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【論文】統合失調症とNRG1, erbB4, GABA

Neuronから2つ。
前々から統合失調症との関連が報告されていたneurogulin 1(NRG1)とerbB4についての論文です。

Li et al,
The Neuregulin-1 Receptor ErbB4 Controls Glutamatergic Synapse Maturation and Plasticity
Neuron 54, May24 2007


Woo et al,
Neuregulin-1 Enhances Depolarization-Induced GABA Release
Neuron 54, May24 2007


以下、Neuronの同issueのPreview を抜粋・編集したものです。

基礎用語
neuregulin 1 (NRG1):神経細胞の軸索成長因子。
神経やグリアの増殖・転移・運命決定にも重要な役割を果たしている。

erbB4:neuregulin1の受容体。


Liの論文

何をしたのか

・CA1における、近接した二つの細胞のシナプス電流を同時に測定した。
一方にはerbB4をトランスフェクトし、もう一方はコントロールとして使用した。

・測定したのはAMPA由来の電流とNMDA由来の電流の二つ。

・erbB4をRNAiでノックアウトした細胞のNMDA電流も計測した。


結果

・erbB4をトランスフェクトされた細胞は以下の特徴を持っていた。
1) AMPA由来のシナプス電流が増加した。
2) スパインが大きくなっていた
3) スパインの数は変わっていなかった
4) NMDA由来の電流は変化していなかった
5) しかし、erbB4をRNAiでノックダウンするとAMPA/ NMDA由来の電流がどちらも減少した
6) NMDARのアンタゴニストであるAPVは、erbB4がAMPARに及ぼす影響を阻害した。
7) erbB4ノックアウト(RNAiもしくはerbB4-KDによる)ではLTPとシングルEPSCが減少した。

結果からわかること

・1)~3)より、スパイン当たりのAMPARの数が増えたと考えられる

・4~6)より、NRG1がAMPARの数を制御することに対しNMDARの活性化がかかわっていることが示唆される。


Wooの論文

・erbB4はGABA作動性の神経終末(前頭前野のスライス)に局在していることを発見。

・NRG1を皮質切片(もしくは前頭前野のホモジェネート)に添加し、20mM K+のパルスを10分間与えると、GABAの放出量が2~4倍になった。

・erbB4をノックアウトしたマウスではNRGの効果は見られなかった


2つの論文に共通する結果

・海馬では、(1)スパインの表面に出ているerbB4の数 (2)活性化されるerbB4のレベル (3)AMPA電流の大きさ の全てが、ピクロトキシンまたはTTXまたはMgの添加によって減少した。


考察

Li曰く:シナプスの活動がNRG1のシグナルを増加させ、グルタミン酸作動性のシナプス伝達を促し、さらにerbB4を活性化させるというポジティブフィードバック機構があるのではないか。
臨界期におけるこの「スイッチ」の役割は、シナプスの形成と安定化に重要と考えられる。

Woo曰く:NRG1がGABA作動性の神経終末に及ぼす影響は、それまでの活動に依存する。刺激されていないプレパレーションではNRG1の効果は見られない。これは自発的なmIPSCにおいても同様である。


これまでの研究により、NRG1・erbB4・GABAの全てが統合失調症との関連が深いことがわかっている。

一つの考えられるシナリオは以下の通り。

1) 統合失調症に関わる何らかの因子がNRG1の機能低下を引き起こす
2) NRG1の機能低下により、前頭前野でのグルタミン酸およびGABAによるシナプス伝達の効率が落ちる
3) この効率低下により、錐体細胞の発火が同期しなくなる(頭部表皮でのガンマ波の消失は実際に確かめられている)
4) ワーキングメモリに異常が起きる→統合失調症の発症

ただしこのシナリオは過度に単純化されている。
思考が統合されている者が統合されていない者の思考を理解できるのか不明だし、
ボトムアップ型の理論で精神と行動を理解できるかも怪しいからである。



今後の課題としては以下のようなものが挙げられる。

・前頭前野の全てのGABA作動性インターニューロンが錐体細胞の同期に貢献しているわけではない。
同期とワーキングメモリに重要なのは、(1)パルブ有る部民を発言しているインターニューロンか、(2)錐体細胞の軸索起始部(もしくはその近く)に終末があるインターニューロンである。

Wooが、erbB4はGABA作動性の神経週末のみにあることを発見したことと考え合わせ、これらの細胞がパルブアルブミンを発現しているかどうかを調べてみるのも面白い。

・他の要素はどう統合失調症に関係しているのか?

(1)統合失調症の症状を軽くする薬物は、ドーパミン受容体のアンタゴニストである→ドーパミンの関連は?

(2)統合失調症患者は喫煙により自分で症状を軽くすることもある→ニコチン性アセチルコリン受容体の関連?

(実際、NRG1に長く細胞をさらしておくと、α-7 ニコチン性アセチルコリン受容体がGABA作動性インターニューロンで増加する。ただし短時間さらすだけだと、逆にα-7の電流とEPSCは減少する)

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