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静脈認証技術:なぜnatureは紹介しない?

今週のnatureの記事に、バイオメトリクス(生体認証)の記事がありました。
(nature 449, 6 Sep 2007, pp38-)

金融決済やテロ対策のため、今後バイオメトリクスは主流になりますよ、
その技術もどんどん進んでいますよ、
という記事なのですが。

大きく疑問だったのは、取り上げているのが「虹彩」と「指紋」なんですよね。

大きく疑問が残りました。

なぜ静脈認証を取り上げないのか??


日本の銀行などで導入されてきた静脈認証は、
富士通と日立が世界でトップの技術を持っています。

静脈認証は、指紋認証よりも格段に優れています。
なぜか?

指紋認証は次のような欠点を持っています。

・指紋は変形したりなくなったりする(指先を酷使する人々や、負傷した人など)
・指が汗などで濡れていたりすると認証できなくなることがある。
・指紋は複製可能である

これに対して、静脈認証は上記の全ての問題を解決します。

・静脈の形は終生不変
・指の内部を撮影するので、表面の汚れは関係ない
・複製不能

また、精度の点でも指紋より優れており、
FAR(False Acceptance Rate:他人の指を間違って本人だと認識してしまう率)は、
指紋認証だと0.1%ですが、静脈認証なら0.0001%と、ケタが違います。


なぜこれほどにまで実用的な静脈認証をnatureは紹介しないのでしょう?

「どうしたら認証の正確性を上げられるでしょう?」

という質問に対しては、

「アメリカは、2本分の指紋を使うことで精度を上げています」

と答えるなど、あくまで指紋にこだわります。
虹彩認証も、イギリスのIRISシステムの紹介のみ。


な・・・なぜだ。

『最新性と話題性』をウリにするnatureにとって、静脈認証はうってつけのはずなのに。

欧米以外の技術を紹介するのがイヤなのか。
(↑ひがみすぎ?)




実は私、静脈認証に関するプチ論文を少し前に書いたことがありました。
「日本の静脈認証技術を、発展途上国の携帯電話ビジネスに役立てよう」というテーマで。

その前半部分だけアップしておきます。

本当に、かなりアツいですよ、途上国の携帯電話ビジネス。

携帯電話が実質的に銀行口座の役割を果たすため、投資家がメールでその「口座」に振り込み、途上国の人はそれを元手にビジネスを興せるのです。

投資家にとっても途上国の人にとっても大いに魅力的な話です。
The Economistが指摘するように、現在の貧困地域は、グローバル化の犠牲者ではなくて、グローバル化が進んでいないことによる犠牲者なのだろう、と思わせました。
【途上国の携帯電話にバイオメトリクスを】

1. 序
 究極の個人認証と呼ばれる、バイオメトリクス。顔・指紋・虹彩など、「その人のみが持つ生物的な情報」をパスワードとして利用する技術である。近年、銀行のATMやパソコンのパスワードとして普及が進んできた。パスワードやカードキーと異なり、盗難・紛失やハッキングなどで「他人になりすます」ことが極めて困難であるため、安全性の点で注目されている。この分野では世界でも日本がリードしており、特に静脈認証に関しては日立・富士通を筆頭に日本がトップクラスである。

 この技術は、先進国における重要性は自明である。銀行、空港、病院、電子取引など、セキュリティが問題にされる場面のほぼ全てで活躍する。しかし本論では、これまでバイオメトリクスの普及活動範囲として全く触れられたことがない領域に焦点を当てたい。発展途上国である。具体的には、発展途上国用の携帯電話に、静脈認証による個人認証装置を備え付けることの重要性を論じたい。

 発展途上国の携帯電話、しかも静脈認証、と聞くと違和感を覚える人も多いだろう。発展途上国のイメージは食物さえ満足に得られない貧困状態というものが一般的である。そこになぜ最先端技術が必要なのか。

 我々は考え方を一新させる必要がある。食物を得るためにまず携帯電話が必要なのである。携帯電話があればビジネスができ、そのお金で食物が買える。実際に、このシステムは途上国で急速に広まりつつある。銀行の口座さえ持ったことのない人々が携帯電話でビジネスをしているのである。携帯電話の利用率も指数関数的に増えている。「途上国に援助を」ではなく、「途上国にビジネスチャンスを」という思想がそこにある。

 しかしこのビジネスは黎明期にあり、今後は先進国と同様に様々な問題が出てくると考えられる。本論は、その「考えうる問題」の一部を解決するため、日本の静脈認証システムを途上国の携帯電話に装備させることの重要性と可能性を論ずる。まず第1節で途上国での携帯電話ビジネスの現状を説明し、第2節で現状と将来の問題点を探る。第3節ではその問題解決になぜ静脈認証が有効なのかを論じ、最後に結論を述べる。

2. 発展途上国における携帯電話ビジネスの現状
発展途上国における最貧困層を対象にした融資活動を行う銀行がある。グラミン銀行と呼ばれ、2006年にはノーベル平和賞も受賞している。グラミン銀行は、最貧国の人(特に女性)を中心に小額の融資をし、その融資を元手に農工業などの経済活動をしてもらい、利子をつけて返済してもらっている。この活動が画期的なのは二つの理由による。一つは担保のない人々も融資を受けられる点。もう一つは、これは一方的な「援助」ではなく、「ビジネス」として成立している点である。人々は手に職を得て自立できる上、グラミン銀行も利益を出している。つまり一時的な援助とは異なり、「永続的な発展」が期待できるのである。

 このグラミン銀行が、新たなビジネスに乗り出した。発展途上国における携帯電話の普及である。なぜ携帯電話なのか。携帯電話があれば、人々はグラミン銀行だけでなく、世界中の情報と投資家にアクセスできるようになるからである。つまり、世界中の投資家が、「途上国」という枠組みではなく、「途上国の個人」という枠組みで投資が可能になるのである。
 
 なぜ携帯電話を持てば投資を受けることが可能なのか。それは今や携帯電話は「財布」としての機能を持つからである。日本でも普及が進む「お財布ケータイ」の機能は、いまや発展途上国でも珍しくない。たとえばジンバブエでは、トラックの運転手への運賃支払いや、ガソリンスタンドなどの代金支払いなどが、携帯電話で可能である(2)。フィリピンやインドでは、村に住む人々が電話で海外からの送金を受け取る。既に途上国では、銀行口座やクレジットカードも持ったことがない人々が、それらと同様の機能を携帯電話で保有するようになっている。

 この意味するところは大きい。これまでは「後発発展途上国」「貧困地域の人々」という”集団的概念”でしか捉えられてこなかった人々が、「個人」としての顔を持つようになるからである。国家やUNICEFなどを通した従来の援助は、援助する側もされる側も顔が見えないシステムであった。しかし、富める個人が、貧しい個人に直接投資ができるようになれば、双方にとって大きなインセンティブが働くと考えられる。それが投資であれ援助であれ、送金する側は自分の行為が役に立っていることを実感できる。資金を受け取る側は、次の援助や投資を受け取るため、労働意欲を掻き立てられる。その効果はグラミン銀行が実証済みである。携帯電話はグラミン銀行のみならず世界中の個人と組織とアクセスを可能にする点で画期的である。既に最貧国においては海外からの送金や投資がODAを凌いでいることも考え合わせると、携帯電話による送金は今後さらに伸びると考えられる。日本にいながら、バングラデシュの個人に3000円を融資し、わずかな利子つきで毎週300円ずつの返済を受ける。その人が自立していく様子も実感できる。そんなことが可能になってきている。
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コメント

遺伝子や内部器官を用いるのには、倫理的宗教的問題があると考えているのではないでしょうか?日本の場合、指紋を取るということがある民族に対して違法であるという運動があったので、その影響で、技術自体が捻じ曲がったのではないでしょうか?

興味深いご意見、ありがとうございます。
確かに遺伝子や内部器官を用いることには問題を孕んでいると考えられますが、それは指紋や虹彩でも同様であり(虹彩も人体の内部にありますし)、natureもそのことに言及しています。通常なら、「静脈認証という方法もあるが、問題もある」という記事になって然るべきだと思われます。
日本の民族運動のことは知りませんでした。ただ、日本でも静脈認証が普及し始める2003年までは指紋が使われており(富士通でもそうでした)静脈に移行したのは本文でも挙げたような技術的利点が大きかったのではないかと考えています。

はじめまして、いつも楽しく読ませてもらってます。
後半の論文序、興味深い話です。が、一つお尋ねしたいことがあります。

投資対象を個人に限定して(少なくとも前半部では)話を展開されていらっしゃるように見うけられますが、「組織に」投資しなければビジネスとして拡大するのは難しいのではないでしょうか?
あくまで援助のレベルであれば、個人対個人のやり取りで十分な成果を上げられると思いますが、大きなビジネスとして成立するためには投資側がそのリスクを十分測ることができ、また十分な利益をえることができる相手でなければならないと思います。その相手は個人ではなくて組織であると考えられます。

グラミン銀行は途上国の人々に“ビジネスを提供する”という視点に立った素晴らしい機関であると思いますが、投資する側が組織だということがビジネスとして成り立つために大きなポイントだと思います。必要以上の利益を上げ、ビジネスとして成立するには少なくとも一方が組織というビジネスに特化した形態である必要があると考えます。よって、より大きなビジネスとして永続的に展開していくためには双方が集団であることが望ましいのです。個人対個人投資ではこの点について弱いと考えられます。
個人対個人投資を足がかりにして、将来的には投資を受ける側が集団、企業として大きな規模でビジネスを行っていくというのが発展的ではないか、と思います。

携帯電話を用いた個人対個人の投資関係は、グローバルな観点で途上国と富める側を結ぶ非常に素晴らしいツールであり、途上国へのボトムからのビジネス導入として有効だと思いますが、この視点についてはいかがでしょうか?

本論とはずれているのですが、ふと思いついたので、もしよろしければお考えをお聞かせ願いたいと思います。拙文失礼しました。

>Takさん

丁寧なコメントをくださり、大変嬉しく思います。
ご指摘の点については本論では吟味しておらず、興味深く拝読しました。

私としましては、投資する側の母集団が世界規模で大きくなることと、さらに「双方の顔が見える」ことに注目したかったので、完全に個人対個人である必要はないと思っています。むしろそれはご指摘のように難しいことだと思います。
よって、仲介業者としての組織があってもよいと思われます。
現在でも、たとえば里親を紹介する組織がありますが、あれは個人と個人を結ぶ存在だと言えます。
同様に、投資の里親を探すファンドのようなものができれば、結果的に個人対個人のビジネスになると考えられます。

現在、グラミン銀行は国やファンドから資金を受け、数百人のスタッフが個人個人の面倒を見ている状態です。
スタッフがあまりにも足りませんから、一人ひとりのモチベーションを維持する役割を担う個人が世界中に広がることが重要と思われます(その意味で、普通の意味での投資家とは意味合いが違ってくるでしょう)。
途上国の人間が集団になる必要性はごもっともで、だからこそグラミン銀行は5人組をつくらせることで成功したわけですが、さすがに最貧民層の人々は「企業」レベルの会社は作れません。(なにせ文字が読めません)
なので最初は企業れべるではなく、まず「自力で働ける」という段階での投資が必要と考えられます。

「貧しい人たちのために慈善事業をしている」と人前で言うことは、どこか偽善的で憚られるという人は多くいます(私もその一人です)。しかし、「途上国に投資している」と言うことに抵抗を持つ人は少ないと思われます。
そういった、「偽善的でない救助方法を求めている人(かつ、お小遣いも欲しい人)」をターゲットとして、携帯電話ビジネスが広がっていくのではないかと考えています。

丁寧な返答ありがとうございます。

企業・集団として途上国の人々がグローバルに接していくというのは、なかなか道のりが遠いようですね。
まずは個人と世界がつながった状況が必要なのですね。

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