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一流の条件とは。【BOOKS】『物理学は越境する』

物理学は越境する ゲノムへの道 物理学は越境する ゲノムへの道
和田 昭允 (2005/08/24)
岩波書店

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日本のゲノムプロジェクトを率いた著者が、
日本の研究体制に対する批判と、研究者に対するエール
自伝の形でまとめている。

一流研究者は、レフェリーの半分くらいはアホだと思っていて
真正面から論争し教え説得するのが普通、というのがハーバードで習ったこと」

といったように、本文の中には「無能な科学者」に対する批判が
ちりばめられている。

加えて、小柴昌俊氏を筆頭に、著者の和田氏を絶賛する
「和田先生紹介コラム」が大量に載せてある。
宗教的な崇め方と思わせる文章も少なくない。

これらの要素により、最初は読んでいて
「そりゃ無能な研究者もいるかもしれないけど、自分はどうなの?」
「自伝に自分を賞賛する文章を入れるか?」
と、かなり抵抗を持ってしまった。

しかし読み進めるうちに、逆にこちらが和田氏の「信者」になりかけてしまった。

確かにこの著者の能力は桁違いなのであろうことが伝わってくる。

母方の曽祖父は木戸孝允、
父方の曽祖父は西園寺公望の弟、
父親は東京帝国大学の教授。

幼い頃から自然に英才教育を受けていた著者にとって、
この能力は「自然」であるが故に、他の研究者たちが「不自然なまでに無能」に
感じることが多かったのではないかと思った。


和田氏は、英米でのワトソンやクリック達と同様に、
日本で生物学に物理学を持ち込んだ人物である。

英米は物理学を生物学に持ち込むことがスムーズに進み、成功を収めたのに、
日本で物理学を生物学に持ち込むことがいかに困難だったのかを教えてくれる。

日本人が開発した世界初のDNAシーケンサー技術は、
日本政府が自らの手で特許を取り下げた。


またゲノムプロジェクトに対しては
「これはサイエンスではない」
「人間がやれることをなぜ機械にやらせるのだ」
などの理不尽な非難を浴びた。

日本がイニシアティブを取れるはずだったのに自滅した例の数々が紹介されている。

アメリカが日本の分子生物系プロジェクトを徹底的に
押さえ込もうとしていたくだりを読むと、少なくとも
アメリカが恐れるほどに日本はこの分野のリーダーになり得たことが伺える。


そんな著者が、60年の研究生活で多数の一流の人間から
教えてもらってきて自然と悟った、「一流の人間」としての条件が以下の7つ。
1)自分のビジョン、価値観、使命感、理念の明確な表明、論理的な明快性、公開性と透明性。

2)相手の波長との同調を許す広帯域感覚。

3)率直な議論。権威、身分、地位は無関係。
上への「へつらい」と下への「威圧」は、それ以外に手段を持たない三流人のすること。
科学の議論に負けても人格の失墜にはならない。

4)異質(未熟を含む)なものに対する許容性は独創・発展の必要条件。
長所を見つけて伸ばす積極性。
少数の異端者を許容することが種の繁栄に必要であることは生物学が教えている。

5)高く広い総合的視野と戦略性を持っての目標の設定能力。公正な判断。

6)複数の対象に対するバランス感覚。

7)共同作業における動機付け能力。人を動かす力。



2/19日発行の『日系ビジネス』には田中耕一さんのインタビューが載っているが、
そこでも「分野を超えて考えること」の重要性が強調されている。

そこには、自伝『生涯最高の失敗』に書かれている有名な一節、
「『もったいない』と思ったから成功した」というエピソードの
裏話(本音)も書かれている。

あれは、わかりやすくするためにそう書いただけであって、
実際にはもっと考えていたらしい。

マトリックスの発想は、ビルの壁の「電波吸収剤」からヒントを得たそうだ。


うちのラボのボスも最近、とある雑誌の寄稿で
「業績に対する公正な判断が必要」
「審査員の能力が問題になってくることもある」
と書いていた。

学生と対等の関係を望んでいることや、
幅広く学問を俯瞰することを推奨しているのも和田氏と同様。


一流の人間の考えることはみな似通ってくるのだろう。

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コメント

初めまして!
訪問履歴からおじゃましてみました。
「この科学者がすごい!」のメシダと申します。

「一流の人間の条件」、大変に参考になりました。
特に、3)は身にしみます。
私が日々苦しんでいるのが、それです。
中国文化圏(儒教の影響を受けている国々)では、
どうしても年功序列的価値観がでてきてしまうようです。
欧米へ留学して、その価値観を捨ててきてくれた先生は
そうでもないですがね。
(宣伝みたいになってすみませんが、
私のブログの江崎玲於奈博士の紹介にもあります。)

和田先生の本も、読んでみたいです!

>メシダさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

私も「率直な議論」はなかなか苦労しています。
今のところ、教えてもらいに行くのにも勇気が必要な状態です。
もっと勉強してまともな議論ができるレベルになれば
少しは議論もできるかと思うのですが。

年功序列の問題には全く同感です。
たとえお互いにフランクな関係であっても日本語は敬語の問題があるため
どうしても英語よりも対等な議論が難しくなる側面もあると思っています。

江崎さんのエントリー、僭越ながらコメントさせていただきました。

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