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【論文】グリアによるグルタミン酸放出がシナプスを強化する

久しぶりの論文紹介。
やはりまだ背景知識がなさ過ぎて読むのに時間がかかります。
一日に何本も論文を紹介しているブロガーの方々には感服します。

『アストロサイトからのグルタミン酸放出がシナプス結合を強化する』
Glutamate exocytosis from asrocytes controles synaptic strength
Jourdain et al, nature neuroscience, 8 Mar 2007


私の関わる実験がアストロサイトに直接関係するので
この分野には関心が高い。

【この論文の意義】
従来、神経終末から出るグルタミン酸の中で、後シナプスに作用しないものは
「横に漏れているだけの無駄なグルタミン酸」と思われていた。

本実験は、この「横漏れしている」グルタミン酸は無駄ではなく、
アストロサイトを介してシナプス結合を強化している
可能性を示している。


【コンテクスト】
昔は、神経の働きにおけるグリアの役割は「脇役」だった。
しかしここ10年で、グリアは神経系においてもっと「主役」に位置づけられるべき
なのではないかという話になってきた。

この研究以前に以下のことがわかっていた。

・アストロサイト内でCa濃度が上がるとニューロンのmEPSCの頻度が上がる。
(この経路にはグルタミン酸受容体のNMDAサブタイプが関わることもわかっていた)

・海馬では、このアストロサイトに依存するシナプス結合強化には代謝型グルタミン酸受容体の活性化が必要である

・アストロサイトからのグルタミン酸放出はGABA作動性の情報伝達に関わる。

・アストロサイトのATPがシナプス抑制に関わる。

本論文は、以上の「関係がある」程度の理解を、
かなりの程度まで一本のシナリオでつなぐ意味を持つ。

【実験結果と、そこからわかること】

海馬の「貫通繊維―顆粒細胞シナプス(PP-GC synapse)」における
アストロサイトとニューロンの関係を調べている。
(解剖学的に有利であることと、電気生理をやりやすかったから)

実験1
アストロサイト内のCa濃度を上昇させると、顆粒細胞において、
AMPA受容体を介した後シナプスの電流が上昇した。
さらに、TTX存在下でアストロサイトを活性化させると、
mEPSCの頻度は高まったものの、電流の振幅は上昇しなかった。

よって、アストロサイトが作用しているのは前シナプス側だと示唆される。

実験2
tetanus toxinでアストロサイトのエキソサイトーシスを阻害すると
アストロサイト脱分極由来のmEPSCの頻度は上昇しなかった。

よってアストロサイトは小胞を介してシナプス結合を強化させているとわかる。

実験3
イフェンプロディル(NMDA-R阻害剤)を投与すると、シナプス結合が強化されなかった。

よって、アストロサイトから放出されたグルタミン酸は
前シナプスのNR2Bサブユニットに作用している可能性がある。

実験4
アストロサイトはP2Y1受容体を標識することでも強く染めることができる。
P2Y1受容体はATPで作動し、またGタンパク共役型受容体でもある。

貫通経路を刺激するとアストロサイトでのCa濃度が上昇するが、
P2Y1受容体を阻害するとCa濃度も上昇しない。
代謝型グルタミン酸受容体を阻害しても同じ結果になる。

加えて、貫通線維の刺激がなくとも、P2Y1受容体の阻害は
アストロサイトの自発的Ca上昇を阻害する。

よって海馬では基底状態でもATPが放出され、
近くのアストロサイトを興奮させていることが示唆される。


実験5
今度は実験4と逆に、P2Y1受容体の機能を高めてみた。
2MeSADPというagonistを使用すると後シナプスの自発発火による電流の頻度が高まった。
この現象は、NMDA-R阻害剤やCaキレート剤を入れると起きない。


まとめると、これらの実験は次のような経路を支持する。

1) 貫通線維に活動電位が流れると、グルタミン酸が放出され、同時に
P2Y1受容体を持つアストロサイトがATPによって活性化される。

2) アストロサイト内のCa濃度が上昇する

3) アストロサイトがグルタミン酸を放出し、プレシナプスのNMDA-R(NR2B含む)に作用する

4) プレシナプスによるグルタミン酸の放出を加速させる→結合が強まる



【今後の展望】

・貫通線維に刺激を与えてから、mEPSCを観測できるまでに、
比較的長いインターバルがあるのは、何か重要な意味があるのだろうか。

・グルタミン酸の放出から、ATPによるアストロサイトの
P2Y1Rへの作用機構・経路が全く不明。

そもそもATPはどこから来ているのだろう?
プレシナプス?他のアストロサイト?

・アストロサイトによるATP放出が他のアストロサイトの
ATPやCa上昇につながっているとしたら、
広範囲のヘテロシナプスに作用しているかもしれない。

となると、てんかん・アルツハイマー・記憶など
研究にも貢献するんじゃない?


<便利な英語表現集>
It is tempting to speculate that ~
~みたいなことが起こってたらおもしろいな(まだ妄想の段階だけど)。

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