

その点、本書はまず最も基本となる機構を図説した後、

「しかしこの図だとこんな現象が説明できない」

「○○博士の研究により、新たな機構が判明した(少し複雑になった図で説明)」

「しかしこの図だとまだこんな現象が説明できない」

「××博士の研究により、他の制御機構が判明(また少し複雑になった図説)」

「しかしこの図だとまだこんな現象が説明できない」
・・・

というふうに段階的に説明が進むので、全体像が難なく頭に入ります。

難点と言えば、英単語が全て縦書きにされているため、とても読みにくくなっていることでしょうか。

備忘録的に、慨日リズムのカスケードをメモしておきます。
これはDrosophilaのもの。

1) ClockタンパクとCycleタンパクが二量体を形成し、DNAのプロモーター(E-box)に結合する
2) PeriodタンパクとTimelessタンパクが合成される
3) 細胞質内で二つのタンパク質が二量体を形成する
4) PER/TIM複合体は核内に移行し、ClockとCycleの活動を抑制する

これが基本的なサイクル。(下のサムネイル参照)

circadian clock regulated by PER and TIM


しかしこのサイクルは全体で数分しかかからないため、24時間サイクルを説明するにはまだ様々な機構解明が必要である。

可能な説明の一つは Doubletime(DBT)タンパクの存在。
このタンパク質はPERにリン酸基を付加させるキナーゼである。
リン酸化されたPERは分解経路に移行する。
PERはTIMと結合しているときにはリン酸化されない。
よって、TIMと結合するまでは分解され続けることになる。

核内ではPER/TIMが分解されるのに約10時間かかる。

(以上)

ちなみに哺乳類での機構もほぼ同じで(というより同じであることを想定してタンパク質を探したので半分当然ではある)タンパク質の種類が少し違います。

Drosophilaのタンパク質をマウスのタンパク質に変換すると次のようになります;

dPER → mPER1, mPER2, mPER3
dTIM → mCRY (クリプトクローム)
dCYC → BMAL1
dCLOCK → mCLOCK
dDBT → CKε



******
また、後半は慨日リズム研究の社会的な側面にも光を当てています。
医療には慨日リズムの理解が不可欠なのに、その重要性がほとんど理解されていないということが力説されています。

個人的に面白かったのは慨日リズムの軍事利用が解説されている章でした。

国防総省の研究所(DARPA)は、「24時間、7日間連続で戦闘できる兵士」をつくる研究をしているらしい。
曰く、「知的能力・身体能力を高いままに維持しつつ、睡眠をなくすことができれば、戦闘方法が根本的に変わる」だそうで。

過去の例としては、
・フォークランド紛争における英国軍の興奮剤使用
・リビア空爆の際の米国軍によるアンフェタミン使用
・湾岸戦争中におけるフランス軍によるモダフィニル使用
・(確定ではないが)イラク戦争時の米行軍によるモダフィニル使用
が紹介されています。

モダフィニルは近年かなり注目を浴びているようで、
目立った副作用もないまま三日三晩連続の戦闘を可能にする、とされています。

ふと、太平洋戦争時の日米比較論を思い出してしまいました。

「米軍は1日空爆したら2日休めた。これにより爆撃時の集中力が高まり、命中精度が上がった」
「日本軍は三日三晩ずっと戦闘機に座らせた。これでは精度が上がらない。これは人道的にも戦略的にも愚かである」

今、米軍は「戦略的には」正しい方法で三日三晩パイロットを酷使する方法を検討しているわけですが、人道的にはどうなんでしょうね。
科学を超えた議論ではありますが。

このモダフィニルは、ナルコレプシーの治療剤としてもFDAが認可されています。
現在、警察官や看護士など、「体のリズムを崩されることが多いが、高度な集中力を要する」仕事への応用も検討されているそうです。

良くも悪くも、アメリカは「基礎研究をいかに社会に応用するか」に余念がない国だと思わせます。
日本は、研究予算的には悪くない規模を誇っているのですから、もっと一般国民にわかりやすい形で還元する方法論が進歩してもよいと思います。

【BOOKS】『時間の分子生物学』

時間の分子生物学 (講談社現代新書) 時間の分子生物学 (講談社現代新書)
粂 和彦 (2003/10/20)
講談社



引用文献が書いていないので困ることが多いのですが、読み物として楽しめる本です。

以下、面白かった点のメモ。(カッコ内は感想)

・渡り鳥は、生物時計を使って方角を知ることができる。
日付と時刻と太陽の方角から『計算』している。

この鳥を部屋の中で飛ばし、電灯の位置を固定すると、この鳥の飛ぶ方向は1時間に15度ずつずれる。
これは、地球上で一定の方向を向いて飛び続けるためには、太陽の動き(1時間の15度ずつずれる)に対して飛ぶ方向を常に変化させる必要があるからである。

(これはすごい。ということは、渡り鳥は曇りの日は飛べないのだろうか?)

・実は、「人間の生物時計は25時間周期」説は確定していない
最初にこの「25時間説」を提唱した論文では、地下室の中で、自分の意思で明かりをつけることが許されていた。
この光によって生物時計が調整されていた可能性が高い。

つまり外部影響を完全に遮断したフリーランの状態ではなかった。

完全フリーランに近い報告は1999年にscience誌に発表されており、それによれば年齢によらず慨日周期はほぼ24時間で、個人差も30分以内であった。

(こんなふうに「思い込み」を排除してくれる情報が好き。しかし「光を当てると慨日時計が遅れる」のは妙に思える。太陽の光を浴びたらむしろ太陽の周期に合いそうなものだが)

・ナルコレプシー(活動中でも突如として睡眠に入ってしまう恐ろしい病気)は、単に「長く起きていることが難しい」だけでなく、「長く、深い睡眠状態でいることも難しい」病気である。
よって、治療薬として睡眠薬が処方されることもある。

(知人にいました、こういう人。その人がナルコレプシーだったかどうかはわからないのですが、とりあえず「いつでも寝ている」人でした。・・・ナルコレプシーとは違いそうですね。で、あまりにも睡眠時間が長いので医者に行ったところ、処方されたのが睡眠薬だったそうです。「飲むと永遠に起きられない気がする」と言って飲んでいませんでしたが)

Glia Got Rhythm (2):ハエのグリア細胞の概日リズム

(続き)
・ハエの脳のグリアには、形態学的なサブタイプがいくつかある。たとえば;
1) 神経網neuropilの外にある神経細胞体と相互作用しているもの(cell body glia)
2) 神経網の中に存在するもの(neuropil glia)

・Ebonyの機能解析には、実質的に全グリアに存在するドライバー(ただしニューロンには存在しない)を使用した。よってebony cDNAを全グリアで発現させることは、レスキュー実験として十分である。

・Ebonyタンパクは、neuropil gliaには十分に存在するが、cell body gliaなど他のgliaには多く存在するわけではない。

・神経網におけるEbony(+)のglial processは、慨日ニューロンやドーパミンニューロンと接している神経突起に局在している。

・neuropil gliaはシナプスと相互作用し、神経の慨日回路の調整に関わっていると考えられている。

・EbonyはPDFを含むLNvの近傍に発現しており、かつEbony変異体はリズムに変調をきたしているので、この変異体はLNvに問題があると考えられる。
しかし変異体のLNvには形態学的な変化は何もない上、PERやTIMはrobustな振動を示す。しかも周期的にPDFを分泌する。

では、どのようにEbonyは慨日行動を制御しているのだろうか?

・Ebonyはドーパミン(DA)シグナルを制御している可能性が考えられる。

・Drosophila Dopamine Transporter (dat) の変異体は自発運動、睡眠、覚醒を制御していることがわかっている。

・本論分では、ebonyとdatは相互作用していることが示された。

・ebony変異体は、dat変異体で見られる多動を抑制した。

・DATはDAを介したシナプス伝達を止める働きがあるので、EbonyはDAシステムを活性化する役割があるのかもしれない。

・また、EbonyはドーパミンからNBAD(N-β-alanine-dopamine)を生成する触媒機能を持っているため、NBADは前シナプスか後シナプスで何らかの作用を持っているのかもしれない。

・Ebonyは、βアラニンをDAだけでなくセロトニン・オクトパミン・ヒスタミン・チラミンなどと結合させる作用もある。

・他には以下のようなモデルも考えられる。
シナプスが活動している間に、Ebonyを持つグリアがシナプスからDAを除去し、NBADを生成して、DAをプレシナプスのニューロンにリサイクルする過程に使われる。

ebony変異体では、NBADの生成を阻害することで、このリサイクルの過程を抑制し、ドーパミンのシグナルを阻害する。

・mammalのCNSではグリアは形態学的および生理学的に強くシナプスに結合している。グルタミン酸を介した伝達においても重要な役割を果たしている。

・NBADや、他のEbonyによる産物は日中に増加するようである。
これはEbonyが日中に増えることとも整合性がある。
(このとき、自発運動も増加する)

・今後の実験としては、グリアの慨日リズムを人工的に変化させることで、ハエのふるまいがどのように変化するのかを見てみるのも面白い。

・mammalのSCNでもグリアが関与している証拠があるので、Drosophila だけでなく
mammalでも同様にグリア(アストロサイト)は同様の機能を持っているかもしれない。

Glia Got Rhythm (1):ハエのグリア細胞の概日リズム

Drosophila Ebony Activity Is Required in Glia for the Circadian Regulation of Locomotor Activity
Joowon Suh and F.Rob Jackson
Newron 55, August 2, 2007


いろいろあって久しぶりのエントリー。

ラボの論文輪読の当番が回ってきたので、何かいいのないかな~、と論文を漁っていました。
私はどちらかというと脳の高次機能に関する論文を紹介したいのですが
ラボの方々は分子レベルで説明できない研究には興味があまりなさそうなので
両者の要求を満たし得る論文を探すのがなかなか大変でした。

が、やっと見つけました、タイトルを見ただけで『これだ!』と思った論文。

Glia Got Rhythm.

これは論文ではなくプレビューのタイトルではありますが。

これなら、分子の話である上に、何らかの形で Rhythms of the Brainの話もからめられるかな、なんて。

というわけで、本論文に関するメモのエントリーが今後2週間くらい続くかもしれません。


問題は、グリアの話とはいっても、ハエのグリアなんですよね・・・
ハエの脳の研究がどのようにmammalに生かせるのか疑問だったので、
これまで食わず嫌いだった節があります。
これを機にハエも勉強しなければ。

昆虫と哺乳類の脳は相似だから意味ナシだとか、いや意味アリだとかの論争って、今はどうなってるんでしょう??


以下、プレビューの前半の要旨。

・Drosophila では外側腹側神経 ventral lateral neurons, LNvS がペースメイキングに決定的な役割を果たす。
他のcircadian neuronとシンクロしており、自発運動活性locomotor activity を関わっている(特に夜明け前)。

・神経ペプチドであるPDFはLNvSから分泌され、上記の機能に重要だとされている。

・LNdSやDN1Sは夕暮れの活動dusk activityに関与している

・1988年の時点で、グリアも概日リズムを刻むことがわかっていた。PERを周期的に発現していたのである。

・Suhらは、circadian locomotor activityにおいてebony 遺伝子が決定的に重要であることを突き止めた。
ebony遺伝子はN-β-アラニン性生体アミン合成とともにタンパク質をコードしている。

・精製Ebonyはβアラニンを多くの生体アミンと結合させる。生体アミンには、ドーパミンやセロトニンも含まれる。

・Ebonyのノックアウトは概に知運動に著しい欠損を見せる。

・脳内のEbonyのmRNA量は概日リズムを示す

・Ebonyはadult brainのグリアにしか見られない

・Ebony量は日中に最高で、夜に最低になる。この周期性はPER/TIMに制御されていることもわかっている。
なぜならtimeless null mutantではEbonyの概日変化は見られないから。

・PDFはグリアのリズムをシンクロさせるのに必須ではないかもしれない。
ということは、グリアのリズムは細胞単位で行われており、他の細胞の関与はないのかもしれない。

・Ebonyは単独でグリアのリズムを制御している可能性もある。なぜならebony mutantでebony cDNAをグリアで発現させると、それだけで自発運動の欠如をレスキューできるから。

・ただし、N-β-アラニン性生体アミン合成酵素なしではレスキューできなかったので、Ebonyは他のタンパク質と共同でリズムを制御しているのだろう。


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