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安楽死の意思をコンピュータで決定する

今週の The Economistより。

テーマは「安楽死の意思はコンピューターに調べさせるべきか」

(The Economistは経済紙でありながら、政治・経済のみならず脳科学からダークマターに至るまで幅広い科学の話題も扱う素晴らしい雑誌です)

副題を見た瞬間、「おお、確かに脳を調べれば死にたい意思とかわかるかも!」
なんて思ってしまいました。


内容は脳と関係なさそうで、clinical criteriaを基にして
患者の意思を予測しようというものらしいです。

具体的な変数が書かれていなかったのが残念。

実際に昏睡状態に陥りそうな人も含めて(!)患者の意思を
患者の家族とコンピュータの二種に予測させたそうです。

結果は、
家族が正確に予測できたのは68%だったのに対し
コンピュータは78%の正確さで予測したとか。

開発者は「もっと変数を増やせば88%まで精度を上げられる」と言っています。



日本みたいに「家族の “生きていて欲しい”という意志」の話が出てこないのはさすが欧米。

ここで言う「家族の意見」とは「患者に生きていて欲しいかどうか」ではなくて
「患者はどう思っているかどうかを知っているかどうか」という点にあります。
つまりあくまで安楽死の決定権は患者の個人意思にある。

ディベートの国際大会でもこの視点のずれのせいで
日本人ディベーターはよく審査員を混乱させます。

というわけで欧米の場合は個人の意思さえわかればOKという雰囲気があり
日本よりは状況が簡単ではあります。


しかし「昏睡状態の人」の安楽死をどうするかは欧米でも当然問題になるわけでして。

この記事には脳の話は出てきませんでしたが、
そのうち必ず出てくることになるでしょう。

「昏睡患者にも意思がある」ことをfMRIで示そうとした論文もあります。
Detecting Awareness in the Vegetative State, science, 2006

これはある単語を聞かせたときと他の単語を聞かせたときで反応が異なるという論文。

速攻で反論があって、「それはただの反射的な神経活動であって意思の存在を意味しない」とされました。

さらにこの反論に反論するため、他のチームが昏睡患者に
テニスのテレビゲームをさせたりして、熱い論争が繰り広げられています。

この論争は見守るとして、
もしやこの「患者の意思」を示そうとした人たちは、
最終的には研究の意図が裏目に出るのではないかと思ってしまいました。

研究に研究者の希望が入るべきではないのですが
おそらくこの「昏睡患者にも意思がある」ことを示そうとした人たちは
「だから植物状態の人もむやみに生命維持装置をはずしてはいけない」と
言いたかったのだと思います。
(Discussionの部分からそんな雰囲気が伺えます)

しかし、患者の自由意志がわかってしまうということは
患者の「もう死にたい」という意思もわかってしまうことを意味し、
安楽死が合法な地域ではむしろ患者の死を助長させるのではないかと。

もしかしたらその研究者たちの意図は「殺しちゃダメ」ではなく
「他人の意思で殺しちゃダメ」ということだったのかもしれず、
それなら問題ないのですが。


結局、脳科学がいくら進歩しても
「個人の意思をどこまで尊重すべきか」などの根本的な問題は
まったく解決されてはいない(むしろ顕在化する)とわかります。
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