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【BOOKS】『心脳マーケティング』

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press
(2005/02/10)
ジェラルド・ザルトマン



「心理学×脳科学の複合領域アプローチ!」

なんて銘打ってあるので、「脳科学の知見を生かしたマーケティング戦略の本なのかな」と期待して買うと、おそらくがっかりします。

私は残念ながら、そう期待した読者でした。

きっと「脳科学のアプローチ!」なんて言葉がなければ普通にマーケティングの本として楽しめたのでしょうけど。

本書の中から脳神経関係の用語を全て取り去っても、内容にほとんど差はないはずです。


しかも、脳科学関係の部分も、データに若干怪しい部分が見受けられます。

p47には「大脳皮質は、3000億ほどのニューロンを内包し」と書いてありますが、
大脳皮質にあるのは130億程度じゃありませんでしたっけ?

計測方法によって桁の一つや二つは変わってくるのかもしれませんけど。



神経経済学についてのまとまった本を読みたいのに、日本語だと見つかりません。

いや、そもそも外資系に就職する身なんだから英語で読めよ、

と自分で突っ込みたくはなりますが。




あ、マーケティングの本としては面白いんですよ、この本。念のため。

ある広告代理店は、社内コンサルティンググループのスタッフとして分子生物学、数学、フランス文学などの修士号取得者を登用したり、投資銀行経験者を起用したりして多様性を重んじた結果、3年で売上が倍になった、だとか。
(市場規模が倍になっただけ、などの理由も考えられるので、一概に因果関係を論じられませんが)
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【BOOKS】『「理系」という生き方』

「理系」という生き方―理系白書2 (講談社文庫 ま 56-2)「理系」という生き方―理系白書2 (講談社文庫 ま 56-2)
(2007/12)
毎日新聞科学環境部





『理系白書』の続編。
理系院生の就職事情に関するブログを読んでいる人なら、目新しい情報はほぼ皆無であろうと思います。
しかもブログのほうがおもしろい。
出版業界衰退の一因は、ウェブ上の情報や知見に対して相対的に魅力が減ったからだと思わせます。

「理系院生ももっと多様なキャリアパスの模索を」という項目では、ケーススタディが羅列してあり、それぞれ少しずつ楽しめました。

やはり理系から金融に行く人は増えているようです。
ただ、これは2000年以降、不良債権問題が一段落してからの話らしく、バブル期もやはり理系の需要は高かったということがわかります。

「金融が札びら切って優秀な学生を奪っていく」という工学部教授の言葉は印象的でした。
本音なんでしょうね。
この教授自信は、ポスドクや院生の給与に関して権限を持たないので、ある意味で被害者の一人かもしれません。

ただ、「理系」とは言っても、ほとんどが工学系ということがわかります。
例示されていたのは、たとえば次のような人々。

 東大工学部→野村證券→カリヨン証券
 東大工学部→外資系証券会社→信販会社のCFO
 京大工学部→住友生命
 京大工学部→銀行→安田企業投資
 早大理工学部→三菱信託銀行

読んだ限り、バイオ・ライフサイエンス系からの金融は皆無。
いや、そもそもバイオ系の院生自体が登場していないのでは・・・
確か院生の半分近くを占めるメジャー分野のはずなのに。

げに恐ろしきかな、バイオの就職事情。


最後に、情けない事例を一つ引用。

京都大学理学部三年の田中さん(仮名)は、文系就職を考えている。
セミナーに参加したりOB訪問をした企業は、銀行、証券、メーカー、コンサルタントなど40~50社に上る。
高校時代の化学の教師に影響され、ノーベル賞受賞者を輩出してきた京都大に進んだ。だが、入学してみて「成果が出るまで10年、20年かかることもある。僕にはそこまでやりとげられるだろうか」と迷いが生まれた。
より広い社会に関心が移り、就職活動で企業を回るうち、世界を相手に仕事ができる総合商社に魅力を感じ始めた。
「理系はビジネスに疎い」という世間の見方は今も根強い。「履歴書に『文系』と書きたくなるときも確かにある。でも入社すれば、他人と違った経歴はきっと強みになるはずです」と田中さん。就職活動ではその点をしっかりとアピールするつもりだ。



うわー・・・

なんだかいろんな意味で自分に似ていて嫌ですね。

目の前にこんな人が現れたら説教してしまいそうです。

しかしこの人、本当にOB訪問したんでしょうか?
私も何十人とOBに会いましたけど、理系だから不利と感じたことはただの一度もありません。
(数理系ではなく生物系ということで不利を感じたことはありますが)

三菱商事の人も、「ビジネスは科学的でなければならない」と豪語していましたし。

「ビジネスは感性、なんて昔の話。論理的に自分のやろうとしていることを説明できない人には仕事を任せられない」とも。

もちろん感性も重要だけど、との付言はありましたが。


私が内定した外資投資銀行も、半数以上が理系院生でしたし。

よって、履歴書に「文系」と書くなんてそんなこと、とてもできたものではありません。

この田中さんがその後どうなったのか心配です。

武田のAmgen買収は失敗?エーザイのMGI買収はMA防衛用?

2月12日のBTJジャーナルより。

先日エントリーした武田薬品によるAmgen社日本法人買収についての記事がありました。
結論は、今回の買収の影響力は大きくない、ということ。理由としては、
・武田はブロックバスターを得ていない上、獲得権益は国内にとどまる。
・抗がん剤のパイプラインはまだ米Amgen社が保有しており、どれだけ力を得たのか不透明
ということが挙げられるようです。

先週、武田薬品が米Amgen社の日本法人を買収したニュースが伝わったところ、米Amgen社の株価はNY市場で18セント下落しました。NYタイムズが9億ドル以上の契約だと見出しでもて囃したのにもかかわらずです。同紙の記事もよく読むと、米Amgen 社が先に第一三共にライセンスした抗RANKL抗体、デノスマブがブロックバスターであり、武田薬品の今回のディールは1種類の低分子の標的医薬を除き、日本国内だけの権利に止まったこともあり、世界レベルでの影響は少ないとの判断でした。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008020452597 

 特に米Amgen社のESA(赤血球増加薬、エリスロポエチンやアラネスプなど)のがん患者に対する使用制限に、メディケア・メディケイドが積極的な支持を仄めかしているなど、Amgen社の利益の源泉であったESA市場がまだまだ縮小する可能性に対して、武田薬品から得た資金ではいかんともし難いという判断です。日本では成功物語のように喧伝している今回のディールですが、米国での反響は極めて小さいさざ波に止まっています。

 武田薬品も日本でこそ一挙に10数個の抗がん剤のパイプラインを導入できましたが、国内販売だけで、尚且つ米Amgen社が我が国での共同販売権もまだ保持しているディールです。これで満足しては20年前の海外からのライセンスモデルに先祖がえりしてしまいます。両者にとって今回のディールはなんだったのか? 10年後に検証が必要だと思います。



確かにモデルとしてはライセンスビジネスになってしまうのかもしれませんが、武田としては抗がん剤のノウハウを得られるだけでも大きな前進だったのではないでしょうか。
なぜなら、武田薬品は比較的抗がん剤が苦手だったからです。

なぜ抗がん領域に力を入れなかったのか?

ブロックバスター(売り上げが1千億円を越える薬)の開発には患者の多い生活習慣病の薬が良いとされ、高コレステロール血症や糖尿病に対する薬の開発に躍起になっていたからです。
今でも重点領域として武田・第一三共・アステラスは生活習慣病を挙げています。

しかし最近になって、エーザイが抗がん領域に本腰を入れ始めました。
MGIファーマを4300億円で買った理由は、MGIの抗がん剤開発能力を評価したからです。
エーザイが抗がん剤領域で力を伸ばしてくることに焦った武田が、後れを取らないようにとりあえず抗がん領域に強い会社を買収しようとした可能性もあると思います。


ただ、エーザイは技術が欲しくてMGIを買ったわけではなく、将来にわたってのれん代の償却や有利子負債の返済が必要な買収をしたかっただけ、という見方もあります。
つまりエーザイ自身が他社に買われないように、防衛策を取ったということです。
時価総額がわずか1兆円程度しかないエーザイは、大手製薬会社にとっては安い買い物。
少しでも買いにくくするため、負債を増やしたという見方があります。(FACTA2月号より)

一口に買収と言っても、技術のみならず買収防衛・会計操作など、様々な思惑が混じりますので、その評価をするのは素人には難しいように感じます。

研究評価基準「PF」とは

2月8日に配信されたBTJジャーナルは、産総研の倉地氏による「研究の評価方法について」。

インパクトファクター(IF)の代替手段としてのパースペクティブファクター(PF)という概念は、恥ずかしながら初耳でした。
どういった方法論なのか、もう少し調べてみようと思います。

以下、その節を引用。

IFは便利だが極めて雑な指標である。しかし、我国では研究評価の重要な物差しとして使われ、研究者個人の評価や国の研究費配分、国の将来政策決定等にまでも大きな影響を与え、研究者はそれに踊らされる現実がある。最近大庭氏らにより、IFとは異なった視点から、より実際を反映する優れた指標としてperspective factor (PF)が提案された(蛋・核・酵vol.50、270, 2005参照)。PFは、ある論文発表前後を比べて関連する分野へのその論文の影響を比較するものであり、IFより優れる。ただ、年期間に亘る追跡調査が必要な事や新研究分野の開拓に繋がるが長いリード期間を要する独創的研究の評価には限界がある、等の課題がある。数値による研究評価の難しさを改めて示すものだ。では、優れた研究評価の仕方とはどんなものなのであろうか。これまで機会あるごとに述べてきたが、米国NIHのピアレビューに見られる徹底した客観的討議による研究評価に勝るものはないと確信する。このピアレビュー過程には、研究の更なる育成と発展、進歩を促す機能も備わっている。IP等に頼らないこのような研究の価値判断と育成に対する基本的考えが、研究界は勿論、政府と社会一般に広く共有される事が重要である。



結局はピアレビューが一番という結論になっています。
やはりボスが正しいのか・・・

製薬M&Aは終わった?<武田、アムジェン買収への株式を取得へ>

【NEWS】武田、米アムジェン日本法人の株式を取得へ

武田薬品がAMGENを買収するとのニュース。(Bloomberg 他)

私が投資銀行の面接を受ける際、「特にやってみたい分野はある?」と聞かれて「製薬のセクターに興味があります」と答えて少々議論になりました。

なのでこのニュースはとても印象的です。

以下、社員とのやりとり。

「私は、現在の製薬の開発効率は非常に悪いと思っています。
20年前の20分の1とも言われています。

一つの薬を開発するのにかかる時間は平均12年、かかるコストは800億円と膨大です。
この理由は、簡単に作れる薬は開発し尽くされて、現在は発見に時間のかかる薬品しか残っていないからです。

この状況を打破するためには、ある一つのミスをいくつもの会社が同じように犯していたら全体の生産性が上がりません。
R&Dを統合して、全てのミスを共有すれば、より開発のコストは全体として下がるはずです。」

「うーん、君の言ってることはわかるんだけど、けっこう古い話なんだよね。
2000年に入ってから大編成が行われて、もう2~3年前に一段落しちゃった。
もうこれ以上やることがあるのか疑問なんだけど」

「いえ、私はまだ潜在性はあると思っています。
たとえば、現在では薬物を発見するための手法が機械化・ロボット化されてきています。
ならば、これまでのように製薬企業とばかり統合するのではなく、他分野の会社との統合は考えられないでしょうか。
たとえば、メカにクスに強い会社の一部を買収するという方法も考えられると思うのです。
そうすれば、より製薬に強いロボットが作れるようになって、やはり生産性が上がると思うのですが」

「ほお、それは面白いね。
でもそれは現在の経営の潮流には反してるんだ。
コングロマリット・ディスカウントって言うんだけど、現在の考え方では、一つの会社は一つのことに集中した方が良いという考えになってきてるんだよ。
昔みたいにポートフォリオを組んで何でもかんでも手を出すと言う時代ではないんだ。
もちろん、これは多分に時代が影響しているから、絶対とは言えないんだけど」

「でも、実際にGEは自社のエレクトロニクス部門をヘルスケア部門に生かせていると思うのですが?」

「あぁ、GEはね、経営学の中では異端扱いなんだよ。
『ウェルチだったからできたんでしょ?』的なね。
だからあまり参考にならないというのが一般の見方」

「はぁ、そうなんですか・・・具体的にどのような点が異端なのでしょう?」

「うーん、具体的にと言われるとパッと出てこないけど、大抵の定石を無視していたりするのは確か。

あと、君は会社や社会の生産性を上げることが目標と言うけれど、僕らの仕事は別に生産性を上げることじゃないからね。
本質的なのは資金供給。
もちろん生産性が上がってくれれば万々歳だけれども、必ずしもM&Aと結びつくものではない。
もう少しIBDの仕事をよく知ってもらう必要がありそうだね」

「あ、はい、勉強します」

(以上)


本当はもう少し議論はあったのですが、およそこんな感じ。

私がIBDの仕事を理解していなかったのは確かではあります。
(それでも大手外銀に受かるのですから、一体何を見られていたのかよくわかりません)

「もう再編は終わったんだよ」と言われた後に製薬M&Aのニュースを見るとちょっと嬉しくなってしまうわけです。

今回の買収はどこが主幹事なんだろう。

・・・

少し前なら、「今回の買収で、どんな薬が作られるんだろう」と真っ先に思ったのでしょうが、徐々に頭が金融で冒されて行きます。

ちょっと寂しい。

科学への好奇心は、死ぬまで持っていたい、なぁ。

魅力的な研究環境を配備する前に

少々古いのですが、1月28日の日経新聞の記事より。

『科学技術立国の裏側(下)外資の引き合い多く 優秀な人材、流出止まらず』

<記事要約>
「東大情報理工学研究科では、優秀な修士課程学生の多くがグーグルへの入社を志望。
指導教官も、『他の会社なら引き留めるが、グーグルなら仕方がない』と言う。
グーグルの他にも、ゴールドマン・サックス、JPモルガンなどの外資系金融機関やコンサルティング会社など、就職先の中で外資系は約2割を占める。

外資系の待遇は日系企業よりも良い。
優秀であれば性別・人種・経歴に関係なく若い人材でも強引に引き抜く。
グーグルでは、インターン生でも、大学とは桁違いの高速処理システムを自由に使える。
インテルでは、正社員と同程度の待遇でインターンシップを用意。
HPに初年俸1000万円で就職した学生もいる。

日本の優秀な博士は米国でも評価が高い。
逆に、日本では外国人の技術者・研究者の割合は1%未満。
優秀な頭脳を国内に引き留めるための、魅力的な研究環境の配備が欠かせない」


この記事では「外資金融っていいな」というトーンで書かれています。
しかしこう言えるのは、外資金融とはいえ、学生時代の研究(IT)を生かすことができるからでしょう。
おそらくIT部門に行っているはずです。

しかし私のように、「生物基礎研究→投資銀行部門」という、意味不明な選択をする人には世間の風はあまり温かくはなく。

「すごい!・・・でも何の会社?」
「で、その仕事は何が面白いの?」
「時間、拘束されるんでしょ?かわいそう」
「子供ができたとき、その仕事って続けられるの?」

ぐすん(ノ△・。)

多くの「同情」は、実は会社に特化されたものではないとは思うのですけれど。
食べるために、面白くない実験をしている人だっていますし、
研究室によっては拘束が非常に厳しいところもありますし、
子供なんて、現状のアカデミアで持つ方が私なら不安です。


アカデミアや研究の存在意義は100%認めますが、しかしもう少し「アカデミア以外、研究職以外」の仕事についても自由に議論できる雰囲気を大学内に醸成すべきかと。
院生が26万人もいて全員がアカデミアや研究職に向いているわけがないのですから。
後になって後悔する博士が大量発生すると、意欲的な博士の士気も下がるように思います。

現状で、『様々な選択肢を検討した結果、やはり博士に行きたいと思った』という結論が下せるのは、「就職活動が許されている研究室で、就職活動をしようと思う人」という限られた人のみです。

記事にあるような待遇が云々の前に、基礎研究ではまず「世界はもう少し広い」ということを伝える必要があります。

実験では諸条件を検討して前に進むのに、自分の人生の検討をしない・できない状況はおかしい。

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