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ブラック企業でもブラック研究室よりはマシ

社会人になって初めてのエントリー。

もともと研究生活のスパイスにするためのブログだったので社会人になってから更新する予定はなかったのですが、

科学界とは離れた「外野」にいることで思うことも出てきたので備忘録としてエントリーすることにしました。

今回の話題は以下の2点。

1.世間はポスドク問題に関心などない
2.ブラック企業はブラック研究室より格段にマシ



1.世間はポスドク問題に関心などない

ポスドク問題というより科学全般に関心がないので当然ではあるのですが。

実際に社会に出てみると、科学のことを雑談のテーマにすることさえ憚れるほどの心理障壁に閉口します。

最近であれば「はやぶさ」がその好例でしょうか。

ネット上であれだけ話題になっていても世間の関心など高が知れていて、「はやぶさ」の名前さえ知らない人が珍しくありませんでした。

日経新聞の第1面に堂々と写真付きで載っていても尚、その日の夕方の雑談のテーマにできないのです。みんな日経新聞は読んでいるはずなのに。

日経新聞の株式欄にある、わずか1段の記事を見逃しただけで罵声が飛ぶ世界ですが、第1面にあってもその存在さえ認識されないのが科学技術。


その中にあって「ポスドク問題」と言ってもその問題の深刻さを理解してもらうのは困難です。

これを雇用問題として語ると、300万人の失業者のごく一部として認識され、
これを税金の無駄遣いとして語ると、何兆円規模の公共事業の無駄遣いと比較されます。
私の説明が悪いだけと言えばそれまでなのですが。

副次的に発生する「優秀な人材の流出」問題は比較的理解されやすいのですが、「そのうち受給バランスが取れて問題は消えるのでは?」という話になります。
研究の伝承が難しくなるんですよ、というテクニカルな反論は可能ですが、細かい議論ができる雰囲気でないのは前述の通り。


更に、事業仕分けの時からの所感ではありますが、特にアカデミアのような「税金による研究」は、資金源(いわば株主)である国民からそもそも求められていない、と感じます。

「その研究、何の役に立つのですか?」という質問に対し、「なんという余裕のない、民度の低い質問だ」とアカデミアは眉をひそめますが、

実際に国家財政は微塵の余裕さえありません。

年金も医療費も逼迫し、国債の借り換えさえ困難になってきて特例で日銀による受け皿を求めざるをえないのが現状です。

この中にあっては、「役に立つことさえ説明できない」研究に血税を注ぎ込むことに国民が耐えられないのは不思議ではありません。

(多くの国民はそのような研究の存在さえ認識していないと思いますが、役に立たない以上は「無駄な公共事業」の一部として捉えている節があります)


いわばポスドクは、消費者からも株主からも見捨てられたセクターの従業員のようなもので、(あくまで市場経済の観点からは)残念ながら将来性は乏しいと言わざるを得ません。

にもかかわらずそのセクターの”新卒採用”を増やし続けた経営陣の責任は重いのですが、株主の視線が気になる経営陣としては、株主の関心がないセクターの対応など最も後回しになるでしょう。

「実際にそのセクターにかかるコストは他セクターに比べて安いんです」といくら説明したところで、政治力の乏しいセクターの影響力など知れています。

だから何だと言われると困りますが、学生時代には「解決しなければいけない問題だ」と思っていたポスドク問題が、社会に出てみると「解決が求められていない問題だ」という認識に近づきつつあるということでした。


2.ブラック企業はブラック研究室より格段にマシ

典型的なブラック企業は次の要件の一部もしくは全部を満たします。

(1)常習的なパワハラ・セクハラによる精神汚染
(2)触法行為とその隠蔽
(3)激務、長時間労働
(4)低賃金、残業代不払い
(5)上記の問題に対する無策、無対応

これらの条件はブラック研究室でもほぼ同じ。
決定的に異なるのは次の2つです。

・ブラック企業でも一応賃金は支払われるが、研究室では学費を払っている
・ブラック企業は辞めれば転職先があるが、研究室を辞めても就職先はない


ブラック企業と言えども一応は企業。
サービス残業という名の犯罪行為が横行しているものの、生活していくことができる程度の賃金は支払われます。
少なくとも、生活していくだけで借金が雪だるま式に膨らむことはありません。

一方で研究室。
大学院生は学費を払って研究をしています。しかもこちらは合法です。
どれだけ大学院生をこき使おうと「熱心な指導だった」で済まされそうな勢いです。
つましい生活をしていても、それだけで奨学金という借金が膨らんでいきます。
将来返済できる当てがあればまだしも、それさえ危ういという現実がのしかかります。

実は私が勤務する会社も相当にブラックで、上記条件のほぼ全てを満たすのですが(月平均労働時間が500時間越えって何ぞ)、唯一賃金だけは高水準です。
(※私が所属していた研究室はブラックではありませんでした。念のため)

私は学振を取得できるレベルの院生ではなかったのですが、それでも就職したら学振の何倍もの(文字通り「何倍も」)給与を与えられています。
東大・京大クラスの優秀な院生でさえ学振の年間200万円強しか得られないのに対し、同大学を卒業した「優秀ではない」学生の年収は最低でも400万円台です。

「お金のために研究しているんじゃない」という正論さえ昨今では薄らいでいますが、一応反論しておくと、
ブラック研究室の問題はその「研究」さえ阻害されることにあるのであり、やりたいことができない上に金銭的ダメージまで受けることが企業とは異なります。
(そもそも大学院で「自分で好きな研究」が出来ている人は相当に優秀で、大半はそもそも好きかどうかもわからないテーマを追っているということはここでは触れません)


次に「回避可能性」について。

ブラック企業は、最悪の場合は「辞める」という選択肢があります。
履歴書上は好ましくないのですが、致し方ないでしょう。
勤務期間が1年未満だと転職は少々厳しいものになりますが、それでも「一度は就職できた」という事実が支えになります。
1年以上勤務していれば、少なくとも第二新卒としてのマーケットが存在し、
3年務めていれば専門性を持った人としてのマーケットが存在します。

翻って研究室。
「辞める」という選択肢を取ることは非常に難しい状況にあります。
単位も取得せず大学院を中退することは就職活動に大きな負の影響を与えてしまいます。
転職マーケットに比べ、大学院中退者に対する新卒マーケットは桁違いに小さいものになります。
大学院修了者の新卒マーケット自体が小さいのに何をかいわんや。

パワハラ・セクハラを受けている場合、ボスに楯突くことで単位取得が危うくなるため、実質的に奴隷状態になっていることが往々にして起こります。
他の研究室に移るという手段もあり、実際にそうした人もいますが、これまた実行性に乏しいことが否めません。

私もリクルートエージェントやインテリジェンス等の転職エージェントに友人がいるので内情を聞けるのですが、転職者の転職理由の7割は「上司と合わなかった」からだそうです。
そして彼らのほぼ全員が転職に成功しています。

要するに「もうボスの奴隷は嫌だ!」と思えば逃げ道があるのがサラリーマン。ないのがラボ。



何が言いたいかというと、
「お金を取るか、やりたいことをやるか」という悩みはアップサイドシナリオであり、
「お金もない、やりたいこともできない」というダウンサイドシナリオを考えた時に
やはり研究職は極めて不遇な環境にあると言わざるを得ない
ということです。

研究職を目指す、という「人生の実験」を試みる際、実験に失敗した時の対応策を用意できない学生は可及的速やかに就職した方が良いでしょう。実験系を構築するセンスも怪しいものです(自戒も込めて)。


学振も取れるほど優秀で、将来的な資金の目処もつき、研究室にも恵まれた人が、海外に流出せず日本の科学振興に貢献してくると・・・いいなぁ・・・
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