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【BOOKS】『カオス的脳観』:脳を "理解する"とはどういうことか

『カオス的脳観―脳の新しいモデルをめざして』
津田一郎著 サイエンス社 1990

脳、というよりニューラルネットワークにおけるカオス性について、
その「考え方」が解説されている。

カオスに疎くても、カオスが脳に関わるであろうことは視覚的にわかる。
ローレンツアトラクタの二次元抽出グラフが
ニューロンのスパイクの形に似ていたり
するから。

少し古い本で、「いまさらカオス?」とも思う。
しかし現在では、脳が複雑系であることは前提とされているものの、
その先が見えない状態であろうと思われる。
本書に紹介されているように、「嗅球にカオスが見られた」とわかっても、
その先に何が待っているのかよくわからない。

それでも近年、ノイズと思われていたニューロンの自発発火
規則性やオシレーションが見出されるようになったと併せ、
複雑系とカオスは常に頭の片隅に置いておきたい概念なのである。


『脳観』と題されるように、実際に脳のシステムについて
言及されるのは200ページ中50ページ程度で、
前半100ページはカオスの解説、
最後50ページは「脳を理解するとはどういうことか」という点で議論が進められる。

カオスを抜きにしても、最後の「脳の理解とは何か」という点は興味深く読める。
どのアプローチを取れば「脳を理解できた」と言えるのだろう、
という悩ましい問題をよく表象してくれていた。

私はこれまで、脳のモデルを数学的に解こうとする人たちは、
「実在する脳が実際にどうなっているか」はどうでもいいと思っている、と思っていた。

実際、「ニューロンがどうなっていようと、脳を介した入力と出力が
モデルと合致すればそれで解明されたというのだ」
と言う人もいる。

しかし、そうは思っていない人もいるようだ。

著者の津田一郎氏もその一人で、
「脳に近いものができればいい、という考え方は、
『脳の解明が進まなくとも有用であればいいではないか』
という逃げ道
を用意してしまう」と言っている。

クリックも同様の批判をしているらしい。

よって「脳生理学や分子生物学も決してないがしろにしてはいけない」と。
(生理学者から見ると「ないがしろにしてはいけない」というレベルなのか、と思われるだろうが)


著者によれば、人工知能研究者は「ニューロンの理解から順に
システム全体を理解していくのは大変気の遠くなる話である。
だからこそ、脳の解剖学的、生理学的側面には目をつぶってきた」そうだ。


出版当時から約20年が経った今、神経科学者たちが
その「気の遠くなるような作業」を本気で進めようとしているのには恐れ入る。

むしろ神経学者たちは、「頭の中で解明しようとすることこそ無謀な挑戦であり、
解明のためには脳自体を観察せざるを得ない」と考え始めたのかもしれない。

『意識の探求』の著者、クリストフ・コッホ曰く;
「頭の中で哲学者のようにごちゃごちゃ考えていたって、
理屈で意識の謎が解けるわけがない。
脳はあまりにも複雑なんです。

進化の過程でものすごい数の偶発的出来事を通じて現在の
複雑な脳が出来上がったから、理屈が通用しない部分すらあるんです。
むしろ今は、観察事実を積み上げることが必要でしょう」


ただし津田氏は、
「脳生理学や分子生物学の結果だけで脳が”理解される”とは思えない」
とも続けている。

「これらの学問で得られる局所的なデータは、
全体から切り離すことによって意味を失うような、
認知活動の断片に過ぎない」
からとしている。


かなり私の現在の見方に近いが、著者のように
「すべてのものはカオスから生まれる」
と言えるほど複雑系に傾倒もできない。

自分なりの「脳観」を確立するにはまだまだ勉強(と実験)が必要になりそうだ。




ちなみに津田氏が『複雑系入門』のコラムで書いている
学生向けアドバイスでは、著者の学問に対する姿勢が垣間見える。

「学生の頃は研究のために集中できる時間が十分あるはずなので、
24時間研究のことを考えること。
集中力を持続させることが何より肝心。

どんなに小さいことでもよいから特徴を出すこと。
たとえば『リアプノフ指数のだれだれ』と言われるように、
定冠詞がつくように特徴を出すことが必要」

頑張ります・・・。


(→本書の「脳とカオス」本論についての所感はこちら)
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