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【論文】脳の初期状態のBOLDシグナルはサルにも見られる

サルの無意識状態でのBOLDシグナルはヒトの初期系と同じ振る舞いを見せる
Vincent et al, Intrinsic functional architecture in the anaesthetized monkey brain.
Nature 447,3 May 2007, pp83-

脳のエネルギー消費の大部分は、意識に上らない活動に使われていることに注目した論文。

かなりインパクトがあったらしく、表紙を飾っている上に
nature podcast のテーマにもなっている。

脳は何らかの行動をしたり外界から刺激を受けたりしなくても特定の活動をしていることがわかっている。
BOLDシグナルが、自発的に一定のパターンを示すのがその一例。

ヒトではBOLDシグナルが自発的に変動しており、安静状態でも持続的に生じている。
(安静状態であって無意識状態ではない)

今回著者らは、イソフルランという全身麻酔薬をサルに投与し、
軽い麻酔状態と深い麻酔状態を作り出した。

その結果、麻酔による無意識状態でも、サルはヒトとほとんど同じBOLDシグナル変動パターンを見せた。

この「同じ」変動を見せた領域は、
眼球運動系、体制運動系、視覚系、および初期系(default system)。

特にdefault systemは、ヒトだけに備わった系であると主張されてきたものであるため、
著者らは「この変動パターンは進化的に保存されているものであり、
意識を作り出すシステムの基本となるものと考えられる
」としている。


以下、疑問点。

・全身麻酔の作用機構が解明されていない状態で、
「麻酔で意識がなくなった状態で云々」を論ずるのは少し気持ちが悪い。

麻酔によって脳への作用が異なるのも気になる。
他の麻酔でも同じように作用するのだろうか。

今回使われているイソフルランも、脳圧を高めたり脳内の血流量を増やしたりという作用がある

これらによるアーティファクトの影響をどこまで考慮すればいいのか、この論文からはわからない。

もしくは慣習的に、どのアーティファクトは議論の価値がないのか等が確立しているのだろうか。

・news and viewsにも書かれていたが、
ヒトのdefault system は覚醒状態で定義される。
それに対して今回はサルを無意識状態で測定している。

「default systemはヒト固有」という主張をゆるがせるには十分かもしれないが
条件が全く異なる以上はまだ「default systemはヒト固有の機能を支える」という
ことまでは否定しきれないように思う。

・瑣末な問題だけれども、
fMRIの画像に左右の表記がないのはなぜ?

理学と医学では慣習的に、脳の左右の表記が逆なので
(理学は頭の上から、医学は頭の下から見るため)
L-Rを明記するのが普通と思っていた。

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コメント

多忙に紛れて、こんな守備範囲ど真ん中の論文がNatureに載っていたとは知りませんでした。僕のblogでもreviewやろうかと思いますのでご期待ください。ところで、
>・瑣末な問題だけれども、
>fMRIの画像に左右の表記がないのはなぜ?
>理学と医学では慣習的に、脳の左右の表記が逆なので
>(理学は頭の上から、医学は頭の下から見るため)
>L-Rを明記するのが普通と思っていた。
単純にNatureの編集部が査読の段階で修正意見つけるのを忘れただけかもしれませんが、一般にNatureとかScienceとかとにかく基礎系の雑誌はanatomy重視なので、「頭の上から見た」系であることが暗黙の了解ですよね。これがNeuroImageとかMagn. Reson. Med.のように臨床系が強い雑誌だとradiologyの影響も大きいので、「頭の下から見た」系が混在するためにたいていL-Rを明記することになります。
とはいえ、fMRI自体が基本的には「基礎系の実験」であると認識されることが多いことを考えれば、anatomical coordinateで画像が載るのは割と自然なことだと思いますね。

>vikingさん

コメントありがとうございます。

基礎系では「頭の上から見た」図であることが暗黙の了解なのですね。
いわゆる “Anatomy”と名のつく有名なテキストは臨床系であることが多く、
全て「頭の下から見た」図が常識でしたので、それで勉強した私は
「基礎」では何が常識なのか把握しかねていました。
我々が普段読む雑誌は「頭の上から見た」ものだと覚えておきます。

まだこの論文の背景などを俯瞰できていないので
vikingさんのreviewをとても楽しみにしています。

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