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CD38とオキシトシンの軽いレビュー

Neuron にCD38とオキシトシンについての軽いレビューが載っていました。
Regulating the Social Brain: A new role for CD38

短く、しかもよくまとまっていて読みやすい記事でした。

「今ではネット上にオキシトシンが大量に売られてますね」
「でもこれは科学的根拠があるんですよ」
などという、大衆を煽るようなジョークもありましたが。
(参考ログ:「他人を信頼させる薬」

過去に何度かCD38とオキシトシンについてはレビューしていますが、
(参考ログ:CD38と社会行動
CD38が分子的に何をしているのかに言及していなかったので、そのメモとして載せておきます。

目次:
1. オキシトシンの合成から放出まで
2. オキシトシン放出の制御
3. オキシトシンの効果
4. CD38はどこにあって、何をしているのか?
5. CD38をノックアウトするとどうなるのか?
6. 未解決問題いろいろ

1.オキシトシンの合成から放出まで

オキシトシンは、合成から生理活性まで以下の経路をたどる。

1) 視床下部、特に視索上核(SON)と室房核(PVN)の巨大細胞で合成される
2) 軸索流によって運ばれ、下垂体後葉の終末から放出される。
3) 有窓性の内皮fenestrated endothelium を通って血流に入る
4) 子宮平滑筋を収縮させて出産を促したり、乳腺の筋上皮細胞を収縮させて射乳を促したりする。

以上は末梢放出Peripheral release であり、中枢の放出経路Central releaseは
1) 視床下部、特に視索上核(SON)と室房核(PVN)の巨大細胞で合成される
2’ ) 軸索流によって運ばれ、扁桃体に投射される

という別経路をたどる。


2.オキシトシン放出の制御

末梢での放出と、中枢での放出は別々に制御されている。
末梢の放出はよく研究されているが、中枢に関してはほとんど謎。

末梢における制御は、たとえば乳頭の刺激による脱分極によって刺激されることがわかっている。
しかし中枢においては、脱分極とオキシトシン放出には関係がない可能性が高い。


3.オキシトシンの効果

(1) Mating
オキシトシンを投与すると、交尾行動を起こすようになる。

(2) Nursing
オキシトシン遺伝子をノックアウトされたマウスは、子供を一箇所に集めて育てようとはしない。

(3) Trust, fear, and mind reading

ヒトでは、オキシトシンを投与されると
他人を信用するようになり、
恐怖感が軽減し、
他人の考えていることを推測しやすくなることがわかっている。

オキシトシンが扁桃体に投射されていていることと、
扁桃体を切除した動物は恐怖感がなくなることの関連は興味深い。

(4) Social memory
オキシトシン遺伝子をノックアウトすると、社会行動に必要な記憶だけが抜けるという奇妙な現象を示す。
社会行動と関係ない記憶は正常なままであった。

これらSocial behavior の欠損は、CD38というタンパク質の遺伝子をノックアウトすることでも見ることができた。
そしてオキシトシンを投与することでこれらの機能を補うことができることもわかった。

そこでCD38とオキシトシンの関係を探るべく研究が進められている。

これまでに判明しているのは以下の事項。


4.CD38はどこにあって、何をしているのか?

CD38は、オキシトシンニューロンなど、視床下部内の神経細胞の膜に存在する。
中枢神経では、オキシトシンを放出する巨大細胞の膜にもある。
その生化学的な役割は;

1) cyclic ADP-ribose (cADPR)を合成している
2) ニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸塩(NAADP)の合成

cADPRとNAADPは共に、ERに貯蔵されているカルシウムイオンを
ERから放出させるためのセカンドメッセンジャーとして機能している。


5.CD38をノックアウトするとどうなるのか?

1) 血漿およびCSF内のオキシトシン濃度が下がった(完全にはなくなっていない)

2) バソプレッシンの放出は変化していない

3) 視床下部と下垂体でのオキシトシン濃度は上昇した(神経終末で濃縮されている)

4) cADPR が視床下部と下垂体で減少しており、cADPRを投与するとCD38が欠損した神経終末を脱分極させ、オキシトシンを正常に放出するようになった。

5) 母性的行動が欠損した。たとえば授乳をしなくなった。オキシトシンではここまで過激な欠損は見られない。

6) オキシトシン濃度はCSFで30%しか減少していない。(CD38はオキシトシン以外の系に影響を及ぼしている可能性が高い)

7) オキシトシンを末梢に投与すると母性行動も回復する。これは、オキシトシンはBBBを通過できないことを考えると驚くべきことである。(CSFでのオキシトシン濃度も回復することがわかっている)

8) 社会的な記憶欠損も見られる。たとえば、他のマウスの臭いに反応しない。他の臭いなら正常に反応する。これはオキシトシン遺伝子のノックアウトマウスと酷似している。


6.未解決問題いろいろ

1) CD38はオキシトシンニューロンの細胞膜上に局在しているのか?

2) cADPR はオキシトシンニューロン自身ではなく、近傍の細胞によって合成されて受容している可能性はないか?

3) 母性的行動の欠損はオキシトシンのみによるものなのか?
ドーパミンやバソプレッシンなどはノックアウトマウスでも変化していないので、その可能性はあるものの、カルシウムイオンをリクルートしている以上は他の経路にも関わっている可能性が高い。

4) オキシトシンと環境との関係は?
サルは、母親に育てられた場合に比べ、ヒトに育てられるとCSFのオキシトシン濃度が50%も減少した。
経験がCD38の発現を制御しているのだろうか?
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