スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【BOOKS】『生物時計はなぜリズムを刻むのか』:分子機構と社会利用

生物時計はなぜリズムを刻むのか生物時計はなぜリズムを刻むのか
(2006/01/11)
レオン・クライツマン、本間 徳子 他



対象とする読者は、「分子生物学の基礎的な素養はあるが、生物時計の専門家ではない人」です。
データには全て引用文献が付記されていますので便利です。

慨日リズムがどのように分子的に制御されているかを解説した章は、
著者曰く「本書の心臓部」かつ「最も難解な章」とされています。

難解といっても、分子生物学の基礎を知っている人には非常にわかりやすく書かれていたので、生物時計の分子基盤を知らなかった私は重宝しました。

類書は、複雑な分子機構を一つの図にまとめてあったりするため、
逆に理解しにくいということが多々あります。

その点、本書はまず最も基本となる機構を図説した後、

「しかしこの図だとこんな現象が説明できない」

「○○博士の研究により、新たな機構が判明した(少し複雑になった図で説明)」

「しかしこの図だとまだこんな現象が説明できない」

「××博士の研究により、他の制御機構が判明(また少し複雑になった図説)」

「しかしこの図だとまだこんな現象が説明できない」
・・・

というふうに段階的に説明が進むので、全体像が難なく頭に入ります。

難点と言えば、英単語が全て縦書きにされているため、とても読みにくくなっていることでしょうか。

備忘録的に、慨日リズムのカスケードをメモしておきます。
これはDrosophilaのもの。

1) ClockタンパクとCycleタンパクが二量体を形成し、DNAのプロモーター(E-box)に結合する
2) PeriodタンパクとTimelessタンパクが合成される
3) 細胞質内で二つのタンパク質が二量体を形成する
4) PER/TIM複合体は核内に移行し、ClockとCycleの活動を抑制する

これが基本的なサイクル。(下のサムネイル参照)

circadian clock regulated by PER and TIM


しかしこのサイクルは全体で数分しかかからないため、24時間サイクルを説明するにはまだ様々な機構解明が必要である。

可能な説明の一つは Doubletime(DBT)タンパクの存在。
このタンパク質はPERにリン酸基を付加させるキナーゼである。
リン酸化されたPERは分解経路に移行する。
PERはTIMと結合しているときにはリン酸化されない。
よって、TIMと結合するまでは分解され続けることになる。

核内ではPER/TIMが分解されるのに約10時間かかる。

(以上)

ちなみに哺乳類での機構もほぼ同じで(というより同じであることを想定してタンパク質を探したので半分当然ではある)タンパク質の種類が少し違います。

Drosophilaのタンパク質をマウスのタンパク質に変換すると次のようになります;

dPER → mPER1, mPER2, mPER3
dTIM → mCRY (クリプトクローム)
dCYC → BMAL1
dCLOCK → mCLOCK
dDBT → CKε



******
また、後半は慨日リズム研究の社会的な側面にも光を当てています。
医療には慨日リズムの理解が不可欠なのに、その重要性がほとんど理解されていないということが力説されています。

個人的に面白かったのは慨日リズムの軍事利用が解説されている章でした。

国防総省の研究所(DARPA)は、「24時間、7日間連続で戦闘できる兵士」をつくる研究をしているらしい。
曰く、「知的能力・身体能力を高いままに維持しつつ、睡眠をなくすことができれば、戦闘方法が根本的に変わる」だそうで。

過去の例としては、
・フォークランド紛争における英国軍の興奮剤使用
・リビア空爆の際の米国軍によるアンフェタミン使用
・湾岸戦争中におけるフランス軍によるモダフィニル使用
・(確定ではないが)イラク戦争時の米行軍によるモダフィニル使用
が紹介されています。

モダフィニルは近年かなり注目を浴びているようで、
目立った副作用もないまま三日三晩連続の戦闘を可能にする、とされています。

ふと、太平洋戦争時の日米比較論を思い出してしまいました。

「米軍は1日空爆したら2日休めた。これにより爆撃時の集中力が高まり、命中精度が上がった」
「日本軍は三日三晩ずっと戦闘機に座らせた。これでは精度が上がらない。これは人道的にも戦略的にも愚かである」

今、米軍は「戦略的には」正しい方法で三日三晩パイロットを酷使する方法を検討しているわけですが、人道的にはどうなんでしょうね。
科学を超えた議論ではありますが。

このモダフィニルは、ナルコレプシーの治療剤としてもFDAが認可されています。
現在、警察官や看護士など、「体のリズムを崩されることが多いが、高度な集中力を要する」仕事への応用も検討されているそうです。

良くも悪くも、アメリカは「基礎研究をいかに社会に応用するか」に余念がない国だと思わせます。
日本は、研究予算的には悪くない規模を誇っているのですから、もっと一般国民にわかりやすい形で還元する方法論が進歩してもよいと思います。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL:

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。