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RNA研究の現在:The Economist特集より

今週の The Economist(16 Jun 2007)に RNAの特集がありました。
しかも表紙を飾っています。
(→The Economist のHP

様々なRNA機能の発見が、いかに従来の考え方を覆し得るのかを解説しています。
rasiRNAs, XIST, PINC, SCN9A, HOX, samuraiなど、専門用語も遠慮なく出てきます。
もちろん、それぞれの性質を一行で概説する親切さはあります。

ソクラテス、孫子、『Back to The Future』、シャーロック・ホームズなどから
有名な言葉を引用したりして読者を楽しませる工夫もされています。

ジョークも20行に一つ以上出てきます。
(私が気付かないだけで、もっと多くあるのかもしれません)

政治経済誌なのにも関わらず、科学の最新かつ重要な知見を
科学的レベルを落とさずに詳説できるThe Economistはやはり素晴らしい。

最近、親日派の編集長が退職して新しい人に変わり、日本の記事に
日本への配慮が欠けてきた節はありますが、科学の記事に関しては
The Economistの姿勢を支持し続けたいと思っています。

欧米にはこういった雑誌があるから文系の人も科学に疎くならず、
かつ読者のレベルも高くなるからこういった雑誌が存続できる、
という好循環が生まれているのだと推測できます。

インテリジェント・デザインなどのエセ科学は欧米でも問題になっていますが
インテリジェント・デザインはかなり込み入った理論を展開しており、
ある程度の素養がないと構築できるものではありません。
反論する側にも『科学とは何か』ということを説明する能力が必要になります。

「水からの伝言」に代表される日本のエセ科学はレベルが低すぎて論外です。
「『水からの伝言』は科学リテラシーなどなくとも文系の枠内で反論可能であり、
あれを科学リテラシーの欠如と呼ぶのは文系人間に対する侮辱である」
というコメントを見たことがありますが、全く同感です。

日本でインテリジェント・デザインが広まらない一因は、
インテリジェント・デザインを理解できるほどのリテラシーがないからではないかと邪推しています。

まぁ、欧米にも低級なエセ科学はあるので、
単に身近だから日本のエセ科学のほうが目に付くだけかもしれませんが。

・・・何の話でしたっけ。
そうだRNA。

記事の一部をメモ;


・piRNAがないと、哺乳類のオス、魚類のオス、ハエの両性が不妊になる。

・XISTはX染色体の全てをサイレントにする。

・もしかしたら、タンパク質を作るための遺伝子はマイノリティかもしれない。
タンパク質をコードする遺伝子は21,000あるが、
microRNAはIBM genome miner によると37,000ある。

・micorRNAは、タンパク質をコードしている遺伝子の1/3を制御しているかもしれない。
ヒトES細胞では20ほどのmicroRNAしか作られない。

一つのmicorRNAが100以上のタンパク質を制御していることがある。

・センチュウもドロソフィラもヒトと遺伝子の数に大差がないのは、microRNAの数に差があるからかもしれない。

RNAiの使い道には様々な将来性がある。
例1) SCN9Aという遺伝子は、腕にナイフを刺しても痛くないというストリートパフォーマーを検査することで明らかになったものだ。
RNAiを利用すれば、この遺伝子を制御することで痛み止めに使えるかもしれない。

例2)インシュリン受容体を不活性化させることで寿命を延ばせるかもしれない(ネズミでは成功している)

例3) 豆なのどの中でアレルギー反応を引き起こす遺伝子を不活性化すれば、アレルギー持ちの人も食べられる。

例4) 綿のゴシポールを不活性化させれば綿を食べられるようにできるかもしれない(食べたいのなら)。


・もちろん、対がん治療にもRNAiは注目されている。
Taxol-supressing 遺伝子を不活性化させることでがん細胞を鎮めるのも一法だ。

・RNAiはおよそ次のようなプロセスで進む。
1) 約21塩基の、二重螺旋を形成したRNAを打ち込む
2) argonature proteinが二重螺旋をほどき、バラバラにする
3) バラバラになった一方がmRNAと結合し、不活性化する。

・ダブルストランドのRNAは自然界では珍しい。
ただしウイルスが複製されるときには多い。
これはもしかしたら、ダブルストランドを認識・破壊できる機構を持った動物が生存に有利だったからかもしれない

・体の設計情報を持っているHOXクラスターもmicroRNAの制御を受けていることがわかってきた。

・microRNAは、ヒトの脳の進化的な発達を説明するかもしれない。
チンパンジーとヒトは、進化的に非常に近いにもかかわらず、microRNAの8%がヒト特異的だったから。

・ラマルク(Jean Baptiste Lamarck)は、「生きているうちに獲得される性質も遺伝する」という説を唱えた。
ダーウィンの自然選択説が科学界を席巻した後は忘れ去られたが、現在もう一度この説が見直されつつある。
なぜなら細胞の核内でも一部のRNAが活性化していて、DNAを制御している可能性が示唆されてきたからである。
環境の刺激によってRNAが変わりうることを考えると、環境によってDNAが突然変異を起こすかもしれない。

紫外線などによるDNAのランダム突然変異と異なり、
RNAによる突然変異は「より環境に適応できる方へ」最適化できるかもしれない。


以上。


やはり一般紙とは思えないマニアックさ。
読者のほとんどがビジネスマンなのに、「ビジネスにどう役に立つのか」に焦点が合っていないのもホント好き。

記事の末尾は「もしかしたらパラダイムシフトかもよ!」と興奮気味な言葉で結ばれていますが、これは通常科学者のセリフです。
「いや、パラダイムとかどーでもいいから、どう役に立つの?」とビジネスマンに反論されるのが普通なんですけどね。

『無知は人類の敵だ』というスローガンが眩しい。




本論に関係ないのですが、
「RNAが対合する」はRNA molecules do pairという表現が使えるのですね。
論文では使えないのかもしれませんが。

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コメント

エコノミスト誌の読者は「ビジネスマン」に限らないですよ。日本でも理系の研究者で好んで読んでる人は多いですし。「親日派」が消えて「日本への配慮云々」というのもピンぼけな見当違いな話じゃないかな。いずれにしても週刊誌としては世界の中でも群を抜いて水準が高いのは事実ですね。経済、政治、科学技術、どれをとっても記者、ライターの質が驚くほど高い。

The Economistの読者が多岐に渡るのは知っていましたが(外交官などは常識的に目を通しているようですし)研究者も好んで読んでいるのならとても好ましい状況だと思います。
専門誌しか読まない人が大半を占めると思っていましたので。
(日本での発行部数自体が非常に少ないですし)

読む人の政治的嗜好によって印象が異なるのでしょうが、
少し前の従軍慰安婦の件では、いつものThe Economistには見られない感情的な表現が使用されており、これは前編集長のビル・エモット氏には考えにくい現象でした。
ビル・エモット氏も靖国参拝などを批判してきましたが、それらに対して「皮肉」を込めた表現を用いはしても「罵倒」するような表現は用いていません。
ミクルスウェート氏の視線が東よりも西向きであることも多分に関係していると考えています。

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