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博士進学の理由【BOOKS】『科学者になる方法』

科学者になる方法―第一線の研究者が語る 科学者になる方法―第一線の研究者が語る
科学技術振興機構プレスルーム (2005/01)
東京書籍

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「科学者になる方法」系の本は、著者一人のみの視点で書かれていて
とにかく偏りがちであるが、本書は36人の研究者のインタビューがあり、
全体としてかなりの中立性が保たれている。
全員「研究楽しい!」という点で一致。

実に半分の18人が生命科学系なので、生命科学を目指す者としては動機付けになる。

ただ、「彼らがどのような思考経路を経て博士課程進学を決めたのか」
ということを知ろうとして読むと、ほとんど役に立たない。

ほとんどの人が「研究がおもしろそうだったから」程度のことしか書いていない。
もしくは「最初は研究をやろうと思っていなかった」という人もかなりいる。

本書は「研究生活の厳しい側面」については書かれていても
「研究者になる上での厳しい側面」については底が浅い。
その意味で本書のタイトルはミスリードである。

近藤寿人さんは例外的に「将来が不安だった」と書いており、
「もしものために教職のための単位をとっていた」と書いている。
(ただし教師の門も狭い)

好感が持てるのは高濱洋介さん。現状をかなり理解している。

「ポスドクの待遇は改善されてきましたが、助手のポストは減っています。
つまり受け皿がないんです。
最近は大学のシステムも変則的になっており、キャリアパスが見えにくい。

こういった雇用不安定やキャリアパスの不安定さが、研究者を目指す若い芽を摘んでいないか心配です。
これらの問題を解決する国家的政策が必要だと思います。」

ここまで理解している人から、
「自分の心の声に従って選んだ道なら、きっと後悔することはないはず」
と言われると若干安心する。

(しかしブログ上で「後悔」している方々は一応「心の声」を聞いたはずで・・・)

キャリアパス的にかなり親近感が持てるのは北野宏明さん。

専攻は生命システム。
ICU(国際基督教大学)卒業後、日本電機に就職し、京大で博士取得。

何が親近感って、専攻と大学はもとより、
「大学では物理と英語ディベートに漬かっていた」という点。

私も物理が好きで大学に来て、大学では英語ディベートに漬かっていた。
ICUの強さもよく知っている。

残念ながら「ディベートが研究に役立った」とは一言も書かれていないが。

そして、一度就職を選んだ理由は
「私が学生の頃は、大学で学問を修めてからでは民間への就職は無理だったが、その逆は可能だった」からだそうだ。
考えさせられる。


全体に、意外に「いったん就職→アカデミア」の経路が多いことがわかる。

「今では論文博士の制度が消えつつあるから、研究したいなら就職しちゃダメ」という声も聞く。
けれども結局、論文博士制度は残った。
(かなりの反対に遭ったらしい)

アカデミアを目指すにしても、キャリアパスの多様性は考えてもいいかもしれない。


ネガティブな将来像を見せ付けられたときに読むと元気の出る本の一つである。
精神安定剤としては役に立つ。


以下、各研究者が何を思って博士進学を決めたかを一覧表にしようとして挫折した図。
さすがに面倒だった。


原享和
専門:光触媒
大学:東京理科大学理学部 東工大電子科学博士課程修了
博士進学の理由:科学の不思議さと人を救う力強さに惹かれた
現職:企業→東工大。
一旦企業に行った理由は「自分ができそうなものがある」のと「会社を知りたかった」から
メッセージ:「オレと一緒に人類を救おうぜ!」

北川宏
専門:水素エネルギー
大学:京都大学理学部卒業 京大理学研究科修了
博士進学の理由:マスターの時に大発見をして、もっと続けたいと思った。
現職:九州大学教授
メッセージ:「大学4年間で「夢」を見つけろ」

竹内繁樹
専門:量子コンピュータ
大学:京都大学理学部卒業 京都大学理学研究科修了
博士に進学しなかった理由:家庭の事情と、社会に出たいという意識。
現職:三菱電機基礎研究部→北大教授
メッセージ:「研究が役に立つかどうかではなくて、好きかどうかで決めたほうがいい。研究者になるかどうかは学部で、基礎研究者になるかどうかは修士でじっくり悩んでください。」

今井浩
専門:量子情報
大学:東大工学部卒業 東大工学研究科博士課程終了
博士に進学した理由:おもしろそうだったから。
現職:東大
メッセージ:「科学に興味があるなら是非前向きに研究し、ものを作る楽しさを感じてほしい」

中小路久美代
専門:ソフトウェアシステム
大学:大阪大学卒業
院に進学しなかった理由:研究のイメージが沸かなかった。
現職:SRA。研究者になろうと思っていたわけではない。コロラド大でPh.Dを取得後、東大に就職。
メッセージ:「相手の立場に立って物事を考える能力を身につけてください」

酒井邦嘉
専門:言語脳科学
大学:東大卒業 東大理学研究科修了
博士に進学した理由:一般相対論がこの上なくおもしろいと感じたから。
現職:ハーバード→MITを経て東大。
メッセージ:「うまくいかないときにも耐えられる自信と、自分を甘やかさない厳しさを持ってください」

岡ノ谷一夫
専門:脳科学
大学:慶應義塾文学部卒号 メリーランド大学博士課程修了
博士進学の理由:? 日本の院に行かなかったのは「失恋して院に落ちたから」
現職:千葉大学教授
メッセージ:「自分探しよりも自分作り。どうせいまは空っぽなんだから、作ることの方が重要」

近藤寿人
専門:発生生物学
大学:京都大学理学部卒業 京都大学理学研究科博士課程修了
博士進学の理由:研究者になりたいと思ったから。けれども不安があったので教職の道は用意した。
現職:大阪大学教授
メッセージ:「大学院で一生懸命研究すれば自分の適性が見えてくる」

適正がわかる前に就活の時期が来るのが問題ですね。


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コメント

HILOKIさんは、ディベートをやっていたんですか。
どおりで、論理的で簡潔な文章をお書きになるわけだ。

これからも、読ませていただきたいのでリンクさせていただきますね。

ちなみに、私の博士課程進学の理由は、修士後に就職した際、「テクニシャン」という立場に満足できなかったからでした。
頼れる上司も、先輩もいない中で、自分は何をやったらいいかわからなくて(能力がなくて)、とてもくやしかったのです。
あの時、優秀な上司の下で、何も考えなくても結果を出せていたら、満足してしまったかもしれない。
テクニシャンは1年間。
その後、徹底的に勉強し、トレーニングを受け直そう!と進学して、本当によかったです。

私は就職がこれからですから(アカデミック希望)、まだ気楽なのかな?
でも、この業界の実情を知っていても、進学した後悔はないです。
サイエンスが楽しくてしょうがないから!



>メシダさん

リンクありがとうございます。
こちらもリンクさせていただきました。

博士に行って良かったという生の声を聞けると励まされます。
私も現在、全く何の技術も身につけていない状態ですので、
せめて何か『自分はこれができる』という何かを身につけたいと思います。
早く論文も書きたいですし。

またいろいろなお話をブログ上で拝読できるのを楽しみにしています。

P.S.
メシダさんのブログから、アマゾンで”Rhythms of the Brain”を購入いたしました。
今後も利用させていただきます。

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