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自閉症:オキシトシンは「他人の心を読む」のを助ける

オキシトシンは「相手の心を読む」のを助ける
Oxytocin Improves “Mind-Reading” in Humans, Biol.Psychiatry, 2006


CD38およびオキシトシンとの関連で調べてみた。

自閉症とは先天的な発達障害の一種である[1]。
典型的な症状の一つとして、「人の心が読めない」ことが挙げられる。

相手の感情を理解すること、
相手の考えていることを推測すること、
などが著しく困難である[2]。

本論分は、「相手の感情を読む」ことにオキシトシンが関わっていることを示唆するものである。


過去には、自閉症の人はオキシトシン分泌量が少ないことも示唆されていた。
(Green et al, Oxytocin and autistic disorder, Biol.Psychiatry 50, 609-613)

ただし今回は自閉症の人ではなくて健常な人に対して実験をしている。

実験方法:
30人の男性に、いろいろな「目の部分の写真」を見てもらう。
この写真は、怒り・悲しみなど様々な感情を持った人の目の部分が切り取られている。

男性は、目の写真から、その人の感情を推測してもらう。
そのスコアを、オキシトシンを投与した人としなかった人で比較。

結果:
オキシトシンを投与した人のほうがスコアが良かった。
(p<0.02。ただし70点と75点の差なので、「有意」であっても「劇的」ではない)

アーティファクト対策:
オキシトシンを投与したグループと偽薬のグループそれぞれに、
投与後に「興奮」「覚醒」「気分の変化」がなかったかどうかをアンケートで調査。
両者に差はなかった。


以下、本論分を読んだ感想。

1) なぜ被験者が男性だけなのだろう?
自閉症は男性の方が圧倒的に多いからだろうか(およそ4:1)。

むしろ、男性の方に多いからこそ、オキシトシンの
効果の男女差も比較可能だったのではないかと思う。
(そこから言えることは少ないかもしれないが)

2) オキシトシンは「相手の考えていることを推測する能力」も向上させるのか?

本論では、オキシトシンは顔認知に関わっているのではないか、としている。
顔認知はせいぜい「感情」の推測であるのに比べ、
「相手の考えていることを推測する」ことはかなり高度である。

たとえば自閉症の人に「サリーとアンのテスト」をしてもらい[2]
結果に差が出るかどうかを調べる方法もあろう。

このテストで差が出なければ顔認知のみに問題があるのだろうし、
差が出れば、顔認知よりも包括的な何かが働いている可能性が示唆される。

3) 他の分子との関連は?

この論文や、関連するレビューを読んでいると、オキシトシン関連の研究で自閉症のしくみが解けるかのような感触を受ける。

実際にはそこまで単純ではあるまい。
オキシトシンの他に、FoxP2, Neuroligin 3, Neuroligin 4,の変異による
研究も盛んなので[3]、これらの遺伝子との関連も知りたいところ。

Neuroliginなどは、性染色体に存在するため、
自閉症に男女差があることとの整合性がある。

しかも、Neuroligin4はヒトとサルにしかない
遺伝子であることからも注目を浴びている。

オキシトシン関連の実験はマウスなどでも行われていたので、
自閉症を「ヒトに特有の症状」とみなすかどうかによって
どちらの整合性が高いかの議論は分かれる。
(両方正しい可能性もあろう)

FoxP2変異は第7番染色体の異常から見つかったので、
オキシトシン関連の遺伝子も遺伝子座を調べてみた。

オキシトシン受容体=第3番染色体
CD38=第4番染色体

・・・あまり関係がなさそうである。
もしかしたら自閉症の人たちに、7番だけでなく
4番にも変異があるのかもしれないが。


最近、オキシトシンと自閉症についてのみ語られたレビューが出たので
余裕があればまた読んでみようと思う。
(Eric et al, Oxytocin, vasopressin and pair bonding: implications for autism, 2007)

<補足>

[1]自閉症

最近は、アスペルガー症候群などと一緒に「自閉症スペクトラム」と呼ばれるようになってきた。
ただし現在でも、自閉症・アスペルガー症候群ともに厳密な定義が存在しない。


[2]相手の心を読む
人は通常、「相手の立場になって考える」ことができる。
倫理的な意味ではない。
「相手が何を知っていると思うか」というレベルの話である。

有名なのは「サリーとアンのテスト」。
これは、次のような4こまマンガを見せるテストである。

1) サリーとアンが人形で遊んだ後、二人でおもちゃ箱の中にしまった。
2) サリーが部屋から出て行った。
3) アンが、人形をおもちゃ箱からベッドの下に隠した。
4) サリーが帰ってきた。

ここで質問をする。
「サリーは人形で遊ぶためにどこを見ますか?」
4歳以上の健常児は、この質問に「おもちゃ箱の中」と答える。
サリーの考えていることを推測できるからだ。

自閉症の人はこれができない。
「ベッドの下」と答えてしまう。

[3]FoxP2, Neuroligin
自閉症の人の遺伝子解析することによって特定された遺伝子。
(実験はスウェーデンで行われた。日本では難しい)

FoxP2は「文法遺伝子」とも言われ、この解析以前に
文法に障害がある人から見つかっていた遺伝子である。
自閉症の人にも言語障害が見られるため、注目を浴びた。
反論もある↓
FOXP2 is not a major susceptibility gene for autism or specific language impairment.

Neuroliginは神経同士をつなぐタンパク質である。
この遺伝子に変異があるからといってシナプス形成が完全に阻害されることはないが(だとしたら生きていけない)
何らかの形で関わっているであろう可能性は高い。

このあたりの話は『生命に仕組まれた遺伝子のいたずら』という本に、一般向けにわかりやすく書かれている。(ただしこの人の本は少々遺伝子に偏りすぎな印象は受ける。遺伝子で生理の全てが解けてしまうような錯覚を受ける)
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コメント

自閉症スペクトラム障害では,早期脳幹発達の制御に関与する遺伝子が重要らしいね。
X染色体や,15番染色体,7番染色体の遺伝子の関与もあるみたいだけど
FoxP2って初めて知りましたー★勉強になります♪

>のっち

コメントThanks☆

15番染色体異常はATP10Cのことかな?
複数あるのかもしれないけど。
ATP10Cは自閉症の数%にしか異常がない模様。
どこまで自閉症の一因と見るかは難しい問題です。

FoxP2は有名なので今後も聞く機会があると思う。
今週のnatureにFoxP3の論文があったけど、これとは全く無関係でした。

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【論文】CASPS2遺伝子と自閉症の関係

CADPS2遺伝子が自閉症の原因の一つかもしれないSakata et al, Autistic-like phenotypes in Cadps2-knockout mice and aberrant CADPS2 splicing in autistic patientsJCI March 22, 2007理研の研究ということ

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