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【BOOKS】『脳の話』:脳科学のいま、むかし

脳の話 脳の話
時実 利彦 (1962/08)
岩波書店

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「一つ一つのネウロンの働き方については、かなりはっきりしたことがわかってきた。
しかし、脳が働いて精神活動を営んでいるときの、ネウロン連鎖における活動パタン形成については、ほとんど何もわかっていないといってよい。
ネウロン連鎖があまりにも複雑なためである。」

これは約半世紀前に出版された本書の一説。

以下は、2007年に出版された『進化しすぎた脳』(池谷裕二著)の一説。

「神経細胞も間違いなく『複雑系』で動いている。
1個の細胞だったら、きれいに数式で記述できる。
でも、これがたくさん集まったらどうなるかわからない。
実際、神経回路のモデルを作ってシミュレーションすると、思いもよらない様々な現象が起こり得るんだということが今わかりつつある。
今の脳科学というのはまだまだそんな段階なんだ。」


ほとんど言っていることが変わらない。


確かにこの半世紀の脳科学の進歩は目覚しい。

これは生理学的な進歩に限らない。
『脳の話』に出てくる方の「複雑」の意味と、
『進化しすぎた脳』に出てくる「複雑系」の意味は異なる。

複雑系という概念が誕生しただけでも大進歩ではある。
しかし要するに複雑系は「よくわからん」ということを数式化しただけとも言える。

大局的には、この点においてまだスタート地点のような感覚は受ける。

たとえるなら
“光速はとんでもなく速いけれども、宇宙の大きさらか見れば遅々としたもの”
という印象。

脳という小宇宙の全貌を見渡せるのはいつの話なのやら。

半世紀前と言えども、問題意識は現在と変わらないことがわかる。
目次には、
「言葉をしゃべる脳」
「記憶し、学習する脳」
「意識を支える仕組み」
など、現在の一般向け書籍にも並ぶ言葉が羅列されている。


学問の進化の過程を見るのも楽しい。
生き残るもの、淘汰されたものが現在の視点でわかる。

記憶の研究に関しても、当時はまだLTPが発見されていない。

「なぜシナプスでの伝達効率が良くなるのか」という問題提起に対して、
1) 神経細胞を刺激するとRNAが増えるから、タンパク質が関係しているのだろう
2) シナプス活動に関係しているグリア細胞で説明できないか

など、いくつかの説が提唱されている。


1)はまさにNMDAR発見の前兆といえる。
研究者たちがどういった思考を経て実験を行ってきたのかがわかって楽しい。

2)も、別の意味で興味深い。
「今でこそグリア細胞が脳の研究において注目されるようになったが、昔は無視されていた」
と聞かされていたが、当時から注目していた人がいたことがわかる。




「神経細胞は壊れても、決して再生しない」
この記述は、一回ではなく何度も出てきて強調されている。

現在では神経細胞も再生しうることがわかっている。

教科書を鵜呑みにしてはいけないということも気付かされて良い勉強になる。

内容自体よりも、学ぶ方法について学べることの多い本だった。
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