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『脳トレ』ブームと川島隆太さん

Nature Neuroscience に、『脳トレ』ブームに対する警鐘が掲載されていました。
(Exercising to keep aging at bay)
(参考:Shuzoさんのエントリー

英語で『脳トレ』は “Brain Games” “Brain Gyms”
などと称されている模様。

内容は、「脳トレにどれだけ効果があるかはわかっていない」という至極普通の論調。

「まず動物実験。
刺激の多い(enriched)環境では脳の老化が遅くなると言われる。
しかし人類はゲームを手に入れる前から、実験動物より
刺激の多い環境にいた
わけで、これ以上の刺激が
どれだけの効果をもたらすのかはわからない。」

言い回しがおもしろい。
確かに実験動物の「enriched」な環境は、人間の環境よりもずっと狭い。

たとえば、「フクロウは、幼少期に刺激の多い環境で育つと、
視覚の臨界期が消えたかのように振舞う」
という論文があります。
(Brainard, et al,Sensitive Periods for Visual Calibration of the Auditory Space Map in the Barn Owl Optic Tectum ,J. Neurosci, 18, 3929-, 1998)

この実験のnon-enrichedとは鳥かごで育てたフクロウ、
enrichedとは鳥小屋で育てたフクロウを意味します。

実験系のenrichmentなんてせいぜい鳥小屋。
確かに、人間へどれだけ応用できるかわかりません。

natureの記事はヒトの脳に関しては次のようなコメントをしています。

「ヒトの場合でも、認知レベルは多岐に渡るため、
クロスワードパズルなどで老人が独立した生活を送れるようになるかはわからない」

「今のところ、財布が寂しくなること以外に害はなさそうだが、
おばあちゃんには『脳トレ』よりも散歩や社会活動を勧めたほうがいいだろう」


欧米でも脳トレは相当のブームらしく、
New York Times, Washington Post, Herald Tribuneの主要三紙に
脳トレの記事がありました↓


New York Timesの記事川島さんのゲームが写真つきで出ています。
Syuzoさんのブログに日本語の解説があります)

Washington Postの記事
「(ヴァージニア大学のティモシー教授の話)科学的に因果関係を
証明するためには、脳トレをするグループとしないグループを
ランダムに振り分けて、指定された生活を10年ほど続けてもらう必要がある。
しかしそんなことは不可能だ」

「しかし私は脳トレに完全に否定的なわけではない。
私が言いたいのは『まだ脳トレの効果はわからない』ということであって、
本当に老化を防ぐ可能性もある。楽しいならとりあえず楽しめばいい

このあたりの論調はnature neuroscienceと同じ。

International Herald Tribuneの記事
「5万円以上する脳トレのソフトが400万人に売れた」

「老化を防ぐ目的なのに、健康な脳の人のほうがそうでない人よりも脳トレに熱中している」


私は昨年と今年、オランダ、アイルランド、カナダに行きましたが
確かにどこの書店にもSUDOKU(数独)が溢れていました。

発祥地の日本にはあまりないのに。
北京にもありませんでしたけど。
西洋受けするパズルなのでしょうか。


私としては「頭が良くなりたいから脳トレ」という人の戦略がよくわかりません。

頭が良くなりたいのなら勉強したらいいのでは?
脳トレに劣らないほど頭をフルに使うはずなのですが。

あと、「受動的なゲームよりは能動的なゲームの方がいい」
ということには賛成なのですが、
『脳トレ』程度の能動性ではまだ軽いと思います。

通常のゲームも脳トレも、「解答が決定されている」という点で閉じた世界です。
与えられたゲームを消化するだけという点であまり能動的に見えません。

どうせなら、
「自分でクロスワードパズルを作る」
「自分で新しい『脳トレ』ゲームを考える」
「自分で新しいブームを作る」

くらいの能動性があっていいかと。

これらの問いは全て解答が存在しない開放系で、
ゆえに頭の上手な使い方を大いに要求されます。
「必ず解ける良問を作る」ことはとても難しいことに気づきます。

nature の言うように脳トレはお財布が空っぽになりますが、
脳トレを作る側に回ればお財布が膨らむという得点つき。

(実際、クロスワードパズルは解いて応募するより
パズル自体を作って応募した方が儲かります


脳トレブームの行き過ぎは火付け役の川島隆太さん本人も危惧している様子。
しかし、日系ビジネスの記事(2/19刊)を読むと、
世間の誤解は「想定内」だったという印象を受けます。

以下、その記事の一部を引用。
(太線は引用者)

「僕が大学での研究成果を社会に還元する取り組みである、
一連の『脳トレ』ブームに関しても世間の誤解があって。

たとえば、脳を鍛えることを自己目的化してしまう人たちがいるんです。
これは当初から予想できたとはいえ、一番行って欲しくない方向です。

僕は本当は、子供たちに『学校で胸を張って勉強しろよ』と言いたくて、
今の活動をしているんです。

脳を高める方法をたくさん知っていても、読み、書き、計算しか
世の中に見せていないのもそのためです。

算数や国語をやるのは先人の知恵を学ぶという、
本当に大事なところがある。
ただ、それだけじゃなくて、最も効率的に、大事な脳の
機能を高めていることになるんだよ、ということを教えたい。」

世の中と関わる時に、相手が受け取れる球を投げないと
意味がありません。
だから今まで、「脳を鍛える」という
取りやすい球だけをそっと投げてきました。」

「確かにいろいろな誤解はあります。
でも、その中で『読み、書き、計算って意外といい。大事じゃないか』
ということを大人たちが知ってきた。
それが今、子供に徐々に浸透してきているんです。」

「そこで今、次の球を投げているんです。
それも、やはり直球じゃ取れないので、
『脳トレというのは目的じゃない。手段でしかないよ』という球を。」

僕は戦略的に、『誤解を甘受してでも、
とにかく最初にみんなに知らしめて、それから誤解を解いていく』
という方法を選択したんです。

今の世間全体を考えたときに、物事を受け取れる能力って、
すごく限られますから」

(引用終了)

「世間の誤解は戦略の一部」とはなかなか言えません。
これだと世間の誤解の責任は自分にあると言っているようなものです。

「あるある大事典」のようなことが起きたらどうするんでしょう。



あと、「勉強の楽しさをわかって欲しい」という姿勢には共感します。

特に小中学校は(あるいは高校でも)「勉強→かっこわるい」
という図式が成立していますからね。

やっていることが同じなのに、
『脳トレ』というコンセプトだと認められるなら
「小学校」なんて名前をやめて
「脳トレ:ステージ1」みたいにしたらいかがか。
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川島隆太

川島隆太川島 隆太(かわしま りゅうた、1959年5月23日- )は、千葉県出身の医学者である。東北大学未来科学技術共同研究センター教授を務めている。略歴*1985年東北大学医学部卒業。*1989年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。*1991年スウェーデ

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